158 / 322
第1部
その4
しおりを挟む
「調査資料部って、何をするところでしょうか」
「何もない」
「何もないって……」
「資料課と新しく創設する調査課がある部署、それが、調査資料部だが、資料課のやっていた社史編纂の仕事以外何もない部署だ。そこの資料課に塩尻さん、塚本さんが、調査課に町屋さん、一色君が所属となる。その担当常務が私という訳だ」
千秋は護邸の意図するところが、まだ呑み込めなかった。護邸は話を続ける。
「とりあえずこれが今現在、いちばん良い落とし所だと判断した。
企画3課が無くなる以上、リストラ予定だった一色君と塚本さんの引き取りとして、また手柄を立てたが部署の引き取り手の無い君、そして私は降格の代わりに、なんの手柄も立てれない窓際部署の常務なら、葉栗派は納得するだろう。
全員まとめて放り込める部署、それが窓際部署の調査資料部ということだ」
説明されてようやく千秋は納得したが、先が見えない部署の部長と分かって、少しがっかりした。
「そうがっかりするな、とりあえずの処置だ。私だって、このままで終わる気はないよ。今はとりあえず納得してくれ」
「わかりました。部長にしていただき感謝します。それで、ひとつお願いがあるんですが」
「なにかね」
「今回の件で、一色が有能であるとおわかりになったと思います。彼をアメリカ本社に研修に推薦して頂けませんでしょうか」
実際、一色のさりげないフォローが千秋の助けになっているし、彼が味方になってくれる時の約束なのだ。千秋は土下座してでも推薦をとるつもりだった。
しかし護邸はあっさりとそれを受け入れた。
「それくらいなら、何とかねじ込めるよ。けど君は良いのかね」
「お願いします」
千秋は護邸に深く頭を下げ、護邸は了承した。
「さて、話はこれで終わりだが、気に入ってもらえたかね」
「そういえば、私はもてなされてましたんでしたね。大変気に入りました。ありがとうございます」
「それはなにより。では、今夜はこれでお別れだ。明日また会社でな」
護邸の合図で、スタッフが部屋に入り、後片付けをはじめる。
護邸のエスコートで、部屋を出ると、別のスタッフにより、スマホを返してもらい、コートを着せてもらう。
「出口は別々だからね、気をつけて帰るんだよ」
護邸に挨拶すると、スタッフの後をついて廊下に出て、エレベーターに乗り込み、降りて地上に出る。そこは乗ったところと違う場所だった。
「ここはどこかしら」
スタッフに訊ねると、指を指し、あちらが駅になりますとだけ答え、そのままエレベーターに戻っていった。
千秋は言われた通り進むと、JR名古屋の駅にたどり着き、そのまま帰途についた。
「何もない」
「何もないって……」
「資料課と新しく創設する調査課がある部署、それが、調査資料部だが、資料課のやっていた社史編纂の仕事以外何もない部署だ。そこの資料課に塩尻さん、塚本さんが、調査課に町屋さん、一色君が所属となる。その担当常務が私という訳だ」
千秋は護邸の意図するところが、まだ呑み込めなかった。護邸は話を続ける。
「とりあえずこれが今現在、いちばん良い落とし所だと判断した。
企画3課が無くなる以上、リストラ予定だった一色君と塚本さんの引き取りとして、また手柄を立てたが部署の引き取り手の無い君、そして私は降格の代わりに、なんの手柄も立てれない窓際部署の常務なら、葉栗派は納得するだろう。
全員まとめて放り込める部署、それが窓際部署の調査資料部ということだ」
説明されてようやく千秋は納得したが、先が見えない部署の部長と分かって、少しがっかりした。
「そうがっかりするな、とりあえずの処置だ。私だって、このままで終わる気はないよ。今はとりあえず納得してくれ」
「わかりました。部長にしていただき感謝します。それで、ひとつお願いがあるんですが」
「なにかね」
「今回の件で、一色が有能であるとおわかりになったと思います。彼をアメリカ本社に研修に推薦して頂けませんでしょうか」
実際、一色のさりげないフォローが千秋の助けになっているし、彼が味方になってくれる時の約束なのだ。千秋は土下座してでも推薦をとるつもりだった。
しかし護邸はあっさりとそれを受け入れた。
「それくらいなら、何とかねじ込めるよ。けど君は良いのかね」
「お願いします」
千秋は護邸に深く頭を下げ、護邸は了承した。
「さて、話はこれで終わりだが、気に入ってもらえたかね」
「そういえば、私はもてなされてましたんでしたね。大変気に入りました。ありがとうございます」
「それはなにより。では、今夜はこれでお別れだ。明日また会社でな」
護邸の合図で、スタッフが部屋に入り、後片付けをはじめる。
護邸のエスコートで、部屋を出ると、別のスタッフにより、スマホを返してもらい、コートを着せてもらう。
「出口は別々だからね、気をつけて帰るんだよ」
護邸に挨拶すると、スタッフの後をついて廊下に出て、エレベーターに乗り込み、降りて地上に出る。そこは乗ったところと違う場所だった。
「ここはどこかしら」
スタッフに訊ねると、指を指し、あちらが駅になりますとだけ答え、そのままエレベーターに戻っていった。
千秋は言われた通り進むと、JR名古屋の駅にたどり着き、そのまま帰途についた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる