153 / 322
第1部
その3
しおりを挟む
幸運の2
千秋はバックパッカー時代に、紛争地域を旅した事がある。そのとき知り合った元ゲリラに教えてもらった、バリケードの作り方と逃走の仕方を用意していたこと。
そして、危険が迫ったとき身体に走る戦慄のシグナルを経験していたことである。
何か来る
そう感じた千秋はすぐに入り口にベッドでバリケードを作り、そして逃走の用意をした。
暴漢達は入り口前に来ると、その巨体を活かして、体当たりを繰り返して部屋に入ろうとする。だが、バリケードのため入れない。
その間に、千秋は警察に連絡を入れる。
その時、地元の警察署長は頭を抱えていた。
少し前にアレキサンダーとジェーン、つまり地元名士の父と娘から真反対の要望が届いていたからだ。
「チアキという人物から連絡があったらすぐ駆けつけてくれ」
「チアキという女から連絡があっても無視するように」
立場上、どちらにもいい顔をしたいが、どうしていいか判らず、頭を抱えていた。そのため結果的にジェーンの要望通りになってしまった。
ついに扉がぶち抜かれてしまい、暴漢達は部屋に入ってくる。バリケードを壊しながら奥に入ると、窓が開いていていた。
「いないぞ、窓から逃げたか」
「ここは3階だぞ、飛び降りられるものか」
「どこかに隠れているかもしれないぞ、探せ」
室内を物色するが見つからない。窓から顔を出し
下を見るが降りた様子も無い。
「くそっ、何処へいきやがった」
幸運の3
千秋には武道の心得があった。祖母が合気道の有段者で、3歳の頃から手ほどきをうけていた。
さらに交遊関係が多く顔が広い祖母により、柔術の達人にも師事していたので、どちらも有段者の腕前である。
「柔道でなく、柔術なのか」
「祖父が武士の血筋で、そちらの縁で」
2人の師匠から口酸っぱく言われていたのが、無駄に戦わずとにかく逃げろ、である。
バリケードを作り、窓から逃げたふりをして、部屋に隠れている。
ふりをして、じつは窓から逃げていた。
ベッドのシーツを窓際のカーテンレールに軽く結ぶと、シーツの端を持って飛び降りる。シーツが伸びきって一度勢いが死ぬが、レールが折れ曲がりふたたび落ちる。
こうやって地上まで着くと、シーツとレールをアパートメントの陰に隠して身を潜めていたのだ。
幸運の1
警察署長が迷っていたのは、連絡が来てからの対応だったので、千秋からのSOSは警察には届いていた。そしてそれを受けたのは千秋をスピード違反で捕まえた警官だったのだ。
彼はすぐさま、自分と仲間を千秋のところへ向かわせた。
その結果、パトカーのサイレンを聞いた暴漢達は逃げだし、千秋は無事にすんだのである。
千秋はバックパッカー時代に、紛争地域を旅した事がある。そのとき知り合った元ゲリラに教えてもらった、バリケードの作り方と逃走の仕方を用意していたこと。
そして、危険が迫ったとき身体に走る戦慄のシグナルを経験していたことである。
何か来る
そう感じた千秋はすぐに入り口にベッドでバリケードを作り、そして逃走の用意をした。
暴漢達は入り口前に来ると、その巨体を活かして、体当たりを繰り返して部屋に入ろうとする。だが、バリケードのため入れない。
その間に、千秋は警察に連絡を入れる。
その時、地元の警察署長は頭を抱えていた。
少し前にアレキサンダーとジェーン、つまり地元名士の父と娘から真反対の要望が届いていたからだ。
「チアキという人物から連絡があったらすぐ駆けつけてくれ」
「チアキという女から連絡があっても無視するように」
立場上、どちらにもいい顔をしたいが、どうしていいか判らず、頭を抱えていた。そのため結果的にジェーンの要望通りになってしまった。
ついに扉がぶち抜かれてしまい、暴漢達は部屋に入ってくる。バリケードを壊しながら奥に入ると、窓が開いていていた。
「いないぞ、窓から逃げたか」
「ここは3階だぞ、飛び降りられるものか」
「どこかに隠れているかもしれないぞ、探せ」
室内を物色するが見つからない。窓から顔を出し
下を見るが降りた様子も無い。
「くそっ、何処へいきやがった」
幸運の3
千秋には武道の心得があった。祖母が合気道の有段者で、3歳の頃から手ほどきをうけていた。
さらに交遊関係が多く顔が広い祖母により、柔術の達人にも師事していたので、どちらも有段者の腕前である。
「柔道でなく、柔術なのか」
「祖父が武士の血筋で、そちらの縁で」
2人の師匠から口酸っぱく言われていたのが、無駄に戦わずとにかく逃げろ、である。
バリケードを作り、窓から逃げたふりをして、部屋に隠れている。
ふりをして、じつは窓から逃げていた。
ベッドのシーツを窓際のカーテンレールに軽く結ぶと、シーツの端を持って飛び降りる。シーツが伸びきって一度勢いが死ぬが、レールが折れ曲がりふたたび落ちる。
こうやって地上まで着くと、シーツとレールをアパートメントの陰に隠して身を潜めていたのだ。
幸運の1
警察署長が迷っていたのは、連絡が来てからの対応だったので、千秋からのSOSは警察には届いていた。そしてそれを受けたのは千秋をスピード違反で捕まえた警官だったのだ。
彼はすぐさま、自分と仲間を千秋のところへ向かわせた。
その結果、パトカーのサイレンを聞いた暴漢達は逃げだし、千秋は無事にすんだのである。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる