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第1部

その3

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次々と起こる出来事に、皆が状況把握できずにいた。

何をどうしたらこの事態を収拾できるのか、分からずに沈黙しているこの状況の中、一色が口を開く。

「……つまりチーフは、このニュースを伝えるために、急いで来たという訳ですか」

「ええそうよ。この事実を知らずに、もし群春さんと契約していたら、森友さんに多大な迷惑がかかるかも知れないからね」

「そのために急がれた訳ですか。少々行き過ぎな気もしますが、こちらは御礼を言うべきなのでしょうね」

千秋の言葉を芝原が拾う。そして一色が言葉を続ける。

「という事は群春さん、先程の価格は大丈夫なんですか。ご自身で事実確認した上での、商品を確認した上での価格なのですか」

その言葉に群春側は、うっ、とした顔になる。一色は未確認なのを確信した。芝原もだ。

「課長、群春さんのプレゼン内容は、どうやら怪しくなってきましたが、如何いたしましょう」

芝原の言葉に、森友の課長も顔色が悪くなってきたが、ここは返事をしないといけない場面だ。全員の視線が課長に集まった。




「うっ」

突然、課長が胸を抑えて机に突っ伏した。

「課長、課長、」

隣に座っていた係長が声をかける。

「す、すまない、胸が苦しくなってきた。わ、私は医務室に行ってくるから、後の事は係長、君に任せる」

そう言うと、よろよろと立ち上がり部屋を出て行こうとする。突然、決定権を与えられた係長はあたふたするが、立ち上がり課長について部屋を出て行こうとする。

「係長」

「課長が心配なので、私が付き添っていく。後の事は芝原くん、君に任せる」

「僕がですか」

「し、心配するな、どどどどんな結論が出ても、わわわ私が、せせせせせ、責任をとととととるかかかららら」

人生の一大決心を、踏ん切り悪く覚悟したような言葉を残し、係長は課長を支えながら医務室に向かった。
残された6人のうち5人は、芝原を見つめる。芝原はふうとひと息つくと、全員に席に着くように促した。

「さて、慌ただしいコンペとなりましたが、もう終わりにしましょう。聞いての通り最終的な決定は私がする事になりました。双方他に言うことはありませんか」

千秋達も群春側も沈黙のまま頷いた。

「では結論を言います。エクセリオンさんは担当者の遅刻、価格の変更無し、持ってくると言われた付加価値の提示無し、尚且つ当社の警備員に乱暴を働くような行為をされました」

芝原はじろりと千秋達を見る。
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