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第1部
その4
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控室経由で会議室へ入る。すでに重役達は席に着いていて、課長も座っていた。
今まで何処に行っていたのだろう、正直逃げ出したのかもと思っていた。
千秋が自分の席に着こうとすると、パイプ椅子がひとつ増えている。
何となく誰が座るか想像はできたが、あまり考えたくはなかった。
席に座り、会議が始まるのを待つ。12時50分になろうとしていた。
あのままだったら、やはりコンペに間に合わなかったな。でも、長引くかもしれない。一色君を当てにするしかないか。でも付加価値がなあ、気になる、何とか同席したいな。
千秋のそんな思いを他所に、会議は13時から再会された。
食事を摂って落ち着いたのか、立ち上がりは静かであった。
「さて、横領というか使い込みであるが、大鳥常務からの資料によると、佐野主任によるものとあるが、当人は覚えがないという。あらためて資料に目を通すと、なるほど佐野主任が日本支社に来る前の物もある。護邸常務から精査し直してはという意見があったが、竹ノ原専務はこのまま進めるべきだという」
中島社長の言葉を、皆静かに聴いている。
「会議を円滑に進めるのは大いに賛成する、護邸常務、いいかね」
「はい」
もっとごねるかと思っていたのか、竹ノ原専務が拍子抜けしたような顔をしている。それを他所に、護邸は言葉を続ける。
「それでは、佐野主任が来ていないのに、彼女名義の領収書があったのは何故か、を調べた資料がありますので、皆さん目を通して下さい」
護邸の合図とともに、秘書が資料を配りはじめる。
葉栗副社長派、とくに諸星専務がぎょっとした顔になる。資料を見た他の重役達の表情が、だんだん険しくなる。
「こちらの資料だと、領収書を改ざんしているのがハッキリと分かるな。そして使い込み、いや君の立場だと横領か、それをしたのはサトウ課長、君ということになる」
サトウ課長は返事をしない、無言のままである。
千秋はちらと横目で見ると、無表情のまま、どこか空の一点を見つめているようだった。
葉栗副社長は、なにか諦めた感じの表情となり、竹ノ原、諸星の両専務は、思案顔となり、大鳥常務は頭を抱えている。
一読しただけで、皆が納得する内容と出来の資料であった。間違いなく千秋は関係ない、これにより千秋がクビになる事はなくなった。
これがもし、千秋が上司でサトウが部下であったのなら監督不行き届きの名目で出来たかもしれない。
「サトウ課長、君が横領したんだね」
護邸常務が静かに訊く。
「……はい、私がやりました」
今まで何処に行っていたのだろう、正直逃げ出したのかもと思っていた。
千秋が自分の席に着こうとすると、パイプ椅子がひとつ増えている。
何となく誰が座るか想像はできたが、あまり考えたくはなかった。
席に座り、会議が始まるのを待つ。12時50分になろうとしていた。
あのままだったら、やはりコンペに間に合わなかったな。でも、長引くかもしれない。一色君を当てにするしかないか。でも付加価値がなあ、気になる、何とか同席したいな。
千秋のそんな思いを他所に、会議は13時から再会された。
食事を摂って落ち着いたのか、立ち上がりは静かであった。
「さて、横領というか使い込みであるが、大鳥常務からの資料によると、佐野主任によるものとあるが、当人は覚えがないという。あらためて資料に目を通すと、なるほど佐野主任が日本支社に来る前の物もある。護邸常務から精査し直してはという意見があったが、竹ノ原専務はこのまま進めるべきだという」
中島社長の言葉を、皆静かに聴いている。
「会議を円滑に進めるのは大いに賛成する、護邸常務、いいかね」
「はい」
もっとごねるかと思っていたのか、竹ノ原専務が拍子抜けしたような顔をしている。それを他所に、護邸は言葉を続ける。
「それでは、佐野主任が来ていないのに、彼女名義の領収書があったのは何故か、を調べた資料がありますので、皆さん目を通して下さい」
護邸の合図とともに、秘書が資料を配りはじめる。
葉栗副社長派、とくに諸星専務がぎょっとした顔になる。資料を見た他の重役達の表情が、だんだん険しくなる。
「こちらの資料だと、領収書を改ざんしているのがハッキリと分かるな。そして使い込み、いや君の立場だと横領か、それをしたのはサトウ課長、君ということになる」
サトウ課長は返事をしない、無言のままである。
千秋はちらと横目で見ると、無表情のまま、どこか空の一点を見つめているようだった。
葉栗副社長は、なにか諦めた感じの表情となり、竹ノ原、諸星の両専務は、思案顔となり、大鳥常務は頭を抱えている。
一読しただけで、皆が納得する内容と出来の資料であった。間違いなく千秋は関係ない、これにより千秋がクビになる事はなくなった。
これがもし、千秋が上司でサトウが部下であったのなら監督不行き届きの名目で出来たかもしれない。
「サトウ課長、君が横領したんだね」
護邸常務が静かに訊く。
「……はい、私がやりました」
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