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第1部

その4

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「どこで会うんだ」

「土曜の夜というか夕方から名古屋であるパーティーに出席するというので、私もそこに出て顔合わせして、正式に契約を交わします」

「パーティーはどこでやるんだ」

「えっとそれは……」

今までの話はもちろん千秋の作り話である。土曜の夜パーティーに出て、その帰り道に襲撃させる計画なのだが、そのパーティーがまだ決まってない。
顔の広い一色に頼んだが、まだみつかっていない。一色も手を尽くしているのだが。

「どうした?  言えないようなパーティーなのか」

「そんな事はありません」

「じゃあ、どこでやるなんというパーティーなんだね」

「それは……」

「チーフ、お借りしたメモはこちらです。すいません借りっぱなしで」

一色が千秋のもとに来てメモを渡す、それには開催場所とパーティー名が書いてあった。
どうやら見つかったらしい、ぎりぎり間に合って、ホッとする。

千秋が読む前に、課長はよこすように言い、それをみる。

「駅前のあのホテルか。午後6時から10時までやるチャリティーパーティーねぇ」

じーっとメモを見ている、おそらく憶えているのだろう。メモを千秋に返すと、席に戻るように伝える。はやく書き写したいのだろうなと千秋は思った。

自席に戻る途中、一色にウインクしてお礼をいうと、どう返事していいか思いつかない一色は、苦笑いで応えた。

課長はポケットからスマホを出すとメールを打ちはじめる。おそらくキジマに先程の情報を送っているのだろう。

送り終わり、スマホをポケットに戻すと、課長の顔色が変わる。
身体中のアチコチをバタバタと触る仕種をしている、どうやら印鑑ケースが無いのに気づいたようだ。

机の引き出しを全部開け、机の上のものを全部ひっくり返す、そしてまた身体中のポケットを探す。

「課長、どうなされたんですか」

「い、いや、なんでもない」

それからまた探しはじめるが見つからないと思案顔になり、やがて千秋を睨んだ。

「佐野君」

「はい」

「私の判子を知らないかね」

「判子ですか?  存じませんが」

千秋は努めて普通に返事をしたのだが、それでもその物言いにカチンときたらしい。怒りの表情で立ち上がり千秋に近寄ってきた。

「佐野君、出したまえ」

「なんの事です」

「とぼけるな、さっき私に触れたとき判子を盗ったろう、出したまえ」

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