佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

第１部

その２

「塚本さんが前に経理にいた事は話しましたよね、その時、塚本さんをなにかと面倒をみてくれた人に似てます。もっと明るい感じの人でしたが」

「じゃあ、塚本さんなら分かるかも知れないのね」

「明日確認してみましょう」

栄駅に着いた２人は、挨拶をして別れた。くれぐれも気をつけてと、何度も言う一色がかわいいと千秋は思った。

  地下鉄を待つ間も柱を背にしたり、女性専用車に乗ったりして気をつけて、名古屋に着いた後も、なるだけ女性の集団にまぎれてＪＲ駅まで行き、改札をくぐってホームに着いてもなるだけホーム際に立たないようにする。

快速に乗り込んで、やっと人心地つく。

今日は慌ただしい日だったな、このあとケイにあって預けていた情報を聞かなくちゃ。情報といえば、ノブからのデータまだみてなかったわね。

  スマホを取り出し、ノブからのメールを開き、添付されたデータをみる。
アドレスと履歴と画像とメールのデータが入っていた。今回はウイルスは付いてない、よしよしと千秋は頷いた。

アドレスには、目につくような名前が無かった。おかしい、ならばキジマ達とはどう連絡をとっているのだろう。
千秋は少し考えたが、ああと気がつく。名前を代えて登録しているのだろう。ならばと、通信履歴をチェックすると、ノブが電話してきた頃の時間を見る。

この番号と名前か。

履歴を再度見ると、ここ１週間は頻繁に電話をしている。間違いないようだ。

「ん？  」

キジマらしい相手以外に、もうひとつ頻繁に連絡をとっている相手がいる。男の名前だが、さっきの事を考えると正体不明と考えておこう。

画像データの方を見る。海や魚の画像が目につく、どうやら海釣りが趣味らしい。
日付の古いのは趣味の画像ばかりだったが、新しいのは、色々な観光地の自撮り画像が目につく。
趣味が変わったのかなと考えたが、画像の不自然さに気づく。

「これ誰かに撮ってもらっている、これデートの画像だ」

相手は奥さんかなと更に見ると、どうやら相手らしい人とツーショットの画像を見つけた。
２人で頬をよせあって、笑顔で写っている。

「ふ～ん、なるほどね。そういう事か」

千秋が納得していると、車内アナウンスが、もうすぐ壱ノ宮駅に着く事を告げた。