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第1部

シークレット倶楽部[ロバの耳]

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話しに夢中になって声が大きくなっていたらしい。聴かれたっ、と千秋は身構えた。

「ね、面白い人でしょう」

一色が答える。ロマンスグレーは立ち上がりそばにより、千秋に握手を求めた。

「はじめまして、シークレット倶楽部 [ロバの耳 ]の会長をやらせてもらっている者です」

「シークレット倶楽部……[ロバの耳]……ですか」

とりあえず千秋は握手をする。

「失礼ですが、どういった集まり何でしょうか」

その質問に一色が答える。

「僕と同好の士の集まりです」

「え、じゃあ」

千秋は店内を見回す。12、3人であろうか、ここにいる人みんなそういう事なのかと。

「すいません、私のようなものが来てしまいまして」

千秋が頭を下げる。

「僕が連れてきたんです、チーフが謝ること無いですよ。秘密の話が出来るところって、ここしか思いつかなかったもので」

「テンマが連れてくる人だから信用していたが、まさか女性と思わなかったのでね。少し様子見させてもらったよ、さ、こちらへ」

会長が自分座っていたボックス席に促した。
ボックス席のフロアはカウンター席より一段低く、降りて席に座ると、テーブルの上はよく見えるのに、顔が暗くて見えない。
なるほど、ボックス席からはカウンター席は見えるが、逆は無いのかと千秋は感心した。
今まで、皆に品定めされてたのかと思うと、ちょっと恥ずかしくなった。

「さて千秋さん、私から少し質問してよろしいかな」

ロマンスグレー、いや、会長は千秋に向かって少し緊張ぎみに話しかけた。

「君はLGBTについて、どう考えているかね」

「会長、そんなこと訊かなくても」

「テンマ、これは大事なことなんだ。[ロバの耳]の意味は知っているだろう」

「一色君、気を使わなくていいわよ。会長、今から話すことは私個人の意見です。もし気を悪くしても、彼には関係無い事です、よろしいですか」

「わかった」

千秋は会釈すると、話し始めた。

「私は大学院を出てから世界各地をまわりました。その間に、男女だけでなく色々な人種、民族に出会い、色々な価値観に触れました。その上で感じたのは、みんな人間であるという事でした。
性別も皮膚の色も身体的特徴も、ただの個性です。性的嗜好も同じです。ですから偏見とか拒絶反応とかはありません」

「君の恋愛対象は」

「異性、男性です。それも年上の」

会長は、ぷっと笑う。

「私もそれに入るのかね、君の父親くらいの歳だが」

「そのくらいが好みですが、口説きませんよ、フラれますから」
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