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母のファミリーヒストリー 2
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「ああ、本町のお祖母さんは祖父さんとは再婚なんだよね。勝彦兄さんと勝子伯母さんは先妻さんの子で」
みっこ伯母はさらりと言ってのけたが、私は四十年近い人生で初めて知った事なので軽く衝撃を受けた。
「あれ、言ってながったべが?」
母が首を傾げるところを見ると、「出生の秘密」的な事でも全然無いんだろうな。
「今、初めて聞いたよ!」
長男長女の伯父伯母ではなく二男の伯父が本町の本家を継いだのは、伯母が他家に嫁いだのと勝彦伯父が教師で転勤族だったからだとばかり思っていたのだが、そういう理由だったのかーー
母のきょうだい同士は夫婦揃って全員仲が良く、何かと親戚同士で集まっていたし、陰で誰かが誰かを悪くいうという事もほとんど無かったと思う。
ただ、言われてみると一番上の伯父伯母とは親もいとこ同士も歳が離れていて、本町やさっこ叔母の家ほどの交流も無かったし、家同士も若干遠慮もあったような。
地域振興の話題で、「風の人と土の人」という話を聞いた事がある。元は農学者・玉井袈裟男が「風土舎創立宣言」の中で語った言葉が元らしい。
「風土という言葉があります/動くものと動かないもの/風と土/人にも風の性と土の性がある」
「土の人」はその地域に生まれ育ち、日々昔ながらの文化や生業を守っていく人、「風の人」は他の地域からやって来て、新しいアイディアや活力をもたらす人ーーという意味らしい。最近はアレンジで「水の人」や「光の人」などというオプションが加わるバージョンもあるらしいが。
私は双方の祖父母や両親とも先祖代々、この町で生まれ育ち生涯を過ごした典型的な「土の人」の家系なんだと思い込んでいた。
が、父が主に飲み会の席で語っていたことを繋ぎ合わせると「大工と百姓の家系」と称する祖母方は、元は青森側の旧南部領から移住して来た家らしく(全くの口伝だが、開墾で手柄を立てたとか何とか)祖父方は父曰く「夏は網引き、冬は木挽き」ーー半農半漁ならぬ半漁半林で生計を立てていたそうだ。意外と「山っ気」の多い御先祖様だったのかもしれない。
母方の祖父母の過去の話は今日初めて聞いた。
祖父が今で言う「フットワークの軽い人」だったのか、妻子を養う手段を懸命に探していた結果なのかはわからないが、先妻ーー一番上の伯父伯母の母親に当たる方と死別したのは函館にいる時だったそうだ。一旦、再婚相手の祖母の親族を頼ってこの町に落ち着いたものの、第五子で三女の母が生まれるまでは函館やこの近隣の町村を転々としていたという。
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ただ、言われてみると一番上の伯父伯母とは親もいとこ同士も歳が離れていて、本町やさっこ叔母の家ほどの交流も無かったし、家同士も若干遠慮もあったような。
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