ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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祖母の納骨

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 運良く誰一人転倒する者はなく、無事に祖母の墓の前に着いた。「竹花家の墓」と書かれた墓石は祖母が生前に新しく購入したもので、祖父と幼い叔父と伯母が先に眠っている。

 その隣にはやはり曾祖父母が眠る元々の「竹花家の墓」がある。まだ新しい墓碑銘にはお墓に眠る人達の名が記されており、祖父の隣には祖母の名と生前もらった戒名が刻まれ、存命を示す朱色がついこないだまで塗られていたはずだ。

 それが落とされて祖父達と同じように白い字になっているのも、端の方にほんのかすかに落としきれなかった朱が残されているのも悲しい。


 祖母が元々あった竹花家の墓を新しくし、自分の戒名を買ったのは私が中学か高校生くらいのころだったと思う。父には実は乳児の頃に亡くなった弟妹がおり、元の墓の横に小さな天然石の墓が二つ仲良く並んでいた。私の叔父叔母にあたるその子達の立派な墓を建ててやりたいとずっと思っていたのか、あの世で同居するならせめて曽祖父曽祖母とは二世帯住宅くらいの広さが欲しいーーと思ったのかどうかはわからない。

 生前に自分の墓と戒名を用意しておくというのは別に非常識ではないしむしろ、いざという時に次の世代にかけさせる手間暇を最低限にできるし、葬式も含めて手の届かない自分の死後の事をそこだけは思い通りにできる。
 だが、父と母は「既に墓があるのに」と思ったのか「あまりに準備がいいのは縁起が悪い」と思ったのか、あるいは「死ぬ」の「死にたい」のと繰り返す延長線上のようで「当てつけがましい」と思ったのかーー少しブツブツ言っていたようだが、それで気が済むならいいと静観していたようだ。どの道お金を出すのは祖母だし。

「『死ぬ』『死にたい』と愚痴る年寄りほどなかなか死なない」

 というのは田舎のブラックジョークか逆張りのおまじないか。その後、祖母のなかなか立派で高そうな戒名は二十年近く朱色のままだった。

 私達が夏の何倍もの時間をかけてやっとこさ着いた頃には、開けられたお墓の前に白木の位牌と遺影の飾られた祭壇が準備され、卒塔婆や笹は墓石の後ろに飾られていた。

 お墓の蓋が開けられているのは曽祖母の時も見た事があるのだろうが記憶にない。義伯父の納骨は四十九日の時で、墓の下に室のような場所があり骨壷ごと安置していた。
 祖父達はどうかわからないが、祖母の痕跡くらいは残っているのではないかと思っていたが、穴の中は剥き出しの茶色っぽい土だけで綺麗なものだった。

 
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