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よろず屋のおじさんと祖母 2
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夕方、そのことを知らない父がいつものように買い物に来た。おじさんは店の入り口のポリバケツに生けた花を見せて
「なじょしたもんだべ」
と相談した。
「どうせ また来るべぇすけ、これがら払ってけろ 」
父はそう答えて言って一万円を預けてきた。
祖母はそれからちょくちょくよろず屋に花を「納品」しに行き、おじさんは花の帳簿を別に付けてそれらしく設定した金額を少しずつ支払った。
父は置いてきたお金が無くなりそうな頃になるとおじさんに「支払い」をしに行った。
それはその年のその時期だけのことだったらしいのだが、代わりにーーということでいいのか何なのかーーとにかくそれ以来、祖母が孫を捜しに行く事はなくなったそうだ。
よろず屋のおじさんの返杯でほろ酔いになりながら、私はそれからも空の酒どっくりやビールのコップ、皿類を回収して台所と座敷を往復した。
父と晃夫の間に座ってジュースとオードブルをつまんでいた颯也も、大人だけの席に疲れたのか私と一緒に台所に戻って来た。
「颯也のお弁当あるよ。食べる?」
「うん」
三日間の昼食と夕食は、オードブルを配達してくれたのと同じ仕出し屋にお弁当を頼んであるそうだ。
料理を外注してもこれだけ大変なのに、曾祖母の葬儀の時は親戚と近所の女性達が総出で煮染めや黒飯や蕎麦を作っていた。
「煮染め」は盆や大晦日などに供される煮物で、「黒飯」は赤飯の不祝儀バージョンだ。豆の煮汁をつかわずに白黒に仕上げたもので、昔は小豆ではなく「ささげ豆」を使っていたらしいーー自分で作った事はないのだが。
昭和式の八畳ほどのダイニングキッチンに女が何人も集まって大量の料理を作ったり配膳で出たり入ったりしていたのを覚えている。身動きをとるのも大変だったろうに、よく喧嘩せずに作業ができたものだ。
もっとも母によると、曽祖母の本家筋の人達も来ていて、そこのお婆さんがあれこれと細かく注文をつけて仕切るのを祖母が嫌って敵前逃亡してしまったりーーと、細かい事件は色々あったらしいが。
「私たちも手が空いたときに交代で食べよう。しーちゃん、今のうちに食べたら」
洗い物が一段落した時、みっこ叔母がそう言ってくれた。
「叔母さん達は」
「私たちもそのうち食べるから」
私は颯也と一緒にお弁当をいただいた。念仏の時は緊張していて気づかなかったのだが、お昼ご飯が軽めだったのでかなり空腹だった。
みっこ伯母は母と一緒に座敷にお酒を運んで行ったまま、久しぶりにきょうだい達と話し込んでいるのかしばらく戻ってこなかった。
「なじょしたもんだべ」
と相談した。
「どうせ また来るべぇすけ、これがら払ってけろ 」
父はそう答えて言って一万円を預けてきた。
祖母はそれからちょくちょくよろず屋に花を「納品」しに行き、おじさんは花の帳簿を別に付けてそれらしく設定した金額を少しずつ支払った。
父は置いてきたお金が無くなりそうな頃になるとおじさんに「支払い」をしに行った。
それはその年のその時期だけのことだったらしいのだが、代わりにーーということでいいのか何なのかーーとにかくそれ以来、祖母が孫を捜しに行く事はなくなったそうだ。
よろず屋のおじさんの返杯でほろ酔いになりながら、私はそれからも空の酒どっくりやビールのコップ、皿類を回収して台所と座敷を往復した。
父と晃夫の間に座ってジュースとオードブルをつまんでいた颯也も、大人だけの席に疲れたのか私と一緒に台所に戻って来た。
「颯也のお弁当あるよ。食べる?」
「うん」
三日間の昼食と夕食は、オードブルを配達してくれたのと同じ仕出し屋にお弁当を頼んであるそうだ。
料理を外注してもこれだけ大変なのに、曾祖母の葬儀の時は親戚と近所の女性達が総出で煮染めや黒飯や蕎麦を作っていた。
「煮染め」は盆や大晦日などに供される煮物で、「黒飯」は赤飯の不祝儀バージョンだ。豆の煮汁をつかわずに白黒に仕上げたもので、昔は小豆ではなく「ささげ豆」を使っていたらしいーー自分で作った事はないのだが。
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もっとも母によると、曽祖母の本家筋の人達も来ていて、そこのお婆さんがあれこれと細かく注文をつけて仕切るのを祖母が嫌って敵前逃亡してしまったりーーと、細かい事件は色々あったらしいが。
「私たちも手が空いたときに交代で食べよう。しーちゃん、今のうちに食べたら」
洗い物が一段落した時、みっこ叔母がそう言ってくれた。
「叔母さん達は」
「私たちもそのうち食べるから」
私は颯也と一緒にお弁当をいただいた。念仏の時は緊張していて気づかなかったのだが、お昼ご飯が軽めだったのでかなり空腹だった。
みっこ伯母は母と一緒に座敷にお酒を運んで行ったまま、久しぶりにきょうだい達と話し込んでいるのかしばらく戻ってこなかった。
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