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ただいま 7〜お祖母ちゃんごめんね〜
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今朝まではこの部屋に祖母が寝ていたはずだ。
祖母は遺骨となって光沢のある白い布に包まれ、青を背景にした若々しい笑顔の遺影や供え物、沢山の花類と一緒に純白の祭壇に安置されている。
颯也と一緒に祖母に線香をあげ、手を合わせた。
ーーお祖母ちゃん、遅くなってごめんね。
茶の間で改めておじやおばに挨拶すると、さっこ叔母が目を細めて
「静子ちゃんも颯也君も、遠いのさよぐ来たやあ。他のおじさんおばさんもさっきまでいだったども」と言った。
昭和の十年代生まれにしては珍しく一人っ子だった父は、七人きょうだいの六番目である母のきょうだい達と本当に仲が良い。特にこういう一大事の相談事は、同年代の従兄弟達や年上の義兄姉達を頼りにしている。
母の両親は何十年も前に亡くなっているし、おじやおばたちの舅や姑も長寿で存命か早くに亡くなっている人たちばかりだ。
年号がまだ昭和だった二十年以上前、両親は一度この家で曾祖母の葬式を出しているはずなのだが、段取りや細かな決まり事がもう曖昧なようで「あの時、あれはどうしたんだべ」なんて話ばかりをしている。
おそらく昔は親族と集落のもっと若い世代が大勢手伝いに集まったので人手も足り、いざわからない事は年寄りにでも聞けばよかったのだろう。時代も違い、全て当時の通りにはできないのだろうし。
「家でやる葬儀」とは言っても、身内だけでは流石に無理なので葬儀屋には入ってもらうそうだ。ただ、大まかな型どおりのことは葬儀屋に聞けばいいのだが、こういう田舎では集落ごと、家ごとに細かい決まりごとがあって、自分たちで決めるしかないようなことが意外と多い。
あるいは昔は年寄りの目もあってきっちりやらなければいけなかったことを、今はどこまで略せるか……とか。
例えば子ども時代の記憶で曽祖母の時は台所で大騒ぎして作っていた料理の類を今回は外注し、葬儀と同じ日に初七日法要までやるそうだ。
さっこ叔母は一昨年、自宅で姑さんの葬式をあげており両親が手伝いに行く側だった。というわけで今回、両親がみっこ伯母と同じくらい頼りにしているのがさっこ叔母夫婦だ。
父が母のきょうだいを何かと頼りにしていることを、祖母は内心気にくわなかったフシがある。が、結局最後にはこうして世話になるのだから、これといった理由もなく人を嫌わない方がいい。
この母方のおじおば、いとこ達、祖母の実家の人たちあたりまでが私の把握している親戚達になる。この他に祖母方の本家や曾祖母の実家やさっきの曾祖父の本家とはまだ行き来があって通夜や葬式にも来るらしいのだが、私にはもうわからない。
「お前、お水の係をやれ。颯也は手紙書げ」と父が説明用の修飾語抜きでいきなり命じてくる。
「お水の係って何?」
「お水の花道」ってドラマがあるけど……そっちの「お水」じゃないのだけは確かそう。
祖母は遺骨となって光沢のある白い布に包まれ、青を背景にした若々しい笑顔の遺影や供え物、沢山の花類と一緒に純白の祭壇に安置されている。
颯也と一緒に祖母に線香をあげ、手を合わせた。
ーーお祖母ちゃん、遅くなってごめんね。
茶の間で改めておじやおばに挨拶すると、さっこ叔母が目を細めて
「静子ちゃんも颯也君も、遠いのさよぐ来たやあ。他のおじさんおばさんもさっきまでいだったども」と言った。
昭和の十年代生まれにしては珍しく一人っ子だった父は、七人きょうだいの六番目である母のきょうだい達と本当に仲が良い。特にこういう一大事の相談事は、同年代の従兄弟達や年上の義兄姉達を頼りにしている。
母の両親は何十年も前に亡くなっているし、おじやおばたちの舅や姑も長寿で存命か早くに亡くなっている人たちばかりだ。
年号がまだ昭和だった二十年以上前、両親は一度この家で曾祖母の葬式を出しているはずなのだが、段取りや細かな決まり事がもう曖昧なようで「あの時、あれはどうしたんだべ」なんて話ばかりをしている。
おそらく昔は親族と集落のもっと若い世代が大勢手伝いに集まったので人手も足り、いざわからない事は年寄りにでも聞けばよかったのだろう。時代も違い、全て当時の通りにはできないのだろうし。
「家でやる葬儀」とは言っても、身内だけでは流石に無理なので葬儀屋には入ってもらうそうだ。ただ、大まかな型どおりのことは葬儀屋に聞けばいいのだが、こういう田舎では集落ごと、家ごとに細かい決まりごとがあって、自分たちで決めるしかないようなことが意外と多い。
あるいは昔は年寄りの目もあってきっちりやらなければいけなかったことを、今はどこまで略せるか……とか。
例えば子ども時代の記憶で曽祖母の時は台所で大騒ぎして作っていた料理の類を今回は外注し、葬儀と同じ日に初七日法要までやるそうだ。
さっこ叔母は一昨年、自宅で姑さんの葬式をあげており両親が手伝いに行く側だった。というわけで今回、両親がみっこ伯母と同じくらい頼りにしているのがさっこ叔母夫婦だ。
父が母のきょうだいを何かと頼りにしていることを、祖母は内心気にくわなかったフシがある。が、結局最後にはこうして世話になるのだから、これといった理由もなく人を嫌わない方がいい。
この母方のおじおば、いとこ達、祖母の実家の人たちあたりまでが私の把握している親戚達になる。この他に祖母方の本家や曾祖母の実家やさっきの曾祖父の本家とはまだ行き来があって通夜や葬式にも来るらしいのだが、私にはもうわからない。
「お前、お水の係をやれ。颯也は手紙書げ」と父が説明用の修飾語抜きでいきなり命じてくる。
「お水の係って何?」
「お水の花道」ってドラマがあるけど……そっちの「お水」じゃないのだけは確かそう。
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