ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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北三陸への道 2〜みっこ伯母に会う〜

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 冬の厳しさもさることながら、毎日天気予報とにらめっこしながら玄関先や屋根の除雪に水道の凍結防止、灯油やプロパンガスといった燃料の管理。生活に直結した日々の気配りと、それが苦にならない勤勉さがなければ北国での生活は不可能だ。

 変則的に雪が降る日が無いでもないが、スタッドレスタイヤに履き替えなくてもほぼ一年じゅう車で移動ができて、何かを買い忘れてもちょっと出ればコンビニや大型店があり、送料や配達区域を気にすることなく通販や宅配ピザが頼めて東京にも日帰りで行けるーー温暖で便利であることを特に意識することもないほどそれに慣れてしまった身には、やはり無理なのだろう。

 いつもどこにいても心の中にあると思っていた故郷が「遠くにありて思うもの」になってしまっている。

「買い物終わったよ」

 戻ってきた颯也はそう言って「東北地方限定」と書かれたスナック菓子の大箱をレジ袋から出して嬉しそうにかざした。
 今では気軽な土産として定番の、大手製菓のご当地限定バージョンが登場し出してちょっとしたブームになっていた頃だ。

「帰ったらサッカーの友達に分けるんだ。こっちは悠也の分」

 颯也は種類の違う大小二種類の箱を見せて満面の笑みだ。

「こんなのが売ってるのね。でも今じゃなくて帰りに買ってもよかったんじゃないの?」

「あっ、しまった」

 真顔の颯也にまた噴き出した。

「帰りは荷物がもっと増えるだろうから、宅配便で一緒に送ればいいよ。きっとみんな喜ぶよ。悠也も」

 悠也に気を使ってあまり旅支度の雰囲気を出さないように今朝、普段通りに学校に送りだしたのだがもう会いたくて仕方がない。

 この子達がいるのだから私の選択もそう悪いものではなかったのかもしれないーーこれからも色々な事があるんだろうけど、きっと大丈夫だ。

 バスロータリーに向かう道を探して案内図を見ていると後ろから声をかけられた。

「あぃや(あら)、しーちゃんでねえの」

 振り返ると品のある、母そっくりの年配の女性が笑顔で立っていた。

「みっこ伯母さん」

 深い混色の色目が綺麗に絡み合っている、ブークレーの手編み帽。昭和風の上品な栗色のパーマヘア。
 モヘアみたいな触感の生地なのに、しっかりした仕立ての濃グレーのコートの襟口からは帽子と同じ配色のマフラーがのぞいている。軽くて暖かそうだが、なんという生地なんだろう……。

 小旅行用の黒いバックを持つえんじ色の手袋が差し色になっていて、綺麗だと思った。

「しばらくでした。ご無沙汰してすみません」
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