赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

文字の大きさ
上 下
134 / 144
10

華麗なるミッション・インポシブル大作戦

しおりを挟む
 無事、エンプレス・ソフィア号のパーティ会場の潜入に成功した。昼間のがらんどうのホールは、初めて来た時とずいぶん雰囲気が違う。豪華な造りには違いないが、夜の魔法は解けてしまっているような。

 俺はみんなの顔を見渡したーー強烈な個性で敏腕(?)プロデューサーを煙に巻いた、レイコ・ヌマノボー役のジェシカ。スタジオスタッフ設定のアンジェラとダイ、そしてモリー。俺と同じ花屋役の清さん、敏さん、達さん。ユーラだけでなくクルーの誰かに顔を覚えられているかもしれない俺とモリーは髪型を変え、眼鏡とマスクで変装している。

 ンドゥールさんの、どこかのスピリチュアル系コミュニティの精神指導者みたいな荘厳さと怪しさ、空気を読まない演技もなかなか味があった。もしかして俺ら、劇団作れんじゃね?

 いや、これはほんのオープニングだ。それに成功者する劇には必ず名監督と名脚本家が要る。

「古賀さん。潜入に成功した。そっちはどう?」

 俺はインカム型端末で、見張り兼船外待機中の古賀さんに状況を報告した。ありとあらゆるルートを駆使してユーラがヌマノボーを探しているという情報を入手し、彼女になりすまして近づく作戦を考えたのも彼だ。

「船を降りたユーラは、先ほどカーラ・イェン社に姿を現したそうです」

 D社の社員は手分けをして、ユーラの尾行や監視、情報収集や情報分析を担っている。

「玄英は?一緒ですか?」

「いや。秘書と弁護人を引き連れて厳重に警備員に守られてはいますが一人です。玄英はまだ船内にいるはずです」

 カーラ・イェン社ーー今日は堀田達が座り込みをしているはずだった。彼らの激励がてら張りついているD社社員から追って情報が入る事になっているーー騒ぎにならなきゃいいけど。

 いや、ひとまず、玄英の救出に集中しよう。その後のことはその後のことだ。

「予定通り、計画の第二段に入ります」

 俺達はリバーシブルの作業着を裏返し、全員帽子とマスクをつけて清掃担当のクルーに扮した。このコスチュームも、古賀さんが手配してくれたのだが、古賀さん一体(以下略)

「スリルあるわね!スパイ大作戦みたい?」

 モリーがノリノリで言ったーーそこはミッション・インポシブルじゃねえの?

 本来の招待客はまだ乗船しない時間だ。

 そこで「サプライズで結婚式をすると小耳に挟んだ。義弟(仮)にサプライズ返しで歌をプレゼントしたい」とプロデューサーに直談判し、ンドゥールさん共々ねじ込んだそうだ。やるな。

 積極的に協力してくれるのはありがたいのだが、この人やっぱり、完全に面白がってるだろ!

 あと、青葉造園三代の人脈を駆使して大手生花配送企業の孫受け仕事に俺たちをねじ込んでくれた祖父ちゃんにも感謝だ。

「モリーはその格好だとかえって目立つよ!本人役としてンドゥールさんと一緒に動いてくれない?」

「せっかく着替えたのに!」

 モリーはつまらなそうに頬を膨らませた。

「正規の客の側で動ける人も必要なんだよ。お願い」

 モリーにどうにか納得させ、船内捜索開始ーー制限時間はユーラが戻るまでの役二時間ほどだ。

 船内は一つの町くらい広いし、客室も馬鹿みたいにたくさんあるが、高い部屋から順に探していけばきっとーー


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

処理中です...