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華麗なるミッション・インポシブル大作戦
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無事、エンプレス・ソフィア号のパーティ会場の潜入に成功した。昼間のがらんどうのホールは、初めて来た時とずいぶん雰囲気が違う。豪華な造りには違いないが、夜の魔法は解けてしまっているような。
俺はみんなの顔を見渡したーー強烈な個性で敏腕(?)プロデューサーを煙に巻いた、レイコ・ヌマノボー役のジェシカ。スタジオスタッフ設定のアンジェラとダイ、そしてモリー。俺と同じ花屋役の清さん、敏さん、達さん。ユーラだけでなくクルーの誰かに顔を覚えられているかもしれない俺とモリーは髪型を変え、眼鏡とマスクで変装している。
ンドゥールさんの、どこかのスピリチュアル系コミュニティの精神指導者みたいな荘厳さと怪しさ、空気を読まない演技もなかなか味があった。もしかして俺ら、劇団作れんじゃね?
いや、これはほんのオープニングだ。それに成功者する劇には必ず名監督と名脚本家が要る。
「古賀さん。潜入に成功した。そっちはどう?」
俺はインカム型端末で、見張り兼船外待機中の古賀さんに状況を報告した。ありとあらゆるルートを駆使してユーラがヌマノボーを探しているという情報を入手し、彼女になりすまして近づく作戦を考えたのも彼だ。
「船を降りたユーラは、先ほどカーラ・イェン社に姿を現したそうです」
D社の社員は手分けをして、ユーラの尾行や監視、情報収集や情報分析を担っている。
「玄英は?一緒ですか?」
「いや。秘書と弁護人を引き連れて厳重に警備員に守られてはいますが一人です。玄英はまだ船内にいるはずです」
カーラ・イェン社ーー今日は堀田達が座り込みをしているはずだった。彼らの激励がてら張りついているD社社員から追って情報が入る事になっているーー騒ぎにならなきゃいいけど。
いや、ひとまず、玄英の救出に集中しよう。その後のことはその後のことだ。
「予定通り、計画の第二段に入ります」
俺達はリバーシブルの作業着を裏返し、全員帽子とマスクをつけて清掃担当のクルーに扮した。このコスチュームも、古賀さんが手配してくれたのだが、古賀さん一体(以下略)
「スリルあるわね!スパイ大作戦みたい?」
モリーがノリノリで言ったーーそこはミッション・インポシブルじゃねえの?
本来の招待客はまだ乗船しない時間だ。
そこで「サプライズで結婚式をすると小耳に挟んだ。義弟(仮)にサプライズ返しで歌をプレゼントしたい」とプロデューサーに直談判し、ンドゥールさん共々ねじ込んだそうだ。やるな。
積極的に協力してくれるのはありがたいのだが、この人やっぱり、完全に面白がってるだろ!
あと、青葉造園三代の人脈を駆使して大手生花配送企業の孫受け仕事に俺たちをねじ込んでくれた祖父ちゃんにも感謝だ。
「モリーはその格好だとかえって目立つよ!本人役としてンドゥールさんと一緒に動いてくれない?」
「せっかく着替えたのに!」
モリーはつまらなそうに頬を膨らませた。
「正規の客の側で動ける人も必要なんだよ。お願い」
モリーにどうにか納得させ、船内捜索開始ーー制限時間はユーラが戻るまでの役二時間ほどだ。
船内は一つの町くらい広いし、客室も馬鹿みたいにたくさんあるが、高い部屋から順に探していけばきっとーー
俺はみんなの顔を見渡したーー強烈な個性で敏腕(?)プロデューサーを煙に巻いた、レイコ・ヌマノボー役のジェシカ。スタジオスタッフ設定のアンジェラとダイ、そしてモリー。俺と同じ花屋役の清さん、敏さん、達さん。ユーラだけでなくクルーの誰かに顔を覚えられているかもしれない俺とモリーは髪型を変え、眼鏡とマスクで変装している。
ンドゥールさんの、どこかのスピリチュアル系コミュニティの精神指導者みたいな荘厳さと怪しさ、空気を読まない演技もなかなか味があった。もしかして俺ら、劇団作れんじゃね?
いや、これはほんのオープニングだ。それに成功者する劇には必ず名監督と名脚本家が要る。
「古賀さん。潜入に成功した。そっちはどう?」
俺はインカム型端末で、見張り兼船外待機中の古賀さんに状況を報告した。ありとあらゆるルートを駆使してユーラがヌマノボーを探しているという情報を入手し、彼女になりすまして近づく作戦を考えたのも彼だ。
「船を降りたユーラは、先ほどカーラ・イェン社に姿を現したそうです」
D社の社員は手分けをして、ユーラの尾行や監視、情報収集や情報分析を担っている。
「玄英は?一緒ですか?」
「いや。秘書と弁護人を引き連れて厳重に警備員に守られてはいますが一人です。玄英はまだ船内にいるはずです」
カーラ・イェン社ーー今日は堀田達が座り込みをしているはずだった。彼らの激励がてら張りついているD社社員から追って情報が入る事になっているーー騒ぎにならなきゃいいけど。
いや、ひとまず、玄英の救出に集中しよう。その後のことはその後のことだ。
「予定通り、計画の第二段に入ります」
俺達はリバーシブルの作業着を裏返し、全員帽子とマスクをつけて清掃担当のクルーに扮した。このコスチュームも、古賀さんが手配してくれたのだが、古賀さん一体(以下略)
「スリルあるわね!スパイ大作戦みたい?」
モリーがノリノリで言ったーーそこはミッション・インポシブルじゃねえの?
本来の招待客はまだ乗船しない時間だ。
そこで「サプライズで結婚式をすると小耳に挟んだ。義弟(仮)にサプライズ返しで歌をプレゼントしたい」とプロデューサーに直談判し、ンドゥールさん共々ねじ込んだそうだ。やるな。
積極的に協力してくれるのはありがたいのだが、この人やっぱり、完全に面白がってるだろ!
あと、青葉造園三代の人脈を駆使して大手生花配送企業の孫受け仕事に俺たちをねじ込んでくれた祖父ちゃんにも感謝だ。
「モリーはその格好だとかえって目立つよ!本人役としてンドゥールさんと一緒に動いてくれない?」
「せっかく着替えたのに!」
モリーはつまらなそうに頬を膨らませた。
「正規の客の側で動ける人も必要なんだよ。お願い」
モリーにどうにか納得させ、船内捜索開始ーー制限時間はユーラが戻るまでの役二時間ほどだ。
船内は一つの町くらい広いし、客室も馬鹿みたいにたくさんあるが、高い部屋から順に探していけばきっとーー
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