112 / 144
9
ガルテン松山、危機一髪!
しおりを挟む
「玄英もあなたも公私混同を嫌うのはよく知っていますが、彼は私が説得しますので」
あの。俺の話、聞いてました?
「君が社長秘書なら玄英も満更じゃないと思うんです。もちろん、それなりの待遇でお迎えしますよ」
「野暮は勘弁ですよ。せっかくお洒落なSDGsブランドで売ってる会社なのに、愛人がシャシャり出て社長秘書やってるとか。昭和のドロ沼サスペンスですか」
「え、恒星、玄英の婚約者じゃなくて愛人なの?」
ボケ方!
「違いますけどっ!」
「愛人だろうが私情挟んでようが、報酬並の結果さえ出してくれたら誰も文句は言いませんよ」
これだからアメリカ型企業ってやつは……
いや、日本型企業は先進国でも生産性低いって言われてるし。成果第一主義ってのは真似すべきなのか?
「こんな状況だし、万一あれこれ会社バレしたら転職考えるのかもしれませんが、御社だけは無いですね。とても務まりそうにない(三度目)」
「相変わらず清々しいくらいの潔癖さと謙虚さですね。玄英も恒星のそういうところに惹かれたんでしょうか」
今は離れているからそれすら懐かしい気もするが、玄英とのプライベートは結構な体力勝負だ。その上、仕事でも24時間一緒とか……死ぬわ!18禁的な意味で生産性下がる気しかしない。
ひょっとして玄英の方も、会社に行ったら完全に別なスイッチが入るのかもしれない。が、ご主人様が駄犬のお世話をした上で無能呼ばわり連発されるとか、一体何のプレイだよ!
それはそれでもっと嫌だあああー!
頼むから察してよ!
二日ほど経った。
「ぎゃああああぁ……マジ尊い!」
「ユーラ・チャンと遠山社長って!」
「公式はファンの妄想の上をゆく……古き言い伝えはまことであった」
例の舞踏会写真が巡り巡って課内の女子社員達にも回って来たらしい。課長、課長補佐とも不在なのだが、鬼のいぬ間だと思ってどいつもこいつも自由すぎる。やれやれ。
「死ねる。推しカプのためなら死ねる」
しかも例の「遠山来社Xデー対策シフト」(俺と堀田が数パターン編み出したが最近はリモートのお陰で出番がない)の時に協力してくれた、最後の砦的女子社員までテンションがおかしい。もしかして裏垢で誤爆すんのでも流行ってんのか?
「男が二人で踊ってる写真なんか見て楽しいか?」
俺は疳に触って、つい聞いてみた。
「うふふふふふ……」
「だからいいのよねえ」
「ご飯三杯……ううん、洋モノだけに食パン一斤いける!」
彼女達は意味深に目配せし合った。
「何なら恒星君と堀田君にも毎日三次元ネタ提供してくれてありがとうございますって感じだし?」
「黒髪受けは永遠の定番ですものね!」
「?お、おう?……ま、まかせとけ?」
やっぱり何だかよくわからんが感謝された。
「みんな。大事な話があるの」
あ、課長が戻ってきたーー心なしか息を切らし気味で少し顔色が悪い。
「これから緊急のミーティングをします。みんなちょっと集まって」
慌てて自席に戻っていた女子達も俺も、課員一同水島課長のデスクの周りに集まった。
課長は課内の全員を見渡すとぎゅっと唇を噛むような仕草をし、厳しい表情でこう告げた。
「我が社、ガルテン松山は来年を目処に、カーター・イェン社に吸収合併されるそうよ」
ーーえ?
あの。俺の話、聞いてました?
「君が社長秘書なら玄英も満更じゃないと思うんです。もちろん、それなりの待遇でお迎えしますよ」
「野暮は勘弁ですよ。せっかくお洒落なSDGsブランドで売ってる会社なのに、愛人がシャシャり出て社長秘書やってるとか。昭和のドロ沼サスペンスですか」
「え、恒星、玄英の婚約者じゃなくて愛人なの?」
ボケ方!
「違いますけどっ!」
「愛人だろうが私情挟んでようが、報酬並の結果さえ出してくれたら誰も文句は言いませんよ」
これだからアメリカ型企業ってやつは……
いや、日本型企業は先進国でも生産性低いって言われてるし。成果第一主義ってのは真似すべきなのか?
「こんな状況だし、万一あれこれ会社バレしたら転職考えるのかもしれませんが、御社だけは無いですね。とても務まりそうにない(三度目)」
「相変わらず清々しいくらいの潔癖さと謙虚さですね。玄英も恒星のそういうところに惹かれたんでしょうか」
今は離れているからそれすら懐かしい気もするが、玄英とのプライベートは結構な体力勝負だ。その上、仕事でも24時間一緒とか……死ぬわ!18禁的な意味で生産性下がる気しかしない。
ひょっとして玄英の方も、会社に行ったら完全に別なスイッチが入るのかもしれない。が、ご主人様が駄犬のお世話をした上で無能呼ばわり連発されるとか、一体何のプレイだよ!
それはそれでもっと嫌だあああー!
頼むから察してよ!
二日ほど経った。
「ぎゃああああぁ……マジ尊い!」
「ユーラ・チャンと遠山社長って!」
「公式はファンの妄想の上をゆく……古き言い伝えはまことであった」
例の舞踏会写真が巡り巡って課内の女子社員達にも回って来たらしい。課長、課長補佐とも不在なのだが、鬼のいぬ間だと思ってどいつもこいつも自由すぎる。やれやれ。
「死ねる。推しカプのためなら死ねる」
しかも例の「遠山来社Xデー対策シフト」(俺と堀田が数パターン編み出したが最近はリモートのお陰で出番がない)の時に協力してくれた、最後の砦的女子社員までテンションがおかしい。もしかして裏垢で誤爆すんのでも流行ってんのか?
「男が二人で踊ってる写真なんか見て楽しいか?」
俺は疳に触って、つい聞いてみた。
「うふふふふふ……」
「だからいいのよねえ」
「ご飯三杯……ううん、洋モノだけに食パン一斤いける!」
彼女達は意味深に目配せし合った。
「何なら恒星君と堀田君にも毎日三次元ネタ提供してくれてありがとうございますって感じだし?」
「黒髪受けは永遠の定番ですものね!」
「?お、おう?……ま、まかせとけ?」
やっぱり何だかよくわからんが感謝された。
「みんな。大事な話があるの」
あ、課長が戻ってきたーー心なしか息を切らし気味で少し顔色が悪い。
「これから緊急のミーティングをします。みんなちょっと集まって」
慌てて自席に戻っていた女子達も俺も、課員一同水島課長のデスクの周りに集まった。
課長は課内の全員を見渡すとぎゅっと唇を噛むような仕草をし、厳しい表情でこう告げた。
「我が社、ガルテン松山は来年を目処に、カーター・イェン社に吸収合併されるそうよ」
ーーえ?
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
夏の扉を開けるとき
萩尾雅縁
BL
「霧のはし 虹のたもとで 2nd season」
アルビーの留学を控えた二か月間の夏物語。
僕の心はきみには見えない――。
やっと通じ合えたと思ったのに――。
思いがけない闖入者に平穏を乱され、冷静ではいられないアルビー。
不可思議で傍若無人、何やら訳アリなコウの友人たちに振り回され、断ち切れない過去のしがらみが浮かび上がる。
夢と現を両手に掬い、境界線を綱渡りする。
アルビーの心に映る万華鏡のように脆く、危うい世界が広がる――。
*****
コウからアルビーへ一人称視点が切り替わっていますが、続編として内容は続いています。独立した作品としては読めませんので、「霧のはし 虹のたもとで」からお読み下さい。
注・精神疾患に関する記述があります。ご不快に感じられる面があるかもしれません。
(番外編「憂鬱な朝」をプロローグとして挿入しています)
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる