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いざって時の思い出の品リメイク。何という事でしょう(キラキラ)
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「?どうしてだよ?礼服とか着物借りんの、これが初めてじゃないし……」
清さんがタキシード持ってたら全部解決だったのだろうが、さすがに期待する方が無理だ。
清さんとは今現在、日常会話と仕事の話はできているものの、肝心の玄英の話題になるといつも逃げられてしまう。同じ反対されるにしても、俺の思いだけはちゃんと話しておきたいのに……
「今回はちょっと気まずいけど、玄英がらみだって事を黙ってたら貸してくれると思う」
「何でそこで黙るの?隠す事ないでしょう。清さんに着物を借りるくらいなら、僕の見立てたタキシードを着るべきだ」
玄英はとにかくそう言ったきり、腕を組んだままムスッと押し黙ってしまった。こうなってしまうともう、テコでも譲歩してくれないーーしかもなまじゴージャス系の美人なだけに、怒りの表情で沈黙している時の圧が凄い。古賀さん達が仕事中の玄英は気難しいとか扱い辛いなどとこぼしていたのが、少しわかるような気がする。
また話がふり出しに戻ってしまったーーしかも、一周回って余計にこじれている。玄英がここまでムキになる理由もわからない。
俺はため息をついた。
「そう一方的に決めつけんなよ。何で清さんのことになるとそんなにムキになるのさ?研修の時は仲良く……はないにしても、うまくやってたじゃない?」
どうやら俺の知らない隙に清さんと何かあったらしいのだが、話してくれないし……
「俺だって玄英の姉さんが来るって言うから、耐え難きを耐えて不慣れなパーティに行こうとしてるんだぞ。少しは譲歩してくれよ」
玄英の表情が急に、ふわっと柔らかくなった。
「わかった」
「本当か?よかった」
「考えてみたら着物姿のご主人様ってきっと、タキシード以上にソソるだろうし、一度羽織の紐で縛られてみた……」
「目的外使用前提かよ!絶対嫌だからな!」
「二人分の◯液くっつけてしれっと返しちゃおうか?」
天真爛漫な笑顔でこのトンデモ発言……一体どこからそんな発想が出てくるんだよ!
「恐ろしいこと言うなよ!今度こそ俺、清さんに殺されるわ!」
「タキシードならいいの?」
「いいわけないだろ!この腹黒ド変態野郎!」
ドMだけじゃなくコスプレマニアなんかなこの人……あんまり掘り下げたくないけど。
「十年以上前の物とは思えない、いいお品ですね」
結局、玄英が昔プロムで着たとかいうタキシードの寸法を直して俺が譲り受けることになり、この人がさっそく呼ばれたーー俺ともすっかり顔見知りになったコンシェルジュ氏が俺の採寸をして直しに出してくれるという。
本職はだしでやたら手際がいいし、俺の水没したスマホを復活させてくれた事まであるしーーマルチに有能過ぎじゃね?この人。元職一体何よ?
それはともかく、十代の頃の玄英は今よりだいぶ線が細かったようだ。横幅は少し詰めれば済みそうだが、手足分の補正が思い出のランドセルでミニチュア作成できるレベル……(くそ)
「それではこちらの寸法で、急ぎでお出ししておきますね」
「お願いします。僕も楽しみだなぁ」
内なるブラックもヘンタイも封印した玄英は終始ノーブルな笑みを湛え、息子の入学スーツでも仕立てる父親よろしく上機嫌だった。
思い出のタキシードを託されたコンシェルジュ氏を見送るとさっそく、玄英が甘えてしなだれかかってきた。
「ね、便利でしょ?恒星もここに越してくればいいのに」
「そのことなんだけど……」
清さんがタキシード持ってたら全部解決だったのだろうが、さすがに期待する方が無理だ。
清さんとは今現在、日常会話と仕事の話はできているものの、肝心の玄英の話題になるといつも逃げられてしまう。同じ反対されるにしても、俺の思いだけはちゃんと話しておきたいのに……
「今回はちょっと気まずいけど、玄英がらみだって事を黙ってたら貸してくれると思う」
「何でそこで黙るの?隠す事ないでしょう。清さんに着物を借りるくらいなら、僕の見立てたタキシードを着るべきだ」
玄英はとにかくそう言ったきり、腕を組んだままムスッと押し黙ってしまった。こうなってしまうともう、テコでも譲歩してくれないーーしかもなまじゴージャス系の美人なだけに、怒りの表情で沈黙している時の圧が凄い。古賀さん達が仕事中の玄英は気難しいとか扱い辛いなどとこぼしていたのが、少しわかるような気がする。
また話がふり出しに戻ってしまったーーしかも、一周回って余計にこじれている。玄英がここまでムキになる理由もわからない。
俺はため息をついた。
「そう一方的に決めつけんなよ。何で清さんのことになるとそんなにムキになるのさ?研修の時は仲良く……はないにしても、うまくやってたじゃない?」
どうやら俺の知らない隙に清さんと何かあったらしいのだが、話してくれないし……
「俺だって玄英の姉さんが来るって言うから、耐え難きを耐えて不慣れなパーティに行こうとしてるんだぞ。少しは譲歩してくれよ」
玄英の表情が急に、ふわっと柔らかくなった。
「わかった」
「本当か?よかった」
「考えてみたら着物姿のご主人様ってきっと、タキシード以上にソソるだろうし、一度羽織の紐で縛られてみた……」
「目的外使用前提かよ!絶対嫌だからな!」
「二人分の◯液くっつけてしれっと返しちゃおうか?」
天真爛漫な笑顔でこのトンデモ発言……一体どこからそんな発想が出てくるんだよ!
「恐ろしいこと言うなよ!今度こそ俺、清さんに殺されるわ!」
「タキシードならいいの?」
「いいわけないだろ!この腹黒ド変態野郎!」
ドMだけじゃなくコスプレマニアなんかなこの人……あんまり掘り下げたくないけど。
「十年以上前の物とは思えない、いいお品ですね」
結局、玄英が昔プロムで着たとかいうタキシードの寸法を直して俺が譲り受けることになり、この人がさっそく呼ばれたーー俺ともすっかり顔見知りになったコンシェルジュ氏が俺の採寸をして直しに出してくれるという。
本職はだしでやたら手際がいいし、俺の水没したスマホを復活させてくれた事まであるしーーマルチに有能過ぎじゃね?この人。元職一体何よ?
それはともかく、十代の頃の玄英は今よりだいぶ線が細かったようだ。横幅は少し詰めれば済みそうだが、手足分の補正が思い出のランドセルでミニチュア作成できるレベル……(くそ)
「それではこちらの寸法で、急ぎでお出ししておきますね」
「お願いします。僕も楽しみだなぁ」
内なるブラックもヘンタイも封印した玄英は終始ノーブルな笑みを湛え、息子の入学スーツでも仕立てる父親よろしく上機嫌だった。
思い出のタキシードを託されたコンシェルジュ氏を見送るとさっそく、玄英が甘えてしなだれかかってきた。
「ね、便利でしょ?恒星もここに越してくればいいのに」
「そのことなんだけど……」
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