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そぎと寸胴、南天と蝋梅、本妻と……?
止
しおりを挟む清武さんは青葉造園期待の若手社員(当社比)であり、俺の小さい時から世話になっている、兄貴兼母親代わりのような存在で祖父ちゃんの次に頭の上がらない人だ。
この人だけは俺達の仲を知っているーーが、決して認めてもらっている訳ではない。
たまたま俺の部屋で玄英をベッドに縛りつけて半裸で絡み合っているところ(合意かつ未遂)を見られてしまった。
生まれて初めて死ぬかと思うほどぶん殴られたけど、あの時は完全に俺が悪いし、今の今まで祖父ちゃんには黙っててもらってる。
清さんにしてみればならぬ堪忍、するが堪忍ーーというところなのだろう。
「きっ、清さん。玄英は別に……ほら仕事はちゃんと……」
「嫌だなぁ。単なる文化の違いですよお。ほら、僕って帰国子女だしいぃ」
何故か開き直って、覆いかぶさるように俺に堂々と抱きついて頬擦りまでしてくる玄英。
清さんは腕組みしたまま国宝阿吽像の吽の方そっくりな顔をしたまま、こめかみの静脈を痙攣させたーー冬の雷、電撃百万ボルトが落ちる五秒前ーー退避必須。
「ばっ、馬鹿!玄英っ……ふざけてないで。仕事しよっ。な?」
慌てて玄英を押し退け、作業に戻そうとする俺。
「ほら玄英、もう少しだからさっさと仕上げちゃおうぜ……」
ちょっ……!なにこの人、清さんとメンチ切り合ってんの!駄犬のくせに命知らずにもほどがある!
「遠山社長。こちとらコレが年明けのおまんまの種で本日が天王山なんでさ。道楽半分の物見遊山の御相手はできかねます」
「清さん、いくら何でもそんな言い方……」
「そういう認識は残念ですね。僭越ながら、こちらの大事なお坊ちゃんの面倒でしたらずいぶん見させていただいてるつもりですが」
玄英、目が笑ってないで笑うのやめて……なまじ美人なだけに怖い。つかゴリゴリの帰国子女のくせ、「センエツ」なんて単語どこで覚えて来たよ?新しいパターンじゃね?これ。
「面倒ねえ……お綺麗なツラして一体どこの面倒見てくれてんだか」
清さんっ!微妙に下ネタ!
玄英救出作戦の時は色々ヤバいのに参加してくれたし、身体を張って(撃たれてまで!)俺と玄英のことを守ってくれたし……てっきり仲直りしてくれたんだとばかり思ってたのに。
俺ならともかく、玄英との仲は険悪になるばかりだ……何故?
「何なら坊ちゃんの再就職も僕の会社でお引き受けいたしますが?」
「いいえ、お構いなく。坊ちゃんは青葉造園の大事な次期社長でさ。社長同士ならあんたと同格だ。あんまりナメた真似しねぇでもらえますかね?」
いや、ホントやめて。いたたまれないから。世間一般的なスペックの差は俺が一番よくわかってるし、後を継ぐ気も(定期)……って清さん、一体何と戦ってるんだ?
「とにかく、不埒な考えのまんまで大事なお客さんの門松を扱って欲しくねぇんです。歳神様が宿る依代ですから」
清さんは阿の方の顔でそう吐き捨てると、自分の作業に戻って行った……チビるかと思った。なんせ日本刀でガチで銃弾を止めようとした漢である。
「日本人特有のスピリチュアル論だねえ。清さんが言うと説得力あるわ。さすが終戦を信じずに南の島でサバイバル生活してた旧日本兵だけのことはある」
いやいや!例えは上手いが清さんにそんな経歴無いし、もっと最近の人だから!(斬られるぞマジで)
つか、その清さんに一歩も引かずに「タイマン上等」な玄英って……実は密かに恐ろしい子なのでは……
「さー仕事仕事っ♪」
切り替え早すぎだし!
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