4 / 24
年末恒例、青葉造園の門松作りだよ!ご用とお急ぎでない方は(以下略)
仁
しおりを挟む
「日本の神様、七人いるでしょ?イラストで見た事がある」
……あ、もしかして七福神のことを言ってるのか?
「えーと、それともちょっと違うっていうか。歳神様っていうのはお正月専門の神様で、キャラ立ちはしてない感じ……?」
いや、我ながら何言ってんだか。
「シチフクジン、お正月のCMにも出てたよ?」
「いや、むしろ連中は年中無休っていうか、別会派っていうか……七福神は一旦忘れて?」
実家には神棚と御先祖様の仏壇が両方置いてあって、八百万の神様が云々とか言いながら仕事ではクリスマスの電飾からハロウィンの寄せ植えまで請け負うし……一神教の国から来たらかなりカオスな宗教観じゃないかな。玄英は玄英でその辺ライトっていうか柔軟性を待ってるみたいで、お互いあんまり気にしたことはないんだけど。
「俺もその辺はあんまり深く考えた事はないんだけど、門松は……二つで一軒の家っていうイメージ……かな?」
「二つで一軒……?」
「だから歳神様は両方の門松に宿る」
「……?」
そもそもこういう定量化って正解なのか?
キリスト教の神様って、形のない精神エネルギーの塊というか炎のような(?)イメージだと聞いたことがあるけど……実感を持って相手の持ってるイメージを想像すんのって難しいな。
たぶんこういうのをお互い説明するために、宗教学とか哲学とか、形に見えないモノを云々する学門が存在するんだろう。
「おお、よくできてるじゃないですか」
専務の達さんが、俺達の門松を確認しに来た。
「あ、達さん。いいところへ」
俺が玄英と俺自身の疑問をぶつけると、
「まあまあ、坊ちゃん。あんまり最初にいっぺんに説明しても、ね。ダイの奴だって二年目でまだちんぷんかんぷんだし。けどね。朝、神棚拝んだでしょ?だから数作ってるうちにおいおいわかると思いますよ?」
と、スポ根精神論レベルの大変ざっくりしたアドバイスをくれた。
「そういうもんなの?」
達さんは俺には答えず、真剣な目で門松の細かい出来をチェックしている。
繁忙期だけのバイト要員止まりの俺だが、それでも基礎的な作業に関しては祖父ちゃんや兄弟子達にずいぶん叩き込まれた。この基本の門松だって十ン年選手である。さすがにまったくのNGを出されることは無くなったが、厳しいベテラン職人の目でOKが出されるまで毎回緊張する。
達さんは「いいでしょう。これ掛けて積み込み場に運んでといてください」と届け先を記した荷札を二枚、俺に渡した。
俺達の門松が無事にお客様の門松になったーーちょっとホッとした。
「ささ、この調子でどんどんお願いしますよ。仕事のケツは決まってんですから」
喋ってないで仕事しろってことか。
確かにあれこれ考えるより先にしなきゃならない作業は山ほどある。正月に二度寝でもしながらゆっくり考えよう。
「ね。これはこれでカッコいいけど……去年のエンプレス・ソフィア号のはもっと大きくて色々飾ってあったよね?」
鼻歌混じりで対の門松に荷札をくくり付けながら、無邪気な調子で玄英が言った。
「……」
「ん?どうしたの?恒星」
「や……、あんた絶対トラウマになってると思ってたから。あの時の話はなるべくしないように俺、気をつけてだんだけど」
「あ、そうだったの?」
玄英がにっこりと端麗な笑みを見せた。
「ずっと気遣ってくれてたんだね!でも、僕なら平気。優しいご主人様が癒してくれたから……」
そう言って俺を情熱的にハグしてくる玄英。
「馬鹿っ……実家でこういうことすんなって!」
俺は慌てて玄英の腕を振り解き、小声で囁いたーーもちろん、二人だけの時なら嬉しかったしデレたかった。
この人、TPO無視でしょっちゅう絡みついてくるから(やっぱ可愛いけど)ホント困る。
「ええー……ただのハグなのにぃ……ごしゅ……」
俺は慌てて玄英の口を塞ぎ、顔を近づけた。
「馬鹿!ご主人様って呼ぶな!」
俺は顔を真っ赤にしながら慌ててあたりを見回した。
「誰も気づいてないよ?みんな仕事忙しいもの」
「黙れ駄犬」
油断も隙もない……
「ウチ的には猫の手も借りたい繁忙期だが、言う事聞けないんならそれ以下だ。ここにはもう金輪際連れて来ないからな」
「ええええ、そんなあ……」
ちょっと嬉しそうにしてんじゃねえよドMが……ま、もう引きずってないんならとりあえずよかった。
……あ、もしかして七福神のことを言ってるのか?
「えーと、それともちょっと違うっていうか。歳神様っていうのはお正月専門の神様で、キャラ立ちはしてない感じ……?」
いや、我ながら何言ってんだか。
「シチフクジン、お正月のCMにも出てたよ?」
「いや、むしろ連中は年中無休っていうか、別会派っていうか……七福神は一旦忘れて?」
実家には神棚と御先祖様の仏壇が両方置いてあって、八百万の神様が云々とか言いながら仕事ではクリスマスの電飾からハロウィンの寄せ植えまで請け負うし……一神教の国から来たらかなりカオスな宗教観じゃないかな。玄英は玄英でその辺ライトっていうか柔軟性を待ってるみたいで、お互いあんまり気にしたことはないんだけど。
「俺もその辺はあんまり深く考えた事はないんだけど、門松は……二つで一軒の家っていうイメージ……かな?」
「二つで一軒……?」
「だから歳神様は両方の門松に宿る」
「……?」
そもそもこういう定量化って正解なのか?
キリスト教の神様って、形のない精神エネルギーの塊というか炎のような(?)イメージだと聞いたことがあるけど……実感を持って相手の持ってるイメージを想像すんのって難しいな。
たぶんこういうのをお互い説明するために、宗教学とか哲学とか、形に見えないモノを云々する学門が存在するんだろう。
「おお、よくできてるじゃないですか」
専務の達さんが、俺達の門松を確認しに来た。
「あ、達さん。いいところへ」
俺が玄英と俺自身の疑問をぶつけると、
「まあまあ、坊ちゃん。あんまり最初にいっぺんに説明しても、ね。ダイの奴だって二年目でまだちんぷんかんぷんだし。けどね。朝、神棚拝んだでしょ?だから数作ってるうちにおいおいわかると思いますよ?」
と、スポ根精神論レベルの大変ざっくりしたアドバイスをくれた。
「そういうもんなの?」
達さんは俺には答えず、真剣な目で門松の細かい出来をチェックしている。
繁忙期だけのバイト要員止まりの俺だが、それでも基礎的な作業に関しては祖父ちゃんや兄弟子達にずいぶん叩き込まれた。この基本の門松だって十ン年選手である。さすがにまったくのNGを出されることは無くなったが、厳しいベテラン職人の目でOKが出されるまで毎回緊張する。
達さんは「いいでしょう。これ掛けて積み込み場に運んでといてください」と届け先を記した荷札を二枚、俺に渡した。
俺達の門松が無事にお客様の門松になったーーちょっとホッとした。
「ささ、この調子でどんどんお願いしますよ。仕事のケツは決まってんですから」
喋ってないで仕事しろってことか。
確かにあれこれ考えるより先にしなきゃならない作業は山ほどある。正月に二度寝でもしながらゆっくり考えよう。
「ね。これはこれでカッコいいけど……去年のエンプレス・ソフィア号のはもっと大きくて色々飾ってあったよね?」
鼻歌混じりで対の門松に荷札をくくり付けながら、無邪気な調子で玄英が言った。
「……」
「ん?どうしたの?恒星」
「や……、あんた絶対トラウマになってると思ってたから。あの時の話はなるべくしないように俺、気をつけてだんだけど」
「あ、そうだったの?」
玄英がにっこりと端麗な笑みを見せた。
「ずっと気遣ってくれてたんだね!でも、僕なら平気。優しいご主人様が癒してくれたから……」
そう言って俺を情熱的にハグしてくる玄英。
「馬鹿っ……実家でこういうことすんなって!」
俺は慌てて玄英の腕を振り解き、小声で囁いたーーもちろん、二人だけの時なら嬉しかったしデレたかった。
この人、TPO無視でしょっちゅう絡みついてくるから(やっぱ可愛いけど)ホント困る。
「ええー……ただのハグなのにぃ……ごしゅ……」
俺は慌てて玄英の口を塞ぎ、顔を近づけた。
「馬鹿!ご主人様って呼ぶな!」
俺は顔を真っ赤にしながら慌ててあたりを見回した。
「誰も気づいてないよ?みんな仕事忙しいもの」
「黙れ駄犬」
油断も隙もない……
「ウチ的には猫の手も借りたい繁忙期だが、言う事聞けないんならそれ以下だ。ここにはもう金輪際連れて来ないからな」
「ええええ、そんなあ……」
ちょっと嬉しそうにしてんじゃねえよドMが……ま、もう引きずってないんならとりあえずよかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
キスより甘いスパイス
凪玖海くみ
BL
料理教室を営む28歳の独身男性・天宮遥は、穏やかで平凡な日々を過ごしていた。
ある日、大学生の篠原奏多が新しい生徒として教室にやってくる。
彼は遥の高校時代の同級生の弟で、ある程度面識はあるとはいえ、前触れもなく早々に――。
「先生、俺と結婚してください!」
と大胆な告白をする。
奏多の真っ直ぐで無邪気なアプローチに次第に遥は心を揺さぶられて……?
手紙
ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。
そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
待っていたのは恋する季節
冴月希衣@商業BL販売中
BL
恋の芽吹きのきっかけは失恋?【癒し系なごみキャラ×強気モテメン】
「別れてほしいの」
「あー、はいはい。了解! 別れよう。じゃあな」
日高雪白。大手クレジットカード会社の営業企画部所属。二十二歳。
相手から告白されて付き合い始めたのに別れ話を切り出してくるのは必ず女性側から。彼なりに大事にしているつもりでも必ずその結末を迎える理不尽ルートだが、相手が罪悪感を抱かないよう、わざと冷たく返事をしている。
そんな雪白が傷心を愚痴る相手はたった一人。親友、小日向蒼海。
癒し系なごみキャラに強気モテメンが弱みを見せる時、親友同士の関係に思いがけない変化が……。
表紙は香月ららさん(@lala_kotubu)
◆本文、画像の無断転載禁止◆
Reproducing all or any part of the contents is prohibited without the author's permission.
生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します
桜桃-サクランボ-
恋愛
人身御供(ひとみごくう)は、人間を神への生贄とすること。
天魔神社の跡取り巫女の私、天魔華鈴(てんまかりん)は、今年の人身御供の生贄に選ばれた。
昔から続く儀式を、どうせ、いない神に対して行う。
私で最後、そうなるだろう。
親戚達も信じていない、神のために、私は命をささげる。
人身御供と言う口実で、厄介払いをされる。そのために。
親に捨てられ、親戚に捨てられて。
もう、誰も私を求めてはいない。
そう思っていたのに――……
『ぬし、一つ、我の願いを叶えてはくれぬか?』
『え、九尾の狐の、願い?』
『そうだ。ぬし、我の嫁となれ』
もう、全てを諦めた私目の前に現れたのは、顔を黒く、四角い布で顔を隠した、一人の九尾の狐でした。
※カクヨム・なろうでも公開中!
※表紙、挿絵:あニキさん
薪割りむすめと氷霜の狩人~夫婦で最強の魔法具職人目指します~
寺音
ファンタジー
狐系クール女子×くまさん系おおらか男子。
「旦那が狩って嫁が割る」
これは二人が最高の温かさを作る物語。
分厚い雪と氷に閉ざされた都市国家シャトゥカナル。極寒の地で人々の生活を支えているのが、魔物と呼ばれる異形たちの毛皮や牙、爪などから作られる魔法具である。魔物を狩り、魔法具を作るものたちは「職人」と呼ばれ、都市の外で村を作り生活していた。
シャトゥカナルに住む女性ライサは、体の弱い従妹の身代わりに職人たちが住む村スノダールへ嫁ぐよう命じられる。野蛮な人々の住む村として知られていたスノダール。決死の覚悟で嫁いだ彼女を待っていたのは……思わぬ歓待とのほほん素朴な旦那様だった。
こちらはカクヨムでも公開しております。
表紙イラストは、羽鳥さま(@Hatori_kakuyomu)に描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる