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8月11日(日)
北東北名物はわんこそばと猛ダッシュ鬼乗り換え(嘘)
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そんな感慨に浸っている間もなく、次の「はやぶさ」がホームに滑り込んで来た。二十年ぶりにして滞在時間約二十分の盛岡駅よ、さらば。
「はやぶさ」は基本、首都圏を新青森以北を繋ぐ速達便だ。大宮ー仙台ー盛岡ー新青森ー新函館北斗を繋ぐ。やがて在来線の廃止が相次ぐ北の大地を、インバウンドの勢いにも乗って縦横無尽に駆け巡るのだろうか。俺の知っている東北新幹線ーー今はなき丸顔で緑縞の「あおば」が現役で二階建てのMAXやまびこが最先端だった頃のーーとはもう全然違う乗り物だ。
21世紀になってからは長野新幹線が延伸して北陸新幹線になり、九州新幹線が全線開業した。毎日そんなに大勢の人間が日本縦断レベルで移動しているのかと思うと改めて不思議な気がする。これもグローバル経済ってやつかーーYOUは何しに日本をニシエヒガシエ?
デッキに立っている人数はさっきの便より多く、家族連れらしき人もいる。
ほとんどの大人が(たまに小さい子も)スマホをいじっているのは、新幹線に限らず待ち時間の存在する場所全てで見られる光景だが、大人に限って言えば今日ばかりは、頭の中でリスケとシュミレーションを繰り返しながら台風情報と交通情報とを首っ引きにしているんだろう。
同志としての連帯感(?)を一方的に感じなくもない。
三十分足らずで八戸に着く。路線距離が全線で約三分の二程度の八戸線がディーゼルカーで約一時間四十五分ーー最新技術の力というのは凄い。凄まじい。いや、資本と採算性の力と言うべきか。
ところで八戸線はまだ運休情報が出ていない。三陸鉄道よりも海に近いところを走ってるのに本当に大丈夫なのか?何だかよくわからん。
今度はホームに降りてすぐ目に入った階段を掛け上がり、改札出口を目指す。ここを出ると在来線やバスターミナル、ステーションホテルを分かりやすく一直線に繋ぐ、「うみねこロード」と称される通路状の小綺麗なコンコースがある(と、詳細は後で知った)
首都圏のやたらだだっ広くわかりづらい駅で8分ほどの乗り換え時間は厳しいが、この構造の駅ならいうのはそれなりにゆとりがあるはずだ。
が、俺達はその前に、出口横の窓口で乗り越し精算手続きのミッションをクリアしなければならない。
一つしかない窓口には既に二組ほどの先客が並んでいた。南部弁混じりの年配客と、窓口の女性のおっとりとしたやり取りに早くも不安になる。
案の定、出発時間寸前にやっと順番が来た。仕方なく奴の分は立て替える事にして、在来線の切符を買う時間と手間が惜しい。
「北三陸までの乗り越し分も一緒に精算したいのですが」
「精算は当駅までになります。このままお乗りください」
なんて親切風味に言われたが、同じJRだよね?何気に二度手間じゃね?ーーなどと、細かい疑義や感想をぐだぐだ述べている暇はない。
「行くぞ」と圭人の手に奴の分の精算表を押し付けると改札出口から「八戸線」の案内板を目で探すーーまでもなく、
「八戸線ご利用の方、こちらで~す」
と、声がしたのでそちらに目掛けて走る。
「マッさん、待って!俺、精算……」
「してある!」
「してあります!」
俺と後ろの窓口嬢が叫んだのが同時。
「立て替えるってさっき言ったろうが!人の話聞けよ!」
人の話を聞いてるようで全く聞いてないのは奴のデフォだ、右に大きく曲がり込んだ在来線の改札前に駅員が二人がかりで出張っていて、
「八戸線ご利用の方、こちらで~す」
「もうすぐ北三陸行きが出ま~す」
と大声で誘導している。
大宮や盛岡のように新幹線が一時間に何度も止まる訳ではない上(むしろ一時間に上り下り合わせて一本あるかどうか、というレベルだろう)、八戸線に至っては一本逃したら次の便は二時間以上後だから、いきおい客も駅員も必死だ。
いくら三陸海岸の最果てを走るローカル線であってもそこは、世界でも稀有な分単位の時間死守を至上命題とする日本鉄道だ。
いかにも寝過ごした感満載でなりふり構わず、決死の形相で走り込んでくる男子高生を武士の情けで待っていてくれた地元の路線バスのおっさんのようにはいかないだろうが、切迫感を持った呼び込みぶりには他人事ではない連帯感を感じる。
「八戸線ね?はいっ、これ持って右側の階段降りてすぐね」
年かさの方の駅員から入場券を手渡される。一応提示した精算票には目もくれず、手慣れた感じだ。台風接近で払い戻しや乗り越しの客でいつもより混雑してはいるのだろうが、もしかしたらこの便はいつもこんな感じの「鬼乗り換え」なのかもしれない。
「マッさん!俺、ちょっと駅撮りた……」
「置いてくぞ!」
「てんでんこ」とばかりに奴を置き去りにして改札を駆け抜ける。まったく、配信者って奴ぁ……これも一種の職業病なのかね?
「はやぶさ」は基本、首都圏を新青森以北を繋ぐ速達便だ。大宮ー仙台ー盛岡ー新青森ー新函館北斗を繋ぐ。やがて在来線の廃止が相次ぐ北の大地を、インバウンドの勢いにも乗って縦横無尽に駆け巡るのだろうか。俺の知っている東北新幹線ーー今はなき丸顔で緑縞の「あおば」が現役で二階建てのMAXやまびこが最先端だった頃のーーとはもう全然違う乗り物だ。
21世紀になってからは長野新幹線が延伸して北陸新幹線になり、九州新幹線が全線開業した。毎日そんなに大勢の人間が日本縦断レベルで移動しているのかと思うと改めて不思議な気がする。これもグローバル経済ってやつかーーYOUは何しに日本をニシエヒガシエ?
デッキに立っている人数はさっきの便より多く、家族連れらしき人もいる。
ほとんどの大人が(たまに小さい子も)スマホをいじっているのは、新幹線に限らず待ち時間の存在する場所全てで見られる光景だが、大人に限って言えば今日ばかりは、頭の中でリスケとシュミレーションを繰り返しながら台風情報と交通情報とを首っ引きにしているんだろう。
同志としての連帯感(?)を一方的に感じなくもない。
三十分足らずで八戸に着く。路線距離が全線で約三分の二程度の八戸線がディーゼルカーで約一時間四十五分ーー最新技術の力というのは凄い。凄まじい。いや、資本と採算性の力と言うべきか。
ところで八戸線はまだ運休情報が出ていない。三陸鉄道よりも海に近いところを走ってるのに本当に大丈夫なのか?何だかよくわからん。
今度はホームに降りてすぐ目に入った階段を掛け上がり、改札出口を目指す。ここを出ると在来線やバスターミナル、ステーションホテルを分かりやすく一直線に繋ぐ、「うみねこロード」と称される通路状の小綺麗なコンコースがある(と、詳細は後で知った)
首都圏のやたらだだっ広くわかりづらい駅で8分ほどの乗り換え時間は厳しいが、この構造の駅ならいうのはそれなりにゆとりがあるはずだ。
が、俺達はその前に、出口横の窓口で乗り越し精算手続きのミッションをクリアしなければならない。
一つしかない窓口には既に二組ほどの先客が並んでいた。南部弁混じりの年配客と、窓口の女性のおっとりとしたやり取りに早くも不安になる。
案の定、出発時間寸前にやっと順番が来た。仕方なく奴の分は立て替える事にして、在来線の切符を買う時間と手間が惜しい。
「北三陸までの乗り越し分も一緒に精算したいのですが」
「精算は当駅までになります。このままお乗りください」
なんて親切風味に言われたが、同じJRだよね?何気に二度手間じゃね?ーーなどと、細かい疑義や感想をぐだぐだ述べている暇はない。
「行くぞ」と圭人の手に奴の分の精算表を押し付けると改札出口から「八戸線」の案内板を目で探すーーまでもなく、
「八戸線ご利用の方、こちらで~す」
と、声がしたのでそちらに目掛けて走る。
「マッさん、待って!俺、精算……」
「してある!」
「してあります!」
俺と後ろの窓口嬢が叫んだのが同時。
「立て替えるってさっき言ったろうが!人の話聞けよ!」
人の話を聞いてるようで全く聞いてないのは奴のデフォだ、右に大きく曲がり込んだ在来線の改札前に駅員が二人がかりで出張っていて、
「八戸線ご利用の方、こちらで~す」
「もうすぐ北三陸行きが出ま~す」
と大声で誘導している。
大宮や盛岡のように新幹線が一時間に何度も止まる訳ではない上(むしろ一時間に上り下り合わせて一本あるかどうか、というレベルだろう)、八戸線に至っては一本逃したら次の便は二時間以上後だから、いきおい客も駅員も必死だ。
いくら三陸海岸の最果てを走るローカル線であってもそこは、世界でも稀有な分単位の時間死守を至上命題とする日本鉄道だ。
いかにも寝過ごした感満載でなりふり構わず、決死の形相で走り込んでくる男子高生を武士の情けで待っていてくれた地元の路線バスのおっさんのようにはいかないだろうが、切迫感を持った呼び込みぶりには他人事ではない連帯感を感じる。
「八戸線ね?はいっ、これ持って右側の階段降りてすぐね」
年かさの方の駅員から入場券を手渡される。一応提示した精算票には目もくれず、手慣れた感じだ。台風接近で払い戻しや乗り越しの客でいつもより混雑してはいるのだろうが、もしかしたらこの便はいつもこんな感じの「鬼乗り換え」なのかもしれない。
「マッさん!俺、ちょっと駅撮りた……」
「置いてくぞ!」
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