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領都フルネンディク
34 閑話 side.アルフォンス
しおりを挟む僕は両親の実の子供ではない。
母は子供を流産してから、心が弱くなり寝込みがちになり、遠い内戚で父と似た僕が秘密裏に迎えられ、王子となった。
血のつながらない僕だが王族である両親は親としての愛を注いでくれたと思う。
十歳になったときに父から一般教育に帝王学を追加されるという話とともに真実を明かされた。今は父に似た容姿をした僕を誰も疑わないけれど、家族以外の人間が怖くなった。
何時か何処かで秘密が明かされる可能性はゼロとは言えないし、明かされるべきだとは思う。すべてを真率に語る時はどんなにすっきりするだろう、とも。
しかし、この窮屈で狡猾な狐狸が集まる王城で真実を明かす意味があるのだろうか?
僕は色とりどりの羽を纏うカラスだ。
僕の赤い血は人々と同じなのに、人々を導く者に赤い血は必要ないのだろうか?尊い血とは赤くないのだろうか?
疑問は尽きない。
そんなある日、僕に婚約者を据えることになった。
はっきり言って、もうそんなことに巻き込まれる年齢になったのか、とやるせない気持ちになった。
しかも、伯爵以上の僕より二歳上から五歳下の令嬢と顔合わせをして何人か候補を選ばなくてはならないらしく、社交に参加していなくとも勉強や鍛錬で忙しい僕にはとても煩わしく思えた。
うっとおしく苦々しい思いが顔に出たのだろう、父は少し口角を上げた後、こう言った。
「お前は人をよく観察している。その目で人を見抜くことを実践してみろ。相手は自国の令嬢だ。多少の不手際なら不慣れで許してもらえるだろう。
好きな謎かけでもしてみたらどうだ?
同じ目線でものを考えることができる人材は貴重だ。成人前だし、将来の伴侶などと重く考えるのではなく友人を選ぶつもりで当たればいい。」
そんな風に言われて少し心が軽くなってしまう僕は単純なのかもしれない。
そうして考え付いたのが、妻になりたいか、王妃になりたいか。の質問だった。
普通の令嬢ならば、どちらかを選んで回答するだろう。でもそれでは普通だ。良く考えられていて両方。
でも、僕が気になるのは、どちらでもないという回答とその理由。
僕と同年代で人生に目標を持っている令嬢。望むと望まざる状況で目標と人生に折り合いを着けるきっかけが知りたかったから、どんなことを思うのか、どんな行動をするのか見たかったから、候補を絞った。
両方なりたい、公爵令嬢。
騎士になりたい、伯爵令嬢。
平民になりたい、侯爵令嬢。
特に侯爵令嬢は、さっさと王都を逃げ出して領地に籠り何かと改革を推し進め、僕の放った貘に逆にこちらの情報提供を交渉してくる豪気さがある。
面白い。実に面白い。
かの令嬢が僕から逃げ切ることができるのか、楽しませて貰おう。
それと、貘から聞いたかの令嬢から見た僕の評価は、ちょっと傷ついたから、なにか埋め合わせを貰おうかな。
うん。楽しみだね。
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