上 下
15 / 43
領都フルネンディク

14 契約獣2

しおりを挟む


 はい、こちら悪役令嬢のマリアンネです。
 只今私は、フェルセンダール領の領都フルネンディクにある領主館の庭に出ております。時間は宵の口、夕日の名残がまだ空を染めています。
 目の前には「微笑みの筆頭魔術師」ことノート兄様が防御効果エンチャントが付いたローブを羽織り立っています! そして小さく息を吸うと目を閉じて小さい声で詠唱を始めました。

 ノート兄様を中心に足元から青白い光と共に魔法陣が浮かび上がります。おおっと! これは!? 最初に杖を出すようですね。
 ノート兄様が右手を掌を上にしてゆっくりと水平に差し出すと、掌から少し上の空間からエメラルドグリーンの大きな魔石が付いた杖がゆっくり姿を現します。

 何という中二心をくすぐる光景なのでしょう! これができるのは、ステンベルヘン広しと言えどノート兄様だけなのです。

 この杖は賢者の杖と呼ばれ使用する人間を選ぶのだそうです。そして杖に選ばれた者は王宮筆頭魔術師として将来を約束されるのだそうですよ。流石ノート兄様! 弱冠十一歳にしてスーパーエリートです! 素敵です。 イケメンです!
 賢者の杖は今はノート兄様の身長より長いのですが、もう少しすればゲームのスチルのように杖が肩ぐらいになるまで身長が伸びて、長く伸ばしたハニーブロンドを緩い三つ編みにまとめ前にたらし、蔦の意匠を金糸で刺繍した真っ白なローブを着て優しく微笑むのでしょうね。眼福ですね。楽しみです。

「アンネ、こちらに」
 ノート兄様に呼ばれ、二、三歩離れた場所にノート兄様と向かい合って立ちます。
「じゃ、アンネの波長に合うドラゴンを召喚するよ。いつも循環させている魔力を鳩尾に 集中させて頭の中で自分の言葉でドラゴンを呼ぶんだ。補助は僕がするから信用してね?」
「もちろん、ノート兄様の事は信用しています! 呼びかける言葉に言っていけないモノとかありますか?」
「特にないよ。アンネの自由でいい」
「解りました」
「じゃあ向こうを向いて、魔力循環の感覚で鳩尾に魔力を集中させて。始めるよ」
「はい」
 背中、鳩尾の裏側にノート兄様の温かい手が添えられます。私は目を閉じて血液の流れと同じように魔力が流れていくのを想像します。心臓から始まり動脈を通って手足へ、その後静脈を通って鳩尾に集まるのを感じた時、鳩尾がふわっと温かくなった気がしました。
「召喚呪文の詠唱を始めるよ。アンネの足元を中心に魔法陣が開かれるから、そうしたら呼びかけを始めるんだよ」
「はい」
 ノート兄様の声が小さく聞こえます。なんて言っているのかわかりませんが、緊張しますね! と、足元に魔法陣が現れました! 緑かかった白色に光っています。さあ、呼びかけますよ!
「私は私と一緒に歩み、笑い、空を駆ける友を望みます。私の夢の実現に協力して欲しい。代わりに私の作る料理を好きなだけ食べていい。たまに感想を言ってくれると嬉しいけれど、多くは望みません。笑顔で食べてくれればいいです」
 後ろで吹き出したような音が聞こえたけど、そう言えば口に出してたわ。私。ええぃ無視だ無視。
「私と友達になってくれるドラゴンさん! いたら私に応えて!」

「はーい!」
「連れてきたわよ! ノル!」

 今、二人分声がしなかった?
 目を開けると魔法陣の光は止み、そこにはノート兄様と同い年位のシンプルなノースリーブの白いワンピースを着た白銀の髪とエメラルド・グリーンの瞳の女の子と私と同い年くらいの白いシャツと黒いズボンに黒のローブを羽織った黒髪と黄金の瞳を持つ少年が立っていました。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...