11 / 43
領都フルネンディク
10 ミートボールパスタ
しおりを挟むここではトマトはリコペという名前らしいです。かわいいですねぇ。
……前世の学名そのまんまやん! 正確にはリコペルシコム・エスクリーントムという主な成分と分類なんですが、すっごい偶然。と現実逃避は置いておいて、市場にはトマト、バジル、ルッコラ、セロリ、玉ねぎ等イタリア系食材目白押しでした。これで生ハムとかあったら天国ですよね。
嬉々として買い込んでいたら、偶然、赤身の強い粗挽きの牛ひき肉を見てアレを作りたくなってしまったんです。
もう一度「魔法使いの店」に戻りナツメグとセージと胡椒を買って、館に戻ります。
牛ひき肉とスパイスを混ぜて、シモンに粘りが出るまで練ってもらっている間に、刻んだトマトと玉ねぎ、にんじん、セロリをインベントリにしまっておいたブロードと共にコトコトと煮込んでトマトスープを作ります。
練ったひき肉をスプーン二本で成形しながらトマトスープに入れて、追加で荒く刻んだトマトを入れ一煮立ちさせて、味見をした後、塩・胡椒で味を整えれば、ソースの完成!
「アンネ、パスタは多めに四人前よろしくね」
ノート兄様、お腹がすいていらっしゃるのかしら? 言われるがまま茹でたパスタに合わせて刻んだバジルを散らせば……
「(カリ城風)ミートボールパスタ! お口に合いますように!」(CV石田彰)
「「「おおっ」」」
……あれ? 声が一人分多くないですか?
「ローがいる?!」
「ノルベルト様に誘われて……マリアンネ様……美味しいです!」もぐもぐしながら喋るのははしたないですよ? ロー。イケメンが台無しです。
「マリアンネ様! こんな美味しいものがカフェには出るのですね? 始めて食べました! すごいです!」涙声になっているのは、シモン。
そうだろう、そうだろう、ブロードから手作りですもの。美味しくないわけがありません。
……自分の作った料理を喜んで食べてもらえる。こんな幸せな事はありません。前世でも、現世でも。
このパスタは甥っ子が大好きで、口の周りをソースだらけにして一心に食べる姿は本当にかわいくて、頭を撫でると「ねぇね! おいしいね!」とにっこり笑ってくれる。その笑顔が見たくて、甥っ子が好きなアニメに出る料理を作って食べさせては甥っ子と一緒にいられる幸せを噛み締めていた。あぁ、どうして私はあの幸せな場所から締め出されてしまったのだろう? もう二度と戻れない夢の散り菊。
……?
三人が此方を見て驚いた顔をしています。何? 何か付いてる?
「アンネ? 何で泣いているの?」
ノート兄様に優しく聞かれて初めて自分が泣いている事に気が付きました。
「あれ……何で……?」
突然、横から誰かに抱きしめられて、ノート兄様の眉が顰められるのが見えました。その向こうには固まっているシモン。という事は、一番近くに居たのは……?
「ロー?」
「隠してやるから、泣くな?」
「うん……」
(僕より早くアンネを抱きしめて慰めるとは……ローは要注意ですね)
ノート兄様が小さくつぶやいた言葉は私には聞こえなかった。
◇◆◇◆◇◆
よく聞くけどよくわからないイタリア語
ブロード;イタリア料理における出し汁。材料によって三種類に分けられ、肉のブロード、魚介のブロード、野菜のブロードがある。今回のブロードは野菜のブロードで、フランス料理のコンソメに当たる。
0
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる