【完結】僕の不在証明

花柳 都子

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10歳・夏/僕の観察日記

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 僕はまたしても選択肢変更を選んだ。理由は簡単。先生よりも惹かれるものを見つけたから。
 さて、ここでの議題は『僕が肝試しに参加するか否か』だったが、参加する理由が『先生の存在』だったため、僕と先生との一部始終を吟味する必要がある。現実での選択肢は、先生との出来事が積み重なって起こり得た事象だからである。
 僕が先生について探り始めた、毎週水曜日の早朝登校が習慣化した頃。実は先生はストーカーに悩んでいた。裁縫室は隔週水曜のクラブ活動に備えていたのではなく、ストーカーからの避難場所として唯一、先生が安らげる場所だった。
 先生は元新体操選手で、高校生の時の怪我がなければ今頃プロとしての実績も夢ではなかったかもしれない。しかし、選手としての未来を断たれてからというもの、指導者を目指した彼女を惹きつけたのは、それまで練習に明け暮れていた彼女には縁のなかった2次元の推しの存在だった。
 3次元のストーカーに悩まされる日々の中、彼女はより一層、推しにのめり込んだ。そうすることで現実逃避できたし、むしろ推しの姿になればストーカーをも欺けるのではとさえ考えるようになる。
 ただ、先生の推しは2次元の女の子だった。女の子の格好をすれば、ストーカーはエスカレートする可能性がある。そこで先生は、放課後はいつも2次元の男の姿を借りて駅へと向かい、自宅まで帰っていたのだ。
 着替える場所が近くのコンビニでなければならなかった理由は、先生が疑っていたストーカーの正体が学校内の人物だったからである。
 先生が毎週水曜日の朝に、裁縫室にいた理由もその人物から逃れるためだった。
 水曜日が朝当番の先生は、他の教師たちより早く出勤していたのだが、その日必ず同じ時間に出勤する男性教師がいたのだ。
 彼は先生の朝当番を頼んでもいないのに自ら手伝い、他の教師たちが来るまでの数十分間を先生と2人きりで過ごそうとする。そんな状況がいたたまれなくなって、先生は裁縫室に籠るようになった。
 しかし、今度は姿が見えなくなった分、少しの物音にも反応するようになってしまう。鍵をかけているので入っては来られないのだが、ある日適当な理由をつけてノックをされたことがあり、気が気でなくなった先生はイヤホンで音楽を聴くことにした。
 好きな音楽と好きな裁縫、そして安息の地を手に入れた先生は、せっかくのこの時間にコスプレ用の衣装を作ることにする。林間学校の少し前、推しが出演するイベントがある。どうしてもそれに参加したい、参加するなら推しに近い格好で楽しみたい。先生は推しへの愛情を膨らませることで、ストーカーへの恐怖を紛らわそうとした。
 さて、毎週水曜日の朝、裁縫室を覗いていた僕は、そんな素の先生を目撃するわけだが、実は僕自身も覗かれる対象だった。
 例の先生のストーカーはとある男性教師で、彼は先生が疑う通り退勤後に後を尾けていた。水曜日の朝もどうにか先生の様子を確認したくて、裁縫室前の廊下を無意味に往復したりもした。その際に、校庭の端、目立たない場所から裁縫室を眺めている児童がいることに気がついた。
 最初はたまたま早く来たから、校庭を散歩でもしているのかと思った。しかし、僕はそこから一向に動かず、これは先生を見ているのだと確信するまでそれほど時間はかからなかった。
 やがて、金曜日の放課後にも見かけるようになる。せっかく先生に怪しまれないように学校から1ブロック離れたあたりでわざと別れているというのに、もしも僕にその後も先生の近くにいることを目撃でもされたら言い訳のしようがない。どちらにしても、近くのコンビニで見失ってしまうのだ。
 仕方なく、男性教師は金曜日に限って先生の後を尾ける行為をやめることにした。さらに水曜日の先生の朝当番に付き合うこともやめた。他にしなければならないことを見つけたからだ。
 男性教師は校庭の端の放っておかれている花壇の手入れというふりをしながら、裁縫室を覗く男子児童を監視することにした。男子とはいえ小学生なのでまさか危害を加えるとは思えないが、念の為だ。先生は学生時代、新体操の練習中に怪我をしたことがある。日常生活に支障はないが、完治はしないというから心配だ。
 しかし、男性教師の不安は現実化することなく、その男子児童はただじっと見ているだけでぴくりとも動こうとしなかった。始業後も特段、問題のある児童ではない。先生と極端に距離が近いということもない。気のせいかと思いつつも、一度始めたことなので確証を得るまで粘ることにした。
 さて、時期は夏。林間学校が迫っている。出し物は毎年恒例の寸劇だ。小学校の教員というのはとにかく忙しい。児童からのリクエストがなければ、劇の内容も2年ごとに2つを使い回している。児童は2年続けて参加することになるのに、毎年同じではばれてしまうからだ。
 この年は先生が4年生の担任ということもあって、『空を飛んで欲しい』などとというリクエスト
が出た。怪我をしたというのに、先生は律儀に練習までして児童たちの望みを叶えようとする。本当はもっと高度な技を見せたいのになんてはにかんでいたが、さすがにそれは自重したらしかった。
 普段はあまり笑うこともなく、淡々としている印象の彼女だが、好きなものに対しての打ち込みようには目を瞠るものがある。だからこそ心配なのだ。無理をしないか、頑張りすぎないか。彼女は子供たちとの時間もきっと好きだから、全力を尽くそうとするだろう。
 男性教師は寸劇の練習の後、体育館に残り、こっそり先生を見守ることにした。幸いこの時は、他の女性教師や寸劇に参加する教頭などもいたから、自分がいても何ら不自然ではない。
 どことなく先生の表情も晴れやかで、男性教師は安堵しながら、林間学校当日を迎えた。

 林間学校は特に大きな問題もなく、順調にスケジュールをこなしている。男性教師は3年生の担任であったが、学年ごとやクラスごとに班に分かれてはいるものの、基本的な日程は同じである。4年1組担任の先生は、自分のクラスの子どもたちと楽しそうに過ごしている。
 そんな中、例の児童は誰かと群れることもなく、かと言って先生と距離を縮めようとするでもなく、マイペースに後方を歩いている。時折、しゃがんで何かを拾う素振りを見せるのだが、気に入らないとみると、乱暴に投げ捨てた。
 跳ね方から小さめの石だと思うのだが、あの強さで投げて人に当たったらただでは済まないだろう。注意しようと口を開きかけたが、「先生~」と声をかけられれば無視はできない。他の児童たちの相手をしているうちに、その子の姿は視界から消えてしまっていた。
 その子は真面目で優等生といった印象はないのだが、不思議と無害な子だと思い込んでいた。言い方が悪いかもしれないが、やはりクラスの中にひとりないしふたりは問題児がいる。彼らと比較すると、大人しめで意見を主張しないからか、集団の中に埋もれてしまうのだ。
 教師としてはそういう子たちにこそ目を配るべきだと思うのだが、目に見えて問題を起こされると、そちらを注意しないわけにもいかない。
 だから、今まで気がつかなかったのだ。本当はこれまでも目の届かないところでちょっとした問題を起こしていたに違いない。運良くすり抜けてきたか、計画的に慎重に行動してきたかのどちらかだ。先ほどの石投げ案件を見るに、おそらく前者だろう。変に目立たない分、見過ごされてきただけだ。
 改めてその子の様子を気に留めておこうと考えていた矢先、愛しの女先生が思わぬ行動に出た。
 この夜の出し物で鹿とびを披露することは知っていたが、まさかレオタードを着るとは想像もしていなかった。興奮しないといえば嘘になるが、それより何より児童たちへの影響と教頭への刺激が強すぎるのではないかということのほうが断然気になる。
 先生曰く、私は叶えられなかった夢だけど、自分の好きなことを好きになって欲しい、新体操に限らず、いくつになっても楽しいことを楽しいと思える人生にして欲しい、だからきちんと正装をして望みたいんだ、とのこと。その時の輝く瞳が美しく、男性教師は頷くしかなかった。
 もともと熱意のある先生ではあるけれど、むしろこれまでは新体操に対して消極的だったと記憶している。何がそんなに先生を変えさせたのか。男性教師は、せめてマットは敷いてくれと懇願した。あの悪夢はもう見たくない。学生時代の先生は、道具を使った演技中に着地に失敗して、背中を強打している。ホールの床は硬く、着地の振動で古傷を悪化させてしまうかもしれない。
 先生自身は高揚のあまり気にしているようではなかったけれど、それなら尚更自分が気にしてやらねば・・・そんな思いで、彼はマットを運ぶ。
 終わってみれば割れんばかりの拍手で、これならば女の子はきっと憧れるだろう、いや男の子でももしかしたら目指してみようという子が現れるかもしれない。そんな前向きな気持ちになったのも束の間、テンションの上がった子どもたちからもう一回コールが飛び交う。慌てて止めようとする男性教師を遮って、先生は求められるがまま何度も跳んだ。
 先生が生き急いでいるようにしか見えなくなって、男性教師はただひとり失望している僕という存在には目もくれなくなった。
 先生しか目に入らなくなった彼の誤算は、小学生にして能面のような僕の顔を見逃してしまったことだ。結局、人は完璧にはなれない。
 先生を守るためのストーカー行為も、肝心な時に意味を為さないのだから。
 その日の夜、図らずも僕が目撃した口論は男性教師と女先生によるすれ違いの主張だった。
 僕が耳にした、やめるだのやめないだのという会話は、先生による「私には大事なものがあるからあなたの気持ちには答えられない、だからこのままストーカー行為をやめて欲しい」というお願いと、男性教師による「僕は君を守りたい、新体操の選手時代からファンで今でもずっと好きだから、これまでの行為も全てストーカーではなくボディガードだ、だからやめない」という決意の応酬だった。
 お互いに正しいとする主張が正反対で、どこまでいっても分かり合えないところまで、とうに溝は深まっていた。
 次の日、夜に至るまで2人の間に会話はなく、男性教師がふと先生の行方を探した時には既に肝試しに出発した後だった。肝試しは2人1組で行うが、本来は宿泊施設に残るはずだった先生が、人数がひとり足りないので、4年1組の児童の誰かとペアになって欲しいと頼まれ、急遽参加することになったのだ。
 男性教師は慌てた。そして、なぜだかわからないけれど、昨日の森林浴の際に石を投げ捨てた児童の姿がふいに浮かんだ。
 先生が危ない、野生的な直感で彼は走った。肝試しから戻ったであろう児童たちをかき分け、彼は吊り橋へと向かう。先生の姿はない。けれど、吊り橋の向こうの袂に例の児童が見える。
 遅かったのではないかと考える前に、男性教師は児童の手を引いた。この子はなんだか危険な匂いがする。先生は後で自分が迎えに行く、だから今はこの子を遠ざけなければ。そんな思いで頭がいっぱいになって、突然後ろから聞こえた台詞に思考が追いつかなかった。
「先生なら飛べるよ!」
 振り向いた時には遅かった。さっきなら、この子の手を引く前なら、間に合っていたのだ。
 振り向いた先の吊り橋は赤く燃え上がっていた。
 先生は炎の先にいる。
 今ならまだ飛べる距離かもしれないと思わせたのが、運の尽きだった。
 先生は飛んだ。
 それより先に吊り橋が落ちた。
 先生が天使になる瞬間を、ふたりは見た。
 そして、炎に追われるように走るしかなかった。

 女先生は天を見つめながら落下する。
 あの時と同じだ、とふと思う。
 走馬灯を見たのだ。
 学生時代、怪我をしたあの瞬間。
 あの時も空を見つめていた。
 背中に衝撃を感じて、息ができなくなった。
 私の叶えられなかったひとつめの夢。
 そして、また今、叶えられない夢がもうひとつ。

 ストーカーの存在を感じなくなった金曜日。
 勇気を振り絞って、先生は幼女系のコスプレで小規模のイベントに参加した。
 評判はかなり良く、そこで行われていたコスプレコンテストに飛び入り参加して優勝した。
 賞金こそ出なかったが、自分のスタイルと衣装の出来栄え、そしてキャラクターになりきるその演技力を褒め称えられ、学生時代のあの高揚感を思い出した。
 そうだ、好きなことってこんなに楽しいんだ。
 コスプレのことは人には言えないけれど、この純粋な思いを子どもたちに伝えたい。もともと、教師を目指したきっかけを思い出し、熱意を露わにした矢先の出来事だった。

 先生は薄れゆく意識の中で、強く願った。
「せめてこのまま、天使になれますように──」

 ここで先生の走馬灯は暗転した。

 御霊司は宣言した。
『“僕の不在証明"を確認しました』
 そう、僕は選択肢を変えたのだ。ここにはもう10歳の僕はいない。
 もしも、僕が肝試しに行かなかったなら。
 先生に落とし物だと嘘をつくこともなかったし、先生を心配した男性教師に手を引かれることもなく、だからふたりを引き裂こうとろうそくをわざと落とすなんてこともないわけで。
 そもそも僕が肝試しに行かなかったなら、先生も参加することはなかったのだ。あの吊り橋すら通らずに済んでいただろう。
 そして、宿泊施設に残った先生と男性教師は、丸一日ぶりに会話を交わす。相手の意見を聞き入れなかった昨日とは打って変わって、ふたりはお互い冷静に向き合うことにする。
 真摯な想いはいつの世も、真っ直ぐ伝えなければ届かない。
 そして、誤解が解けた瞬間、恋の炎が燃え上がる。同時に、外の薪木から燻った煙が上がった。
まるで全ての計画が台無しになった僕の心情を表すかのように、その黒煙が赤く染まることはない。
 前日の雨で湿気を含んだ薪木は、キャンプ用の火打石を使ってもうまく燃えなかった。
 その前に他の先生たちに気づかれ、その場の全員が事なきを得た。
 そして数年後。件の女先生と男性教師は、永遠の誓いを立てるのだが、それはそう、まだ先の話。
 施設内のアナウンスを告げるチャイムが、教会の鐘の音のように2人を祝福していた──。


 
 










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