それぞれの幸せと幸福を

幸姫

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【偽物の君に幸せを】

君の本性

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ルアーノは甘えたい時は甘えるくせに、辛い時は誰にも辛いことを言わないでひたすらに一人で抱え込む。

そんなルアーノにジルは腹が立っていた。

グランを騙していたことをみんなに知られないように学園を卒業するまでルアーノとグランは付き合っている設定にした。
もちろん前みたいに頻繁に話すことはなかったがルアーノが色々と頑張ったおかげでみんなには悟られずに卒業することができた。
卒業後はお前らが想像するどうりにイチヤとグランはラブラブな日々を過ごしている。

ルアーノは元々両親が他界しているのでひっそりと一人で暮らしている。

静かで鳥の鳴き声しか聞こえない道を歩いていくと小さな家がポツンと建っている。
ドアは空いていて、いかにも人は来ないので開けたままでいいと言わんばかりのアイツの注意深さのなさにジルは更にメラメラと燃えていた。寝室を見ると、薄い布団にくるまって寝ているルアーノの姿がいた。心配そうに窓にいる鳥たちがルアーノを見ていた。

「また寝れなかったのか」

目の下には隈ができている。
グランを騙しながら過ごしてきた学園生活に罪悪感を抱えていたルアーノは卒業後、感情が爆発して誰にも知られずに街を出て行った。
やっと、やっとの事でジルは行き先を知ることができた。
すぐどっか行きやがる。
どこかのアイツと同じじゃねーか。

偽物でも、
本物でも優しいのは変わらないんだ。

目の下の隈を撫でると、突然右から鈍器のようなものが飛んできた。幸い、避けることができたが心臓がバクバクで口から出てきそうになる。ジルは腰が抜けて、その場でしゃがんだ。

「なんだお前か、なんでここ知ってんだよ」

「起きてたのかよ。びっくりした」

「当たり前だ。ドアが開いた時点で起きるだろ。」

その可愛い顔から出てくる荒い口調は相変わらずだった。変わったところは少し痩せていたことぐらいだ。ちゃんと食べているのか不安になる。

「痩せたな」

「前は王子様のおかげでお金は負担なかったからな。今は全部負担だからカツカツ。」

手をあげ、身体全体を伸ばしているルアーノはそう言った。一杯の水を飲み、朝ごはんは食べずに、何か取り出して作業し始めた。

「なにしてんだ?お前のパンじゃないのか?」

「窓見ただろ。鳥にあげんだよ」

「お前って奴は....」

ジルは鳥にご飯をあげているルアーノの横顔を見ながらため息をついた。

「おはよ、遅くなってごめんな。いっぱい乗せておくからさ。」

微笑みながらルアーノは鳥達が食べるのを見ていた。その優しさを見たジルはルアーノの近くに寄り、手を膝裏に置き、身体を抱き上げた。

「さっさと俺を選んで俺の妻になれ」

「は、はぁ?つ、妻?!バカじゃねーの」

「お前、俺に見つけて欲しくてあの手紙書いたんじゃないのか?」

「.....」

ルアーノが出ていく前、ジルの家のポストには一枚の手紙が入っていた。詳しい場所は分からなかったが町の名前と方位が書かれていた。
ジルの父は土地をもっているということもあり地理は得意で一瞬で分かったが、まだ慣れていないジルは正確な場所を見つけることが出来なかった。そこでジルは父に勉強して立派になって家業を継ぐから教えてくれと頼み、半年掛かったがルアーノを見つけ出すことが出来た。

「まだ諦めがついてなかったんだ。俺は酷い奴だから新しい恋なんてする資格はないんだ。」

「でも...お前が優しい言葉をくれたり、嬉しい言葉をくれたり....お前が....」

ルアーノは下を向いて、涙を流した。

「恋する資格とか俺が優しかったからとか言い訳はもう聞き飽きた」

「ルアーノ・スミナ、答えろ。俺が好きか?」

「.......すき」

「最初からそう言えばいいんだ」

その後は早いぐらいにジルはルアーノを家に招き入れて、妻になることを許して欲しいと両親に頼み込んだ。ルアーノは恋になると臆病になる為、家にいる時は静かで泣きそうになっていたがジルの兄のおかげでルアーノは息詰まることなくジルの家族と仲を深めた。
ルアーノの裏がない笑顔にみんな癒され、逆にジルが家族に嫉妬することもあったが、そんなジルをルアーノは楽しそうに見ていた。


_____



ルアーノは下を向き、ジルの後ろにいる。
手汗がジルの服に染み付くんじゃないかと思うほど握る力が強かった。

「俺の妻だ」

「ん?!おめでとう」

ジルはルアーノを連れて、ある所に行った。
大きい門をくぐり、扉を叩くとより一層好きな人に愛されて美しくなっていたイチヤが出てきた。ルアーノは目を合わせることも喋ることも出来なかった。だけど、言いたい事が一つあった。

「...嘘をついて、ごめんなさい。大切な学園生活を壊してごめんなさい。」

イチヤは微笑んで、顔を上げて泣いていたルアーノに言う。

「そんな前の話しなくていい。俺もルアーノも幸せならそれでいいんだよ。俺は恨む事なんてしない。喧嘩したらいつでもおいで。」

隣にいたグランもイチヤの腰を抱き寄せ、頷いていた。

「だそうだ。ということでルアーノを傷付けたらイチヤの友達を傷付けたという事になる。
そしたらお前を殺してやる」

「はぁ?!傷付かせねぇけどなんでそうなるんだよ」

ルアーノは幸せそうに笑った。




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