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【消えた君に幸福を】
もう不安がらないで
しおりを挟む国を引っ張って行けと幼い頃から言われた。
オレはそんな人を引っ張る事なんて無理だと最初から分かっていた。
兄の立場があっても不向きがあるようで、
オレは弟のグランとは違って、上の立場で国民にあーだこーだ言うより、旅人のようにフラフラして沢山の知恵を蓄えた方が向いているのではと思い始めた。
「オレは国民を引っ張る事は出来ない。お父さんとお母さんには申し訳ないけどオレは旅人みたいにフラフラしてる方が向いてる気がするよ。」
そう言ってギルは両親の言葉を聞かずに旅に出た。そして、旅で見つけたある人。
ギルは夢中になった。
小さな小屋で一人、華麗に踊っている人を。
名も顔もわからない。
そんな貴方に恋をした。
_____
【本編② lllll の後の話】
イチヤくんの話に納得したのか、ライジルはギルの手を掴み、自室にギルを放り込み、鍵をした。少しの沈黙があった後、ライジルが話し始めた。
「私はもういいんです。イチヤ様の幸せを見てるだけでも。私はどうでもいいんです。
誰からも見放されて、必要とされずに。」
「それは違うよ。必要とされてなんてそんな事ない。少なくともイチヤくんはしない。オレは君に初めて会った時からもう旅はしないって決めてたんだ。」
ギルはライジルの近くにより、手を掴み、繋いだ。涙が止まらないライジルにギルはそっと微笑んだ。
「君という愛してる人がいるって事で満足していたんだ。会わなくても話せなくてもいいと思ってたんだけど、やっぱり君と会って、話したくなった。ずっと旅だって言ってたけど君を探していた。」
こんなに嬉しい言葉を掛けてくれるジルにライジルはもっと涙が溢れた。
ただ心配な事がライジルにはあった。
「人はいつか飽きるものです。もしかしたら一緒にいる事で貴方が私に飽きて、捨てるかもしれない。それを考えたら私は一年に数回しか会わない方がいい....」
ギルは考えた後ニヤニヤとして、突然、繋いでいた手を離した。
あっ、とか弱いライジルの声がした。
「それでもいいけど、数年ぶりに好きな人が目の前にいるのにまたいなくなって、また数年後に会うの?それでも本当にいいの?」
もう悲しい夜を過ごしたくない。
貴方のことばかり気にしたくない。
そばにいてほしい。
そばにいたい。
ライジルはギルの服の裾を掴んだ。
「い、いやだ」
ギルはライジルを抱きしめた後、頭を撫でた。
「もうオレ達は十分に離れすぎたよ。次は一生お互いそばにいるんだ。飽きる訳ないね。」
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