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目指せ体育会系ヒーロー!②

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「どうしたね鈴木君?」



ペコリーヌが見えない校長はキョトンとしているが、その頭をスティッキでツンツンつつかれている事にも気付いていない。



「∪。△。)⊃―☆
ツン!ツン!
見事な光り具合だのう!」


「ペコリーヌ……お止めなさい!」


小声でたしなめるが、ますますペコリーヌの悪戯はエスカレートする。




「。△。)むむ?
……天辺に一本だけ長いのが生えているぞ!」



スティッキでその貴重な一本を突っついてぬらぬらと笑っているが、僕は恐怖に震えた。




「だ――!止めなさい!大事な大事なラストワンを!」



「……何が……ラストワンなのかね?」




校長はいつの間にか真顔になってじっとこちらを見ている。



「ヒイイイ!なっなんでもありませ」



誤魔化そうとした時、胸ポケットにいつの間にかジャムが入っていて、目を緑に光らせると、僕の顔の前までジャンプして口を無理矢理こじ開けニュルリと入ってきた。







「げええうおおおっ」



無理矢理ジャムが喉から入り込み、吐きそうになるがペコリーヌの手が延びてきて鼻を塞いだ。



「。△。)⊃フホホホっ
吐き出してはならぬ!そのまま飲み込むのだ」



「ふぐっ……ふぐ――!」


「だ、大丈夫かい?鈴木君?」


校長が異様な僕の様子にたじろいでいる。


体育館に集まっている生徒達もざわつき始め、不審な視線が集まっている。


(ヤバい……本当に吐きそうだ……
ペコリーヌにジャムめ……いつも要らない事ばかりしやがって――!
全校生徒の目の前でしかもステージでリバースとか、一体何のパフォーマンスだよ!
ここで吐いたら呪ってやる――!)



ゲエゲエ呻きながら、僕はうずくまり耐えていた。



「お――い、ジミー大丈夫か」


御昼寝から起きたらしいウッチー先生が頭を掻きながらステージの下までやって来た。






「ぐえほっ……うえっ」



「吐いたら楽になるぞ」


ウッチーの手にはバケツが握られていた。




(冗談じゃない……
吐いてたまるか――!)



「∪。△。)⊃そうだ勇人!
頑張るのだ――!
あと少しだぞ!踏ん張れ!
5・6・7・8(ファイブ、シックス、セブン、エイト)――!シャーッ」



「ギャアアアアア」



身体に電流が走るような衝撃が駆け抜けて、僕はバタリと倒れた。




「す……鈴木君!しっかり!」
「ジミー!生きてるか、ジミー!」
「勇人君っ!……あれ?ぺ子ちゃん、何してるの?」


茜も飛んできて身体を揺すり、ペコリーヌに気づくが、他の人間には見えない。



「河本、誰と話してるんだ?」


「え?だって……」



「。△。)。△)ぬらぬらぬら!
茜よまた後で!チャオ☆」☆∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥☆




「ペ子ちゃん」



ペコリーヌは忽然と消えた。







「鈴木君、目を開けれるかい?鈴木君」


「いや……ジミーは目を開けていてもこんな感じですよ」



茜は我に返り、呼び掛ける。



「勇人君……勇人君?
しんじゃダメ――!
勇人君が居なくなったら……私困る……!
体育祭ももうすぐなのよ――!
副委員長の勇人君が居ないなんて……」



ウッチーはずっこける。



「おい河本……
ラブ的な意味の困ると違うんかい……」



茜の大きな目には涙が浮かんでいた。



「それに……
亜太に誰がお乳をあげるの――!?
勇人君のお乳が、まだ亜太には必要なのよ――! お願い……勇人君!死なないで――!戻ってきて――!」


ワンワン泣いて頭を掴みグラグラ揺らす。




「……救急車を呼びましょうか」
「そうですね」



ウッチーがスマホを出した時、体育館の中が緑一色の閃光に包まれた。



v




「――うあっ!」
「な、なんだ?」
「雷?」
「キャー」
「ワー!」



教師や生徒が騒然とする。


晴天だった空は途端に真っ黒い雲に覆われて、叩きつける様な豪雨が体育館の天井に打ち付けた。



「……あ……雨になっちゃった……亜太のオムツ、お母さんちゃんと取り込んでるかなあ……」



茜がぼんやりと呟いた時、勇人の首が360度回転したかと思うと目をカッと開いた。

いや、カッと見開く程の大きな目ではないのだが……




「ひえ――――――っ」



首が廻るのを目撃した校長は驚愕して卒倒した。


「校長!校長!?」



ウッチーが校長の身体を起こすが完全に気絶している。



茜も勇人のイリュージョンを目撃したが、手を叩いて喜んでいる。



「勇人君っ!スゴい!凄いね!ジャムちゃんの手品の次は首回し?
カッコイイ――!」








横たわって居た勇人は、スクッと立ち上がると壇上に飛び乗り、そこから宙返りを決めた。



スタッと見事に着地を決めた勇人の目は緑に光っていた。




「す、スゲー!」
「カッコイ――!」
「ジミー!」
「ジミー万歳!」



割れんばかりの拍手と歓声の中、勇人は
"静まれ"とでも言うように、右手を伸ばして生徒や教師達をシンとさせて、マイクを持ち高らかに言った。



「俺は鈴木勇人!
1000年にひとりの小さな可愛いお目目の少年だぜ――!
一重が何だ!
薄目が何だ!
目付きが悪いから何だ――!
俺は俺だ―――!

悔しかったらこの顔に生まれ変わって見ろ――!
ハハハ――!」




「勇人……君?」



茜が呆気に取られている。







校長を抱えたウッチーは、涙を流して感動していた。


「ジミーっ……
素晴らしい開き直り……っ
そこまで言い切るまでにお前の中には数えきれない位の涙と汗があったんだろうなあ……
俺は嬉しい!
嬉しいぞジミー!」



パチパチと拍手が起こる中、勇人は右手を天井に突き出して叫んだ。




「2年D組、出席番号9番!鈴木勇人!
俺は!今ここでリニューアル鈴木勇人になった!
俺には怖いものは無い!
……取り合えず、今度の体育祭……
応援団長に立候補するんで、そこん所”夜露死苦"!っしゃあ――!」




「ジミー!いいぞ――!」
「ジミー!がんばれー」
「ジミー!」




やんややんやと歓声を浴びながら勇人はステージから手を振った。


やはり目は緑にギラギラしている。



「勇人君……どうしちゃったの?」



茜には、その目の中で一瞬ジャムがニヤリとした様に見えた。


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