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貴也参上!
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「はっ……ぎわらきゅん!
叩くのはまずいよ……!あああ!」
茂野は相当慌てたらしく「君」呼びが「きゅん」になっている。
誰かがそれを「おいおい、かっちょーてば」と突っ込みを入れる前に、ピシンという音と共に壺に皹(ひび)が入り、あっという間に割れた。
「ウワアアアアアア」
茂野が必死の形相で割れた壺を拾い集めようとするが、見事に割れてしまった壺を復元するのは不可能ではないかと思われた。
それほど、綺麗に割れてしまったのだ。
「ひゃあ!えらいやっちゃ!!」
鉄平が頬を押さえてムンクの叫びのポーズをする。
「瞬間接着剤でなんとかならないかしら……」
「なんとかやってみましょうか~私、こういう作業割と得意なのよ……
ドウルドウルドウルドウル……」
「た……頼むよなんとか……
これがばれたら……私は今度こそ僻地へ飛ばされる!!
いや、ころされる――!!」
皆が大騒ぎする中、貴也は物凄い速さで色んな事を頭の中で考えていた。
――ゆうみ、何処にいるんだ!!
「あわわ……社長に見つかる前に……なんとかしないと――ひいい」
「まあまあ、落ち着いて課長。よく言うじゃないですかっ!
ほら、なんでしたっけ――そう!
『形あるものいつか壊れる』……て」
鉄平が手のひらをポン、と叩き言うが、茂野はプルプルと首を振る。
「だから!壊れたらまずいんだって!」
「あっ――そうか……でもほら、『覆水盆に還らず』
とも言いますよね☆」
「だっかっら――!!
それもアカンのですよ――!!それはつまり、やってしまった事は取り返しがつかないっていう意味でしょおおおおおおおお」
茂野が絶叫し、紗由理と昌美が慎重に壺の復元に取り組んでいる中、貴也はいてもたっても居られず、その場から走り出した。
「萩原さん?」
鉄平に声を掛けられるが、貴也は振り向かずに疾走する。
「悪い、後で俺も手伝うから!」
「貴也さ――ん!
必ず戻って下さいよ――!」
鉄平は叫び、深呼吸して肩を回すと、壺の修理に参加しようと一番大きな欠片に触れた。
すると粉々に砕けてしまい、皆が「あ――っ」
と絶叫した。
「うわっ……すいません……ごめんなさい!」
「何をしてくれちゃってるのかしら?
てっ――ぺ――いく――ん?」
紗由理がしとやかな笑みを浮かべながら、指をバキバキ鳴らして彼ににじりよる。
「ひいい……ど、どうかお許しを――っ」
鉄平の悲痛な叫びが響いたその瞬間、粉々になった破片から黒い陽炎のような靄が立ち上がり天井に昇っていき、走る貴也の後を追い掛けるように移動するのを誰も気付かなかった。
叩くのはまずいよ……!あああ!」
茂野は相当慌てたらしく「君」呼びが「きゅん」になっている。
誰かがそれを「おいおい、かっちょーてば」と突っ込みを入れる前に、ピシンという音と共に壺に皹(ひび)が入り、あっという間に割れた。
「ウワアアアアアア」
茂野が必死の形相で割れた壺を拾い集めようとするが、見事に割れてしまった壺を復元するのは不可能ではないかと思われた。
それほど、綺麗に割れてしまったのだ。
「ひゃあ!えらいやっちゃ!!」
鉄平が頬を押さえてムンクの叫びのポーズをする。
「瞬間接着剤でなんとかならないかしら……」
「なんとかやってみましょうか~私、こういう作業割と得意なのよ……
ドウルドウルドウルドウル……」
「た……頼むよなんとか……
これがばれたら……私は今度こそ僻地へ飛ばされる!!
いや、ころされる――!!」
皆が大騒ぎする中、貴也は物凄い速さで色んな事を頭の中で考えていた。
――ゆうみ、何処にいるんだ!!
「あわわ……社長に見つかる前に……なんとかしないと――ひいい」
「まあまあ、落ち着いて課長。よく言うじゃないですかっ!
ほら、なんでしたっけ――そう!
『形あるものいつか壊れる』……て」
鉄平が手のひらをポン、と叩き言うが、茂野はプルプルと首を振る。
「だから!壊れたらまずいんだって!」
「あっ――そうか……でもほら、『覆水盆に還らず』
とも言いますよね☆」
「だっかっら――!!
それもアカンのですよ――!!それはつまり、やってしまった事は取り返しがつかないっていう意味でしょおおおおおおおお」
茂野が絶叫し、紗由理と昌美が慎重に壺の復元に取り組んでいる中、貴也はいてもたっても居られず、その場から走り出した。
「萩原さん?」
鉄平に声を掛けられるが、貴也は振り向かずに疾走する。
「悪い、後で俺も手伝うから!」
「貴也さ――ん!
必ず戻って下さいよ――!」
鉄平は叫び、深呼吸して肩を回すと、壺の修理に参加しようと一番大きな欠片に触れた。
すると粉々に砕けてしまい、皆が「あ――っ」
と絶叫した。
「うわっ……すいません……ごめんなさい!」
「何をしてくれちゃってるのかしら?
てっ――ぺ――いく――ん?」
紗由理がしとやかな笑みを浮かべながら、指をバキバキ鳴らして彼ににじりよる。
「ひいい……ど、どうかお許しを――っ」
鉄平の悲痛な叫びが響いたその瞬間、粉々になった破片から黒い陽炎のような靄が立ち上がり天井に昇っていき、走る貴也の後を追い掛けるように移動するのを誰も気付かなかった。
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