41 / 111
お前は俺の物だろ!by貴也
4
しおりを挟む
「ゆうみ~お願いがあるの~ドウルドウル」
シュレッダーの前に立つゆうみの脇腹を昌美が軽くつつく。
「はい?」
「お客様から急ぎの伝言があるから、玉子君を探してこのメモを渡して欲しいの☆」
「嫌です」
即答するゆうみに、昌美はお願いのポーズをしながら頼む。
「まあまあまあ……
ほら、こういう伝達がうまくいかないと後々言われちゃうじゃない?
叱られるのは茂野課長だし~?
ただでさえ商品開発課はここ数年ヒット作を産み出せてないし風当たりがきついでしょ?
だから~こういう普段の些細なことからコツコツやって、頑張ってます☆てのをアピールしておかないと!!ね?
うちの課の為に!!伝書鳩になって!!ゆうみ様~」
ゆうみは、口調とは裏腹に面白そうににやついている昌美の顔を見て、それから茂野の方を見る。
茂野は、「頼むよ、ゆうみ君」
と拝んでいた。
「……仕方ないなあ……」
ゆうみは溜め息を吐いてメモを手に、開発課をあとにして、玉子を探しに行く。
マスダジムの構内はだだっ広い。
方向音痴のゆうみは、入社当初はよく迷子になった。
特に商品開発課は、会社の玄関から一番遠い位置にある。
開発課という名前は聞こえが良いが、実際にヒット商品を最近立て続けに出しているのは庶務課の連中だ。
この会社の社長の考えで、配属する部署は関係なく、半年に一度全ての社員に商品のアイデアを出させる。
15年ほど前――茂野課長がバリバリ現役だったころは――いや、今でも現役なのだが――
商品開発課は「バトルボールペン」
という大ヒット商品を出した。
その頃爆発的な人気だった「闘うぶんぐ君」というアニメ化された漫画とコラボレーションした商品で、その頃は新しいバトルボールペンが出る途端に売り切れるという騒ぎだった。
バトルボールペン欲しさに子供の万引きが急増したり、学校でボールペンを持っていないと友達の輪に入れずバカにされる、苛めのきっかけになる、と保護者からの苦情が殺到するようになり、バトルボールペンは発売してから半年で販売中止になった。
その開発を担当したのが茂野課長。
当時、開発課は社内では花形の部署で、課の部屋も社長室の隣に存在していた。
だが、バトルボールペンで世間からのイメージを悪くしてしまった、ということで開発課は奥に追いやられてしまった――
らしい。
ゆうみが入社して開発課に配属された時、茂野は人の良さがにじみ出る眉をゆがめ、
「……申し訳ないねえ……
ここの部署では出世や玉の輿は狙えないと思うけど……」
と嘆くように言った。
だがゆうみは、働いた分のお給料が貰えて、それで好きなコミックやアニメグッズが買えれば満足で人生オッケーなのだ。
この課が実質見捨てられた部署であろうと、課長が窓際だろうと関係ないし全く問題ない。
シュレッダーの前に立つゆうみの脇腹を昌美が軽くつつく。
「はい?」
「お客様から急ぎの伝言があるから、玉子君を探してこのメモを渡して欲しいの☆」
「嫌です」
即答するゆうみに、昌美はお願いのポーズをしながら頼む。
「まあまあまあ……
ほら、こういう伝達がうまくいかないと後々言われちゃうじゃない?
叱られるのは茂野課長だし~?
ただでさえ商品開発課はここ数年ヒット作を産み出せてないし風当たりがきついでしょ?
だから~こういう普段の些細なことからコツコツやって、頑張ってます☆てのをアピールしておかないと!!ね?
うちの課の為に!!伝書鳩になって!!ゆうみ様~」
ゆうみは、口調とは裏腹に面白そうににやついている昌美の顔を見て、それから茂野の方を見る。
茂野は、「頼むよ、ゆうみ君」
と拝んでいた。
「……仕方ないなあ……」
ゆうみは溜め息を吐いてメモを手に、開発課をあとにして、玉子を探しに行く。
マスダジムの構内はだだっ広い。
方向音痴のゆうみは、入社当初はよく迷子になった。
特に商品開発課は、会社の玄関から一番遠い位置にある。
開発課という名前は聞こえが良いが、実際にヒット商品を最近立て続けに出しているのは庶務課の連中だ。
この会社の社長の考えで、配属する部署は関係なく、半年に一度全ての社員に商品のアイデアを出させる。
15年ほど前――茂野課長がバリバリ現役だったころは――いや、今でも現役なのだが――
商品開発課は「バトルボールペン」
という大ヒット商品を出した。
その頃爆発的な人気だった「闘うぶんぐ君」というアニメ化された漫画とコラボレーションした商品で、その頃は新しいバトルボールペンが出る途端に売り切れるという騒ぎだった。
バトルボールペン欲しさに子供の万引きが急増したり、学校でボールペンを持っていないと友達の輪に入れずバカにされる、苛めのきっかけになる、と保護者からの苦情が殺到するようになり、バトルボールペンは発売してから半年で販売中止になった。
その開発を担当したのが茂野課長。
当時、開発課は社内では花形の部署で、課の部屋も社長室の隣に存在していた。
だが、バトルボールペンで世間からのイメージを悪くしてしまった、ということで開発課は奥に追いやられてしまった――
らしい。
ゆうみが入社して開発課に配属された時、茂野は人の良さがにじみ出る眉をゆがめ、
「……申し訳ないねえ……
ここの部署では出世や玉の輿は狙えないと思うけど……」
と嘆くように言った。
だがゆうみは、働いた分のお給料が貰えて、それで好きなコミックやアニメグッズが買えれば満足で人生オッケーなのだ。
この課が実質見捨てられた部署であろうと、課長が窓際だろうと関係ないし全く問題ない。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる