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嵐を呼ぶニューフェイス

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心の中で絶叫した時、玉子――いや王子――いややっぱり玉子――
まあ、どっちでもいいや――の蘭の花弁を思わせる唇が優美に動いた。



(――そうだよ。
僕はた・ま・ご。
ゆうみの、玉子だよ……)



頭の中に、涼やかな甘い声が響き、ゆうみは絶句する。



十五の夜が甦る。
あの夜、学校の屋上で降臨させようとした、王子、いや、玉子。


(自分の理想通りの姿をした男……
いや、男にしては美し過ぎる!優美過ぎる!
……いやでも、れっきとした男性。
それともこの人は、人間ではないのだろうか?
現実の男性とお付き合いするスキルも、現実を受け入れ現状を楽しむ事が出来ない憐れな私に同情した神が――
――何の神だよっ――
まあとにかく、なんかの神が~!
私に遣わした、妖精様か、天使ちゃんなのだろうかっ!?)






玉子は、首を傾げて笑う。



(そうだね……
僕は、なんなのかな……?
ゆうみが天使ちゃん、て思うなら天使……
妖精だと思うなら、それでもいいね……)



ゆうみが必死で首を振り、玉子の指が唇から離れ、ようやく喋れる。


「あ、あのっ……
頭の中で喋らないで下さいっ!
それとも喋れないの?」



玉子は、少し目を細め、ゆうみの耳に唇を近付けて囁いた。



「――じゃあ、声で話すよ……?
でも、僕が本気を出すと、ゆうみが蕩けちゃうけど、それでもいい……?」


「――☆。Φ#*§◎◆!????!!」



玉子に抱き締められたままで、その綺麗な顔が至近距離にある状態で、その上耳にスウィートに囁かれて、既にゆうみは止め(とどめ)を刺された様なものだった。







「逢いたかったよ……
ゆうみ……」



玉子は、指をゆうみの唇にそっと滑らせ、ミッドナイトブルーの瞳を潤ませた。



「ああああ、あなたはっ――!つまり――!?」



唇に触れる感触は、確かに現実に思えるけれど、目の前に居る現実離れした美しい玉子の存在が信じられないゆうみは叫ぶ。



「しっ……」



玉子は、人差し指をゆうみの唇に当てて、目を瞑る。



瞬間、ここは給湯室だった筈なのに、ピンクと純白の薔薇で埋め尽くされる。



「――もごっ!?」



口の中にまで薔薇が入り込み、ゆうみが窒息しそうになりもがくと、玉子の声がまた頭に響いた。



(どうかな……?
ゆうみの好きな薔薇だよ……)



「むむむ――っ……ぶへっ……ぐぅげええ――っ!……」



ゆうみは口の中から薔薇の花弁を吐き出した。



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