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罪と恋を抱き締めて

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胸の中で眠る剛の真っ直ぐな髪を撫でていると、どうしようもない程の恋しさと切なさが込み上げて、喉の奥が締め付けられる。


「……っ……ダメ……また泣いちゃう」

涙を拭う事もせず、時計の秒針だけが響く部屋の中、私は彼の背中を抱き締めていた。


今、夜中の何時なのだろうか。

朝になったら、此処を出てあの家へ戻る――

戻れるのだろうか?

何事も無かったように、家族として彼と暮らせるの――?




『俺を、子供などと思わないで下さい』

『これきりなんて言わせない――』



彼の放った言葉が、胸に突き刺さり、それは毒を持つ針のように私の中を甘く蝕んでいく。



「子供だなんて、思った事なんてない……
貴方は私の……」


彼のつるん、とした頬にそっと口付け、言葉を呑み込む。




彼に求められて、拒む事が出来なかった……

それは、私も望んでいた事だから……

彼が私を想って欲を吐き出して居たことを知って、嬉しいと感じた。

彼以外の人にそんな風に言われたら、嫌悪しかないだろう。

でも剛になら、頭の中で何度も犯されてもいい、と思ってしまう。

他の人を思わないで……他の人を見詰めないで……触れたりしないで……

私は、もう彼を独占したくなってしまっている。

なんて愚かしいのだろうか。

私などに構わずに、清崎と上手くいって欲しい、と願っていた筈なのに。

彼に抱かれて、私の中の箍(たが)が外れてしまった。

私は、恋に狂ってしまった。

彼に抱かれて声を上げ、猛る彼をこの手で慰めてしまった。

そうせずにはいられなくて……





「……剛さん……ちょっとごめんなさい……よいしょ」


私の上でスヤスヤと眠る剛をそっと横に寝かせ、ベッドから降りてバスルームに向かい、バスタブの中にお湯を張ろうと栓を捻る。

身体じゅうに付けられた、彼の痕跡を落とさなければ……

本当は、彼の温もりを残したままでいたい……

でも、そういう訳にもいかない。

溜め息を吐き、みるみるうちに溜まっていく湯をぼんやり眺めていたが、ふと、私の下着が彼に引き裂かれてしまった事を思い出した。




「そうだった……やだ、どうしよう」


部屋へ戻り、床に散乱する下着を拾い集めるが、とても身に付けられる状態ではなかった。


「私……下着無しで服を着て帰らなきゃ……なの?」



考えただけで恥ずかしかった。


このホテルは、剛の学校からも近い。

朝此処を出る時に、登校する学生達に見られてしまう……



「困ったわ……」


途方に暮れていると、眠っていた剛がパチリ、と瞼を開いた。






ベッドの上の剛が、横たわったままでこちらを見るが、私は慌てて腕で身体を隠してその場にしゃがんだ。

剛は、軽く伸びをすると半身を起こし、丸まる私を笑った。



「……今更隠すんですか?」


「だ……だって」


「言ったじゃないですか……菊野さんは綺麗です」


「……っ」


恥ずかしさに頬がまた熱を持つ。



「こっちへ……おいで」


剛が、両腕を広げて涼やかな笑顔で言う。


私は一瞬躊躇ったが、吸い寄せられるように彼の側へ歩み寄った。


身体を抱くようにして組んでいる腕を掴まれて、あっという間にベッドへ引きずり込まれる。





強引に彼の下に組み敷かれて、頬や首筋にキスの雨を受け止める。

くすぐったくて切なくて嬉しくて、彼の背に腕を回して目を瞑るが、瞼にもキスをされ思わず目を開くと、真っ直ぐに見詰める瞳とぶつかった。


「……何をしてたんです?
俺から離れて……」


ほんの少し、拗ねているような彼の声だった。


「……えっと……着替え……どうしようかなって……
それと……お風呂の用意をしてたの」


剛は私の頬に軽く触れた。


「心配要りませんよ。
実は、着替えは花野さんから預かっています。
パジャマも、明日の服も」


「本当~?
良かった……お風呂から出たらパジャマ着て寝なくちゃ……」


剛は意味ありげに口の端を上げる。



「……そのままでいいじゃないですか……
それに……俺はもう眠りましたから……
菊野さんを朝まで抱きます」


「なっ……!!」






「……まあ……それは半分冗談です」


「も、もうっ!!
大人をからかうんじゃないのっ!!」



口調を変えて悪戯な笑みを溢す剛の頭を、思わず拳骨で頭を叩いてしまった。

ほんの軽くの鉄拳制裁だったが、彼は頭を両手で押さえて呻いた。



「…………今の……かなり効きました……」


顔を歪める彼が本当に痛そうで、私は慌てる。


「やだ……!!ごめんなさいっ……どうしよう……頭は一番大事なのに……!!
お医者様……フロントに連絡して、お医者様を寄越してもらいましょうっ」


ベッドサイドの電話に手を伸ばすが、剛がいきなり私を抱き上げた。



「剛さん――っ?」


「フフ……
お医者様に診て貰うより……俺は菊野さんを診察したいです」


「なっ……!
もうっ!!騙すなんて……ひどっ……」


彼の胸を叩こうと手を振り上げた時、唇を塞がれた。






甘い吐息と、彼の息遣いに眩暈を覚えながら私はなすがままだった。

ふわふわと揺れるこの浮遊感は、恋で浮き足たつ気持ちのせいだろうか?

こんな事に耽っていてはいけない、と思いながら止められない……

シャワーの水音に驚いて顔を上げると、剛が私を抱えたままでバスルームのシャワーの栓を捻っている。

私を降ろすと、彼は魅惑的な笑みを浮かべ、ボデイーソープを掌で泡立て始めた。

後退り、逃げようと踵を返す私を後ろから抱き締めて、耳に囁く。



「――お風呂に入ろうとしていたんでしょう?」


「そ、そうだけど……っ」





剛の手が、ゆっくりと私の首筋を撫でた。


「――ひっ」


「洗ってあげます……」


「や……っ……自分で」


しなやかな長い指の掌が、優美な動きで首筋を撫で、背中へ移動する。

彼の手が動く度、ゾクリ、と甘い疼きが生まれ私を正気から遠ざける。


「っはっ……あ……っ」


「ふふ……どうしました?
洗っているだけですよ」


意地悪い剛の声に、泣きそうになる。


「だ……だって……んっ……ああんっ」


彼の指は、するりと太股へと移動する。

泡の滑りが刺激を与え、私を甘く叫ばせた。

剛の猛りが、腰に当たっている。

とても硬いその感触に私は息を呑んだ。


「さっき……の、仕返しですよ……」


「な……何の事……?」


「俺を……手で……っ」


「……っ」


頬が熱いのは、お湯のせいだけではなかった。

先程の自分がしてしまった大胆な行動を今更恥ずかしいと思い、顔を彼から逸らしてしまう。






「……あんなに俺を虐めたのに……今は、逆ですね」


「虐めてなんか……っ」


「虐められましたよ……?こんな風に……」


「――ああ――やあっ」



泡に包まれた掌が後ろから乳房に伸びてきて、ゆっくりと揉み上げ、突起を摘まむ。

摘まんだまま軽く指を回され、立っていられないほどの快感に襲われ倒れそうな私を剛がしっかり抱き留めた。


「……それに……俺の質問に答えていませんよ……」


「な……何?」


剛の呼吸が荒く、乱れていた。



――彼も、溺れている……

私と同じ様に、恋に、快感に……――


私は身体を震わせ喘ぎながら、上気する彼の顔を盗み見る。






濡れた前髪が頬に貼り付いて、唇を歪め歯を噛み締める彼は15歳とは思えない妖しい色香を放ち、私を身動き出来なくさせる。

彼は猛りを蕾に当たるか当たらないかの際どい所に押し付け、せつなげに呻いた。





「……俺を思いながら……自分でしたか……ですよ」


「そ……そんな事……っ」


「答えないと……」


「んああっ……」



剛は、指を花弁に微かに触れただけで直ぐに離してしまう。

身体を震わす私を見てニヤリと笑い、また同じ動作を何度か繰り返した。



「――っ……や……ダメ……そんな半端じゃっ……」


堪らず叫んでしまった私に、彼は烈しい口付けをする。

壁に押し付けられ、乳房を弄ばれながら咥内を掻き回されて、蕾からは密蜜が溢れた。




唇を離すと、剛が上ずる声で囁いた。




「菊野……教えて……どんな風にしたのか……」


「し……しないもん!!」


必死に首を振ると、彼の手が私の顔を掴み固定して前を向かせた。

甘さの中に鋭さを沈ませた瞳で語りかける。



「正直に答えて……」


「――っ」




脳裏に、悟志との交わりがまざまざと蘇った。

私は、自分を自分で慰めるのではなく、剛に抱かれる事を想像しながら悟志に抱かれ、声を上げていたのだ――

まさか、そんな事を言える訳がない……



唇を噛み、彼を見詰めていたら涙が溢れて来てしまった。


剛が、そんな私を見て目を鈍く光らせ、小さく笑った。



「そうですね……
菊野さんは、毎晩悟志さんに抱かれていた……」


「――!!」




剛は、苦さを味わうかの様に形の良い唇を結び、喉を鳴らす。

言葉に詰まる私の頬に指でつつ……と触れて、首筋に辿り着くと、長い睫毛を震わせて呟いた。



「けれど今は……菊野は俺の物だ……」


「……っ」


「この肌も、髪も唇も……っ」


「――あっ」


彼は、私の太股を掴みぐっと横へ拡げると、猛った獣を蕾に宛がった。


石鹸の泡でするりと滑り、抵抗する間も無く私の中へ収まってしまう。


「く……堪りません……っ」


「剛さ……っ」


彼は、私を壁に押し付けたままで腰をゆっくりと引き、また沈めた。

淫らに感じる花園は、彼をぎゅうと締め付ける。





顔を苦し気に歪める剛の表情に見とれながら、私は彼が動きやすいように脚をもう少し拡げたが、その動きが彼を一層刺激したようだ。

一瞬息を呑み込んだ剛は、私の腰を掴むと狂ったかのように烈しく突き上げてきた。



「――ま……待って……そんなにっ」


彼は、必死に掴まる私の耳に低く囁く。



「待ちません……
俺は……まだ、全然足りない……っ」


「そ……んな……ああっ」


「貴女を想って……どれだけ俺が悶々としていたのか……
思い知るといい……その身体で……っ」


「や……あ……あああ……っ」



際限なく彼に求められて、愛される度に漏れる吐息や叫びがバスルームに反響する。





「やっ……も……ダメ……っ……おねが……っベッドで……」


烈しく巧みに掻き回され、突かれ、もう立っていられない。

だが剛は許してくれなかった。

私をしっかりと抱き締めて、今度はゆったりと腰を揺らす。


「……く……俺も……いきそうです……っ……このまま……最後まで……っ」


「や……っ……剛さ……」


「何です……?まだ物足りないんですか……?」


ニヤリとすると、突然また力強く突いてくる。


「――ああっ……違っ」


彼の背中に爪を立て叫ぶと、律動は益々速度を増していった。


「大丈夫です……
この後……ベッドでも……抱きますから」


「――!!」



絶句する私に、剛は優しくキスをして、自分を引き抜いた。


「あっ」


思わず声をあげる私を妖しい瞳で見やると、肩を掴み、壁の方へと私を向かせる。


「壁に手を付いて……お尻を突きだして下さい」


「――!?」





「言う通りにして下さい……」


彼の熱い息が首筋と耳にかかり、ぞくりと震え、身体の自由を奪われた。

しなやかな腕が、私を彼の思う通りの体勢にする。

腰に彼が手を添えて、恐ろしい程に硬く猛った獣を後ろから挿れようとしている。

蕾に触れる度に、私は甘く叫んでしまう。



「――!……ああっ……そんな……っ」


「菊野……立ったまま……抱かれた事は?」


「……っ」


私は、喘ぎながら首を振った。


こんな場所で、こんな体勢で、こんな風に抱かれた事なんて無かった。

恥ずかしくて、怖い。

自分がどうなってしまうのか怖い……




「……本当に?」


剛が、信じられない、という響きを含ませた声色で呟いた。


「本当……っだってば……っ……こんなことで……嘘なんか……っ」


恥ずかしさと、彼に再び翻弄されている悔しさに、涙が滲んでくる。

剛がフッと笑いを溢すのを聞いた時、奥まで獣が侵入してきた。

絶妙な角度で最奥まで当たり、私は直ぐに達してしまった。

がっくりと、身体の力が抜けてしまった私に剛はシャワーを当てて泡を落とし、抱き上げてバスルームから出た。

バスタオルで身体をくるまれてベッドに寝かされ、私は呆然と天井を見上げる。

剛はどこかに行ったかと思うとまた戻ってきて、ペットボトルの水を私に寄越した。

受け取ろうと手を伸ばすが、力が入らずに落としてしまう。




剛は拾い上げて、蓋を外して私に持たせる。

少しずつ水を啜っていくうち、身体の火照りが幾分か治まってきた。

彼は少し笑い、額を軽くぶつけてきた。



「すいません……つい夢中になって……大丈夫ですか?」


「……大丈……」


言いかけて恥ずかしくなって口をつぐむ。

一体何が大丈夫だと言うのか。

まだ高校に入ったばかりの少年に心も身体も乱され、思うように掻き回されて……

理性のブレーキなど全く役に立たず、私は自分から望んで身体を開いて……



剛は、私の髪を丁寧に拭きながら苦し気に言った。


「俺は……ヤバイです」


「……?」


「一緒に居たら、きりがない位に、菊野さんを欲しくなります」


「――!!」


彼は、手をふと止め、私を熱く見詰めた。


「今日、この部屋に入ってからずっと貴女を責めているのに……
今でも……今すぐにでも、また抱きたい……」







二人の視線が熱く絡み合い、どちらからともなく抱き締めあい、唇を貪りあいベッドを転げ回る。

お互いの吐息が、甘い眼差しが、肌をまさぐる指が、鎮まったはずの欲情をまた呼び覚まして行く。

剛は、猛るままに私に覆い被さり、腰を沈ませて突き進む。

躊躇いも恥ずかしさも忘れ、彼への想いと、与えられる快感だけに支配され、私は高い声で啼いた。



「ああ……っ……剛さん……っ……もっと……」


「菊野……菊野っ……」


「……貴方が……っ……私……っ」


思わず、恋の言葉を口走りそうになった瞬間(とき)、剛が一層烈しく巧みに突き上げて、私は喋る事も出来なくなってしまった。

彼に呼吸を合わせ、両の脚を彼の身体に絡め、彼の耳元で何度も叫ぶしかない。





剛の動きに合わせ、無意識に腰を動かしていたらしく、彼が顔を歪めながら笑う。


「……積極的なのは嬉しいですが……
そんなに、烈しくしないで下さい……
これじゃあ、長く持たないかも知れませんよ」


「いいの……剛さんの……好きな時に……達(い)って……」


私が、意識的に蕾を締めるように力を入れ下から彼を突き上げると、彼は痙攣するように震えて天井を仰ぎ、私の手を強く握り締めてより深く、烈しく突いて来た。


「――っ」


ベッドの表面が地震が起こったように上下して、二人の身体が弾む。

髪に残るシャワーの水滴が飛び散り、僅かな昭明に反射して煌めいた。





爆発寸前まで高められ、しかし寸前で放たれなかった熱い精は今にも溢れようとしていた。

私を責めて、また私に責められながら、彼は更に腰を高速で突き動かす。

蕾の中はこれ以上ない程に潤い滑り、尚且つ獣を爆ざそうと締め上げる。



「く……もう駄目だっ」


「あ……あああ!!」


二人の瞼の裏に、火花が散った。

同時に絶頂を迎えて、熱い迸りを彼は私の中へと放つ。

息を切らし、肩を上下させながら精を放つ快感に震えている彼が、たまらなく愛しかった。

濡れた、真っ直ぐな髪を指で摘まみ、私は泣きながら笑う。



「……また、泣くんですね」


剛が、顔を歪め呟いた。






「……菊野さんは、後悔してるんですね」


「――!?」


「だから……そうやって悲しそうに泣いて……」


顔を背け、僅かに声を震わせる彼にしがみつく。


「違う……違うよ……」


「……」


そっぽを向いたままの彼の唇がきつく結ばれていたが、手を伸ばして触れると唇が柔らかくほどかれた。


私の指を彼の長い指が絡め取り、胸元へ持っていく。


触れた指先から、彼のまだ収まらない鼓動が伝わってくる。


剛は私を見詰め、低く呟いた。


「俺は……菊野さんを手に入れた、と思っていいんですか?」


「――剛さん……」




「俺を――好きだ、と言った……」


いつもはクールな彼の瞳が、恋情に濡れて溢れそうな水を湛えている。

その美しさに見惚れていると、突然強く抱き締められた。

彼の胸しか見えなくなってしまい、息苦しさに私は抗議するように胸を叩く。

気付いた彼が、私を離して切なく溜め息を吐いた。



「好きだと言われて……
何度もキスして……
身体で繋がって……
――でも、貴女を俺だけの物にする事が……出来ない……」


「……っ」


私は絶句するが、深呼吸して、彼の頬に触れてなるべく穏やかな声で語りかけた。



「ひとは決して……誰も……誰かの物にはなれないの……
愛してる事と……自分の物にする事は違うの……
剛さんは……誰の物でもないわ……
でも、貴方は、貴方自身の物よ………
剛さんは……剛さんの為に生きて……
いつか、私じゃなく、他の誰かを愛するようになるわ……だから」


自分に言い聞かせるように、目を閉じて話していたが、不意に涙が溢れた。





「ほら……そうやって、もう俺を遠ざけようとしている!!」


「だって……剛さん……私は」


「言わなくても分かってます……だから何も言うな!!
今だけは何も……っ」


「あっ」



剛は私を再びベッドに沈めて、身体中にキスをしながら囁いた。



「余計な事を言えないように……こうします」


「――あああっ……ダメっ……」


彼は太股を掴み拡げると、私の一番敏感な花園の周りに舌を這わす。


「剛さん……っ……んん……
好き……好きよ……っ……ああっ」


「菊野……好きだ……好きだっ」



ほの暗い部屋のベッドの上は、二人だけの秘密の園だった。

今だけは、どんな風に身体を絡み合わせても、甘い叫びをあげても、陳腐に思える恋の言葉を囁きあっても、誰にも聞こえない。

誰も、二人を邪魔する者は居ない。

私達は、夢中でお互いを奪い合い、そして快感を、愛を与えあっては時に声をあげた。

際限無く、何時までも。

疲れ果てて、眠りに堕ちるまで……





束の間の恋人の時間は、確実に終わりが近づいていた。

その事を知らせるように、時計の針は規則正しく秒針を刻み、窓の外はうっすらと白み始めていた――









※※※愛しては、ならない 第一部 完※※※ 
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