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第4章 7階層攻略編

第77話 一人きりの戦い

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部屋中に響き渡る叫び声をあげながら、獣人集団は僕に向かって襲ってきた。
近くにいるリュウを素通りし、わき目もふらず僕だけに向かってくるのだ。
リュウは獣人たちに対して何かをする様子もなく、傍観に徹しているようだ。

そもそも僕ってミミックになってから、一対多の集団戦闘が多い。
ミミックの闘いって本来そんなものじゃないだろう。
僕の思いも虚しく、いつものように集団戦闘へ突入した。

ただ今回は獣神の補正効果やスキルを使えない分、今までよりもかなり分が悪い。
まさかリュウはこうなることも、想定していたのだろうか?
今となってはリュウの目的が分からない。
盗り逃した宝を奪うだけならば、一緒に戦った方が効率的だ。
なぜだか分からないが、リュウは僕を戦わせたいらしい。

倒れているハルクやクロコがいるこの場所で戦うと、二人も傷ついてしまうかもしれない。
僕は闘いながら少しずつ、二人から離れて行った。

スピードこそないが、一発の攻撃力が高い獣人たち。
僕はスピードで攪乱しながら、獣人たちの同士討ちを狙う。
僕に対する一度の攻撃人数はおよそ4~6人。
僕は1人の獣人の懐に飛び込み、僕を狙っての攻撃が確認できたら瞬時に移動する。
そうすると獣人たちの勢いが余って、味方への攻撃が成立するのだ。

集団戦闘ばかりを経験した僕にとって、この程度のことは造作でもない。
獣人たちの数も多い。
少しでもスキルや魔力を温存した戦い方の方が良いだろう。

僕は逃げながらも落とし穴のスキルを使用し、突進してくる獣人たちを穴の中へ突き落した。
もちろん、穴に落とすだけではない。
落ちた穴には致死量の毒ガスが充満しているのだ。

スキル同士の組み合わせ。
僕が今までの闘いで得た使い方だ。
スキルを上手く駆使すれば、集団戦闘であってもなんとか切り抜けられるのだ。

しかし、あまりにも多勢に無勢。
敵の攻撃も完全にかわせるわけではない。
獣人たちのハンマーや剣が僕の箱を傷つけ、砕かれた破片が宙を舞う。

僕は暗黒魔法【ダークフォグ】を使用すると、辺り一面に黒い霧が現れた。
僕の姿を見失った獣人達。
僕は床を高速移動しながら、獣人たちの足を連続で食いちぎった。
バランスを崩し倒れる獣人たちを、宝箱の中かから取り出したエルフの剣で瞬時に喉を掻っ切る。

バタバタと倒れていく獣人たち。
僕は倒れた獣人たちを【大飯食らいLv2】で一度に食べていく。
戦闘しながら敵を食べる。
体力回復・経験値上昇の効果もあるので、特に長丁場になる闘いでは必須の行為だ。

食べるのをためらうことはもう無くなった。
戦闘が有利になるのであれば、僕はたとえ女性の獣人でも一口で食べてしまうのだ。

食べるのは生身の体だけではない。
敵の鎧や武器も一緒に食べて、飛び道具としても活用する。
至近距離で広範囲に武器を投射されると、獣人たちは避けることが出来ない。
僕が武器を発射するたびに部屋は大量の血で染まっていった。

例え人数が多くても、この程度の相手なら何とかなる。
圧倒的な戦力差のため僕への攻撃を躊躇し始めた獣人たちを、僕は自分から攻撃をし始めた。

ヒューンと音がして、僕に向けて巨大な槍が投げつけられた。
族長だ。
族長が、後方から僕に向かって槍を投げつけて来たのだ。

ただ、単発の投げ槍が僕に当たるはずもない。
気をつけていればさほど、警戒するほどのものでもないのだ。

さらに投げつけてくる巨大な槍。
僕は余裕を持ってかわそうとした。

あれ?動かない。
僕の体が押さえつけられるような圧を感じる。
まるで僕の周囲の重力が増したみたいに。
…!?
リュウ?

リュウが僕に【重力操作】を使用したのだ。
咄嗟のことに動揺している僕に、族長の投げた槍は僕に向かって真っすぐ飛んできた。
ヤバい!
僕は無理やり体を動し、槍の直撃を避けようとした。

ドカッ
なんとか直撃は避けられたものの、僕の体はぶつかった衝撃で吹き飛ばされ地面を転がった。
倒れている僕に、獣人の集団が襲いかかる。

僕は【暴食】で自分にかけられている【重力操作】の影響を食べた。
【暴食】のスキルは、物理的に者を食べるだけではない。
非物理的な物も食べることが出来るぶっ壊れスキルだ。

なんとか体が動くようになったものの、獣人たちの攻撃を避けられず何発か攻撃を受けてしまった。
さらに攻撃を仕掛ける獣人たちを僕は【暴食】+【大飯食らい】で平らげた。

(一体何をしてるんだ!)

僕はリュウに怒りながら念話で抗議をした。
しかし、リュウから意外な答えが返ってきた。

(何でって、そのまま簡単に勝ってしまうと困るやろ。
もっと消耗してもらわんと…)

その時初めてリュウの本当の狙いが分かったのだ。
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