上 下
43 / 120
第2章 ダンジョン攻略前編

第42話 ガイコツの住処

しおりを挟む
ガイコツが潜んでいるかもしれない部屋はさほど遠くは無かった。
ハルクの記憶を頼りに、ひたすら進んでいく。
動物的直感によるものか、彼にはマップ機能は必要ないらしい。
まるでいつもの通学路を進むが如く、複雑なダンジョンも立ち止まることなく一直線に進んで行ったのだ。

ハルクが立ち止まったところは、行き止まりへ向かう一本道。
一番奥の壁にこぢんまりとしたドアが設置されている。
通路は他の場所よりも臭気が充満し、道幅も狭い。
空中に浮かぶ胞子で視界が悪く、霧のように霞んでいる。

罠を仕掛けるにはおあつらえの環境だな。
この通路には間違いなく沢山の罠が仕掛けられているに違いない
このエリアが僕の縄張りだとしても、同じようなことをするだろう。
慎重に行かねばならない。
そう思った時だった。

ハルクは無防備に通路を進み始めたかと思うと、急に立ち止まった。
まるで相撲をするかのように四股立ちとなり、脚を高く上げ、しばらく保持した後強く上げた脚を振り下ろした。

爆発するような炸裂音がダンジョン中に響き渡る。
壁が震え、大地が揺れる。
彼の足は床を踏み抜き、踵が地面にめり込んだ。
彼は四股で地震を引き起こしたのだ。

えっ!?何してるの…!!

振動に反応して作動する数々の罠。
無数の槍が飛び、地面が割れ、吊り天井が作動し、様々な罠がハルクに向かって襲いかかった。
ハルクは罠に一切動じず、ドアを目がけて突進する。
罠をその身に受けようが、物ともしないようだ。
罠を破壊しながらドアまで走り抜けた。

僕は罠がなくなった通路をハルクを追いかけて進む。
しかし、スピードに乗ったハルクには追いつけない。
僕の様子を気にすることもないハルクは、スピードに乗ったままドアに向かって体当たりをした。

さすがにそれはまずいだろ!?
単身突撃をしたハルクを追いかけて、僕は急いでドアに向かった。

部屋に入ると、すでにハルクは戦闘中だった。
20畳くらいの大きさの部屋で、ハルクは狼型のモンスターたちに囲まれていた。
石造りのかび臭い部屋で、辺りに動物の骨などが散乱している。
部屋の奥にはドアが設置されており、その部屋の前には一回りほど大きな狼型のモンスターがいる。
おそらくやつらのボスだろう。
ハルクが狼たちに近づこうとすると、奴らは距離をとり一定の距離をキープする。
ハルクの攻撃は空を切り、残りの狼どもがハルクの腕や足に噛みつく。

僕は狼に向かって【重力Lv2】を使用。
狼たちの周りに見えない重力の渦が生じ、やつらの動きを遅くする。

ハルクは後方にステップバックしようとする狼の前足をつかみ、頭上高く持ち上げ、地面に向けて叩きつけた。
狼の頭は鈍い音を立てながら地面に四散した。

狼たちは距離を取ろうとするも、今までのように素早くは動けない。
追撃しようと狼に向かうハルク。

その時、ドアを守る大きな狼が耳をつんざくような叫び声をあげた。
激しい音波がビリビリと部屋全体を揺らす。
すると先ほどまでスローペースだった狼たちは、何事も無かったかのように素早く動き始めたのだ。

僕の【重力Lv2】がキャンセルされた!?

再び素早い動きで翻弄しようとする狼たち。
ボス狼も彼らの陣形に加わった。
ボス狼が鳴き声を上げる度に、狼たちは攻撃パターンを変え始めた。

まるで統率された軍隊のように、連携のとれた狼たちは的確に僕たちの隙を突いてくる。
僕も毒針やパチンコなど飛び道具系のスキルで応戦するも、全てかわされてしまった。
ハルクの攻撃も同様だ。
力任せにぶん殴ろうとするも、ハルクの攻撃は空を切る。
僕たちが攻撃を仕掛ける前に、すでに狼たちは動き始めているのだ。

ガイコツ戦に向けて魔力を温存したかったけど仕方がない。
僕は狼に舌で攻撃しようとしたが、後方に避けられてしまう。
僕はその狼の移動距離に対し、【暴食】を発動。

狼は僕に移動距離を食べられて、僕の目の前に引き寄せられた。
驚く狼を舌で巻きつける。
身動きが取れなくなった狼をぐしゃっと舌でひねり潰した。

常識では考えられない【暴食】の効果を見て、動きが一瞬止まってしまったボス狼。
その隙を突いて、ハルクの平手打ちがボス狼にまともにヒットした。
目にも止まらぬスピードで吹き飛ばされるボス狼、壁に激突し壁に深々とめり込んだのだ。
ボス狼を失った狼どもはもはや敵ではない。

【重力Lv2】で再度動きを遅くし、一匹ずつ仕留めたのだった。

5匹の狼と1匹のボス狼の死体を確認した僕たちは、部屋の奥にあるドアに向かって進み始めた。

ドアを開けようとした瞬間、背後から物音が聞こえた。
振り返るとそこには狼が立っていた。
頭が潰れ、頭蓋から脳が飛び出しながらも、僕たちに向かって歩いてくる。
すると、死んだはずの狼全員が起き上がって向かってきたのだ。

その中には頭すらない狼や、胴体が真っ二つになっている狼もいる。
常識的に考えても生きているはずがないのだ。
ボス狼も首があらぬ方向に曲がっている。

しかし、おかしなことに狼たちからは出血が見られない。
傷つき、頭蓋が飛び出ていても血が一滴も出ていないのだ。

僕は即座に理解した。
彼らはみんなゾンビだ。
ガイコツはゾンビを製造していたのだ。
理由は分からないが、ゾンビを作るには血抜きが必要。
そのために、必要以上に血を流させていたのだ。

ということは、この扉の向こうに人間たちのゾンビもいる!?
僕はガイコツと戦う前に、新たな試練に遭遇してしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...