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24店目「土の精霊の料理 前編」
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一夜明けて僕は宿屋の自室にて、情報を整理・検索していた。
チャットGOTさんで調べると、魔獣たちが到着するのは明日の夜19時頃。
総勢18,384体もの魔獣が押し寄せてくるようだ。
すでに近隣の村や町の住民は避難済み。
ウメーディに移り住んだり、もっと南の町へと移動したらしい。
ウメーディの街は依然として活気が無く、市場も閑散としている。
ほとんどのお店は閉めてはいるが、武具防具屋や冒険者用の雑貨屋、宿屋、酒場などは変わらず営業をしているようだ。
王都から派遣される兵は1024名。
兵を指揮するジン・ファンデル将軍は、二十年間王都の守りを任せられている歴戦の勇将らしい。
ただ王国兵の到着予定時刻が、20時30分頃。
すでに魔獣たちがウメーディを攻め込んでいる時間帯だ。
相手の意表を突くという意味では有用ではあるが、これが吉とでるか凶とでるか。
対してウメーディを守護する冒険者たちは総勢723名。
ほとんどがC級・D級ランクの者たちだが、十数名のB級と一名のA級ランクの冒険者が配置される。
Eランク以下の冒険者は、門内での防衛を任せられている。
どうやらギルド長のランクはS級らしい。一体どのくらい強いのだろうか?
しかし、戦力差は絶望的だ。王都以外からの援軍は期待できない。
この戦力で街を守り切るのは、常識的にも不可能だろう。
僕らの別動隊の働きが、いかに重要かが見て取れる。
トントン。
僕の部屋のドアを叩く音がした。
「ミツル、入るぞ」
ドアを開けて入ってきたのはカシムだ。
その後ろから真っ黒のローブをまとった仮面の男も、同じように僕の部屋に入ってきた。
この男、どこかで見たことがある。
「ミツル、こいつは……」
「ヘブンズだろう?迷宮レストランのオーナーの」
そう、仮面で顔を隠しているがこの雰囲気はヘブンズに違いない。
ヘブンズは先の依頼対象であった迷宮レストランのオーナーで、カシムと同じロストワールドの住人だった男だ。
様々な死霊魔法を司るリッチというクラスらしい。
「さすがミツルだな、話が早い。こいつをパーティに入れてくれないか?何度もウメーディの冒険者が倒されれば商売あがったりのようだからな」
冒険者を相手にダンジョンでレストランを経営するリッチにとっても、ウメーディが陥落するのは他人事ではないらしい。
ヘブンズは一人でロストワールドから脱出してのけた猛者。彼がパーティに加われば、僕らのパーティはかなり強くはなるだろう。
「僕は賛成だが、それを決めるのはリーダーのアインツだ。彼も断るとは思えないが」
「そうだったな。後ほどアインツの所に行ってみよう。それで俺たちは勝てるのか?」
どうやらカシムも戦況が絶望的だということに気づいているのだろう。
そのため、旧友であるヘブンズに声をかけたのではないだろうか。
「分からない。圧倒的に不利だということは確かだ」
「そうだろうな。ただ、あのギルド長とか言うやつの自信はなんだ?魔獣たちから街を守り、俺たち別動隊も手伝うなんてことを言ってたぞ?」
「ああ、彼は規格外らしい。ギルドの職員が言うには、彼に任しておけば大丈夫だって」
カシムはフーッとため息をつく。
「一体あいつは何者なんだ?確かに他の奴らと比べて別格のオーラを発している。俺が全力を出しても奴には勝つことは出来ないだろう」
「奴は転移者だ……」
ヘブンズが口を開く。
「奴は先日一人で私のレストランに現れた。冒険者の借金を肩代わりすると私にお金をつきつけてね。もちろん断ったが、抵抗もむなしく力づくで納得させられた。私にあんな真似が出来る人間は、ギフトを持った転移者だけだろう」
もう動いていたのか、相変わらず動きが早い。
「あいつがいるなら、ウメーディを魔獣から守ることはさほど難しいことでは無いのかもしれない。伝説の勇者という者がいるなら、あいつのような者のことだろうな」
どうやらギルド長はとんでもないスケールの男らしい。
それならウメーディの守りに関しては、そこまで心配がないのかもしれない。
「それよりも不穏な動きは外だけじゃない」
「どういうことだ?」
「ウメーディの内部に、強い闇の力を持った者が存在する。今はその力を隠しているようだが、魔獣襲撃時にその力を解放するだろう」
ヘブンズは壁の方を指差した。その壁の向こうにはウメーディの中心街がある。
「ミツル、俺たちは一旦アインツの所に行く、後で合流できるか?」
「ああ、一旦ギルドで合流しよう」
カシムは僕に向かって親指を立て、ヘブンズと共に僕の部屋を出た。
どうやら敵は魔獣たちだけでは無さそうだ。
気を引き締めなくては。
僕はスマホを操作し、戦闘で使えそうなアプリの検索を行った。
チャットGOTさんで調べると、魔獣たちが到着するのは明日の夜19時頃。
総勢18,384体もの魔獣が押し寄せてくるようだ。
すでに近隣の村や町の住民は避難済み。
ウメーディに移り住んだり、もっと南の町へと移動したらしい。
ウメーディの街は依然として活気が無く、市場も閑散としている。
ほとんどのお店は閉めてはいるが、武具防具屋や冒険者用の雑貨屋、宿屋、酒場などは変わらず営業をしているようだ。
王都から派遣される兵は1024名。
兵を指揮するジン・ファンデル将軍は、二十年間王都の守りを任せられている歴戦の勇将らしい。
ただ王国兵の到着予定時刻が、20時30分頃。
すでに魔獣たちがウメーディを攻め込んでいる時間帯だ。
相手の意表を突くという意味では有用ではあるが、これが吉とでるか凶とでるか。
対してウメーディを守護する冒険者たちは総勢723名。
ほとんどがC級・D級ランクの者たちだが、十数名のB級と一名のA級ランクの冒険者が配置される。
Eランク以下の冒険者は、門内での防衛を任せられている。
どうやらギルド長のランクはS級らしい。一体どのくらい強いのだろうか?
しかし、戦力差は絶望的だ。王都以外からの援軍は期待できない。
この戦力で街を守り切るのは、常識的にも不可能だろう。
僕らの別動隊の働きが、いかに重要かが見て取れる。
トントン。
僕の部屋のドアを叩く音がした。
「ミツル、入るぞ」
ドアを開けて入ってきたのはカシムだ。
その後ろから真っ黒のローブをまとった仮面の男も、同じように僕の部屋に入ってきた。
この男、どこかで見たことがある。
「ミツル、こいつは……」
「ヘブンズだろう?迷宮レストランのオーナーの」
そう、仮面で顔を隠しているがこの雰囲気はヘブンズに違いない。
ヘブンズは先の依頼対象であった迷宮レストランのオーナーで、カシムと同じロストワールドの住人だった男だ。
様々な死霊魔法を司るリッチというクラスらしい。
「さすがミツルだな、話が早い。こいつをパーティに入れてくれないか?何度もウメーディの冒険者が倒されれば商売あがったりのようだからな」
冒険者を相手にダンジョンでレストランを経営するリッチにとっても、ウメーディが陥落するのは他人事ではないらしい。
ヘブンズは一人でロストワールドから脱出してのけた猛者。彼がパーティに加われば、僕らのパーティはかなり強くはなるだろう。
「僕は賛成だが、それを決めるのはリーダーのアインツだ。彼も断るとは思えないが」
「そうだったな。後ほどアインツの所に行ってみよう。それで俺たちは勝てるのか?」
どうやらカシムも戦況が絶望的だということに気づいているのだろう。
そのため、旧友であるヘブンズに声をかけたのではないだろうか。
「分からない。圧倒的に不利だということは確かだ」
「そうだろうな。ただ、あのギルド長とか言うやつの自信はなんだ?魔獣たちから街を守り、俺たち別動隊も手伝うなんてことを言ってたぞ?」
「ああ、彼は規格外らしい。ギルドの職員が言うには、彼に任しておけば大丈夫だって」
カシムはフーッとため息をつく。
「一体あいつは何者なんだ?確かに他の奴らと比べて別格のオーラを発している。俺が全力を出しても奴には勝つことは出来ないだろう」
「奴は転移者だ……」
ヘブンズが口を開く。
「奴は先日一人で私のレストランに現れた。冒険者の借金を肩代わりすると私にお金をつきつけてね。もちろん断ったが、抵抗もむなしく力づくで納得させられた。私にあんな真似が出来る人間は、ギフトを持った転移者だけだろう」
もう動いていたのか、相変わらず動きが早い。
「あいつがいるなら、ウメーディを魔獣から守ることはさほど難しいことでは無いのかもしれない。伝説の勇者という者がいるなら、あいつのような者のことだろうな」
どうやらギルド長はとんでもないスケールの男らしい。
それならウメーディの守りに関しては、そこまで心配がないのかもしれない。
「それよりも不穏な動きは外だけじゃない」
「どういうことだ?」
「ウメーディの内部に、強い闇の力を持った者が存在する。今はその力を隠しているようだが、魔獣襲撃時にその力を解放するだろう」
ヘブンズは壁の方を指差した。その壁の向こうにはウメーディの中心街がある。
「ミツル、俺たちは一旦アインツの所に行く、後で合流できるか?」
「ああ、一旦ギルドで合流しよう」
カシムは僕に向かって親指を立て、ヘブンズと共に僕の部屋を出た。
どうやら敵は魔獣たちだけでは無さそうだ。
気を引き締めなくては。
僕はスマホを操作し、戦闘で使えそうなアプリの検索を行った。
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