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16店目「絶叫必至!?強烈マンゴドラ料理 前編」

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僕らがDランクに昇格してから一か月以上が過ぎた。
アインツとセリナは正式にパーティとなり、パーティー名を「虎の牙」と名付けた。
リーダーはアインツ。
彼の知識と経験、判断力はリーダーにはなくてはならないものであろう。

僕らの噂を聞き、パーティへの参加を希望する者もいたが、しばらくはこの四人でやっていきたい。

この世界ではギルドランクがD以上になると、ランクとは別にそれぞれの役割が付加される。
『護衛』や『討伐』、『探索』『諜報』など様々な役割の中から1つ選択できる。
選択すると、ギルドに個人の役割が登録される。
ギルドは「役割」をもった者に優先的にその依頼を提案することができる。

冒険者たちはその「役割」に適した依頼を達成すると、依頼達成報酬の他にギルドから「役割報酬」が加算されるという仕組みだ。
また、「役割」にも冒険者ランクとは別にランクがあり、G~Sまでの七種類。
役割ランクが高くなれば高くなるほど、役割報酬が多くなるという仕組みだ。

もちろん、冒険者は「役割」以外の依頼も受けることができる。
ただその場合、依頼達成をしたとしても「役割報酬」は加算されない。

役割は個別で選ぶのだが、なんと僕ら全員同じ役割を選択していたようだ。
僕らが選んだ役割は、『狩猟(ハント)』。
主に魔獣などを狩猟・捕獲することを役割とする。

「あっ、トラ顔紳士さん、こんにちは!」
「トラ顔の旦那、今日はどの店に行くんだ?」

この世界に来て二か月。
僕もウメーディの街ではちょっとした有名人になってしまった。
もちろん、トラ顔と異世界のスーツ姿という恰好も目立っているが、僕たちの異例のスピード出世はギルドを離れ街でも噂されているようだ。
また、僕の使命である食レポも徐々に浸透してきたようだ。
僕が紹介したお店は、今では行列のできる人気店となっている。

そのため、僕に食レポしてもらおうと直接売り込みに来るお店もある。
少しでも僕に良く書いてもらおうと、賄賂を渡そうとする者もさえいるのだ。
ただ僕自身、粗悪店は粗悪店としか書くことが出来ない。
心にも無い嘘を書いてしまうと、おそらく僕の使命は不達成で終了してしまうだろう。
もしそうなれば、僕は日本に変えることなんて出来ないだろう。
事実、この世界には異世界からの転生者が多いが、使命を未達成で帰れなくなった者も多いらしい。

そのため、僕は正直なことしか書けない。
そのせいで無用な恨みを買ってしまうことがある。

時折、裏道や暗闇で襲われることだってある。
ただ、トラ顔マスク、スーツ、靴など僕が装備しているもの全てがマジックアイテムなのだ。
例えどんな巨漢に襲われても、傷一つつけられたことはない。
全て無傷で返り討ちにしているのだ。

今日も僕の後ろをつけられているようだ。
僕が向かっている先は、マンゴドラ料理割烹だ。
このお店に行くときは、どうしても治安の悪い裏通りを通る必要がある。
裏通りは夜になると人通りが極端に少なくなる。
そのため、この裏通りを通るときは2人以上の人間と行くことが望ましい。

ただ、僕は自分自身の好奇心に打ち勝つことが出来ない。
この店は夜しかやっていないというのなら、夜に行く必要がある。
例え危険であっても、何人も僕の食欲と好奇心を止めることはできないのだ。

裏通りも中盤に差し掛かったころ、僕の前から一人、後ろに二人の人間が現れた。
三人ともラフな格好で、手には短剣を持っている。

「何だ君たちは?僕はこの道を通りたいのだが?」

僕は意識的に語尾を上げる。
実はこれが合図で、語尾を上げることで僕のもう一つのマジックアイテムのスマホが音声入力で起動する。
認識させているのが、チャットGOTというチャットAIだ。
起動すると瞬時に周囲の敵や状況を鑑定してくれるのだ。

「3名とも人族男性の盗賊です。LV5、LV6、LV15で正面の男がリーダーです。リーダーの特殊スキル『隠密』には注意してください。攻略方法は……」

と、ワイヤレスイヤホンで種族、特徴、弱点、攻略方法までも教えてくれる異世界に来てからの相棒だ。
事前に敵の情報が分かるので、僕を騙そうとすることはほぼ不可能だろう。

「へへっ、あんたトラ顔紳士なんだろう?この道を通るにゃ通行料がいるんだ。有り金全部置いてきな」

正面の男は僕に向けた短剣を小刻みに揺らしながら、攻撃の機会を伺っている。
ちなみに僕のレベルは10だ。
レベルだけ見れば相手の方が高い。
後ろの男たちも短剣を構えながら、じりじりと僕の方へと近づいてくる。

はー。
僕は小さくため息をついた。
有名になればなるほど、こんな奴らが襲ってくる。
僕はもう少し目立たずに過ごしたかったのに。

僕はスマホを取り出し、画面に映った後ろの二人をフリックして画面から消した。

ドガッバキッ
すると僕の指の動きと同時に、後ろの盗賊2人は勢いよく壁に激突した。
盗賊たちは前のめりに倒れ、そのまま意識を失った。

「てめぇ、何をしたぁぁぁ!」

怒りと恐怖で我を忘れ、短剣を構え真っすぐに飛び込んでくる盗賊。
しかし次の瞬間、短剣を持つ盗賊の手に鋭利な物が貫通した。

「うぎゃぁぁ、痛てぇ」
掌に大きな穴を空けた手を押さえながらその場にうずくまる盗賊。
その地面には緑色の矢が突き刺さっていた。

「ちょっとぉミツル、また絡まれてるの?」

僕のパーティメンバーのミトラだ。
彼女が盗賊の手を狙い矢を射ったのだ。

「どうせまた美味しいもの一人で食べに行こうとしてたんでしょ?ねぇ連れて行ってくれるわよね?」
「ああ、この近くの店だ」
「わーい、楽しみ。ミツルが見つけてくる店ってどこも美味しいんだもの」
倒れている盗賊たちを無視して、僕らは目的の店に向かって歩き始めた。
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