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9店目「高級料理店で食べるウサギ料理 中編」

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幸い僕らのパーティメンバーは大きなダメージを負ってはいたが、命には別状は無かった。
僕のスマホアプリの【ヒールライト】も効果的で、体力は回復しないものの傷は癒すことができた。

ただ、ミトラの体は回復したものの心のダメージが大きく、傷口が回復した後もふさぎこんでしまいがちとなった。

僕たちは体力が回復するまでの間村に逗留し、角ウサギの襲撃に備えた。
三日間村で過ごしたが、角ウサギたちが襲ってくる気配はない。
ボスウサギが倒されたことで、角ウサギたちの統制がとれなくなったのかもしれない。

みんなの体力も回復したようだ。
そろそろこの村を出る時だろう。

「僕たちは今日村を出る、三日間すまなかった」
「いえこちらこそ、角ウサギたちを討伐していただき、ありがとうございました。これは少ないですが、路銀の足しにしてください」

村長から僅かばかりのお金を受け取る。
僕たちは村長にお礼を言って、村を離れた。

今回の冒険はそれぞれに色々と思うことがあったのだろう、
ウメーディの街へ向かう間に、お互いほとんど会話することはなかった。
確かに一歩間違えれば命を落としていたクエストだ。
特に最年少のミトラには堪えただろう。

幸いにも魔獣に遭遇することなく、ウメーディの街に到着した。

僕らは真っすぐギルドへ向かい、依頼達成カウンターへと向かう。
カウンター担当は、猫の獣人受付嬢のミーシャだ。

「あっ、ミツルさんたちお帰りなさい。クエストを達成されたのですね?それではギルドカードをお願いします」

僕らはギルドカードをミーシャに渡すと、それぞれを読み取り機のようなものにかざす。

「はい、クエストは角ウサギの討伐ですね。それでは討伐照明部位をお出しいただけますか?」

冒険者ギルドで討伐依頼を受けると、討伐証明部位が求められる。
討伐証明部位とは、その魔獣を倒したという証拠となるもので魔獣によってその部位が違う。
今回の角ウサギの場合は、生えているその角である。
僕はカバンより角を取り出し、カウンターに並べる。
その数は42本。
それとは別に、ボスウサギの角もカウンターの端へ置いた。

「かなり討伐してくれたのですね。えっと、この一際大きい角は何ですか?」
「それは角ウサギを指揮していたやつの角だ。どうやら変異種らしい」
「えっ、それはどういう…」
「どうやら村を襲っていたのは、そのでかい角ウサギの仕業らしいんだ。他の角ウサギとは違い、知性をもったやつだった」

ミーシャは角を見つめてしばし沈黙したのち、顔を上げて僕の顔を見る。

「分かりました。この件はギルド長にも報告いたします。報酬についても吟味させていただきますね。これで討伐部位は全部ですか?」
「これも受け取ってくれるかい?」

僕はカバンの中から角を切り落とした角ウサギを取り出し始めた。
半分は村人に寄付したが、二十体分の角ウサギとボスウサギは僕のカバンに収納されている。

「ミ、ミツルさん、それはここでなくて解体室でお願いしてもいいですか?」

ミーシャは慌てて僕を制止する。
これだけの量を収納できるマジックボックスはかなりレアらしい。
村で角ウサギたちを収納した際も、セイナとアインツにもかなり驚かれたものだ。
僕らはミーシャに案内され、解体室へと向かった。

解体室はギルドの裏手にある専用の石造り建物だ。
この街の建築様式とは異なり、まるで巨大なピザ窯のようにドーム型で入り口部が広い。
入り口には底面にレールのついた頑丈な扉が設置されており、ちょっとやそっとの力では開けられそうもない。

「少しお待ちくださいね」

ミーシャは扉の取っ手に手をかけ、体中に力をこめる。

「ふぅぅぅ」

ゴゴゴゴゴゴッ

彼女は僕らの通れるくらいまで扉を開き、驚く僕らに笑顔で振り返った。

「この扉を開くことも、受付嬢の採用基準になっておりますので」

ひょっとして冒険者ギルドの受付嬢は、並みの冒険者よりも強いのかもしれない。



解体室の中は不思議なほどひんやりとしている。
まるで鍾乳洞の中のように、季節は初夏にも関わらずここだけ別世界だ。
中はところどころにランプが設置されているおかげで意外と明るく、どこに何があるかがを確認しやすい。

中には屈強な男性スタッフ数名と、女性スタッフ1名が作業をしているようだ。
その中に見たことのある顔の男性がいた。
ギルド長だ

「どうしてギルド長がここにいますの?今日は確か会合があるんじゃ…?」

僕らよりも先にミーシャがギルド長に話しかける。

「えっ、ああ、会合ね。あ、あれは、うん、中止になったんだよ」

しどろもどろに応えるギルド長、嘘をついていることは誰でもわかる。

「はぁー、それでどうしてここにいるんですか?」

露骨なため息を吐きながら、質問するミーシャ。

「いや、たまには剣を振るわないと腕が鈍るだろ?あっ、ミツルくんじゃないか。今日は何か持ってきてくれたのかい?」

ギルド長は矛先を僕に向け、ミーシャのこれ以上の質問を回避しようとした。
ギルド長と未対面のセリナとアインツは、明らかに驚いた表情を見せる。
僕はカバンから、二十体分の角ウサギとボスウサギを取り出した。

「ほう、これは珍しい。ラージホーンラビットじゃないか。確かCランクにされている角ウサギの突然変異だ。これを君たちが倒したのかい?」

僕たちはコクンと頷き、一部始終を説明する。

「ほう、それは素晴らしい。確か、ラージホーンラビットは他の従属を使役する力を持つのだとか。ただ、無茶をしたことには変わりはない。次回からはまず冒険者ギルドに連絡するようにしてくれ」

確かに相手の強さを見間違えていた。
一歩間違えば全滅していてもおかしくはなかった。

「じゃあこれはご褒美だ。これを持って『ビースト』という店に行くといい」

ギルド長は4体の角ウサギを僕たちに投げ渡した。

「君が求めているものが見つかるかもしれないよ」
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