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第5章 内戦編

第70話 冒険者を集めますわ

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「あなたたちは計算もできないのかしら?
この依頼書にはクロウラーの討伐数は10匹と書いておりますが、あなたたちがここに持ってきた数は5匹すら満たしてございませんわ?
は?負けてくれって?
冗談ではないですわ。あなた誰に向かって物を言っておられますの?
顔をコーンスープで洗って出直してくださいませ。
本日はお疲れのようですから、明日以降にお待ちしておりますわ。
これから街で防具を新調なさいませ。そのボロボロの恰好でダンジョンに戻るとはっきり申し上げて死にますわよ。」

本日もギルド嬢での仕事から始まる。
今やギルドでのお仕事も私の生活の一部だ。
受付嬢を通して、冒険者たちの生活も見えてくる。
早期に報酬を得ようと、無謀なクエストに挑戦しようとする人たちが多い。
そのため無駄死にする冒険者が後を絶たないのだ。

他の職員たちに聞くと、どうやら増税の影響で彼らの生活も苦しくなっているようだ。
より多くの報酬が得れなければ、その日のパンを買うこともままならないのだ。
さらに不景気の影響を受け、依頼人の報酬提示額も減少している。
まさに負の連鎖。
パラデュール伯爵の影響は、ギルド経営にも支障をきたしている。


・・・・・・・・・・


私がこの街に来てから半月が過ぎた。
私の元にヴェネパール王国でメイドカフェで働いている、元アンポワネット家メイドのマルブリットから手紙が届いた。

手紙によると、ヴェネパール王国で大規模な軍事演習が行われるようになったらしい。
そのためか、「メイドカフェ悪役令嬢」のお客さんにヴェネパール王国兵士が急増しているようだ。

どうやらヴェネパール王国でも戦争準備を進めているらしい。
もはや一刻の猶予もない。
早急に内戦を解決しないと、ヴェネパール王国にこの国が蹂躙されてしまうだろう。

手紙には続きがあった。
なになに…
えっ?若輩ながら天才シェフのカミーユと、元煙草女のジャンヌが婚約!?
あなたたち対立し合っていたんじゃないの?
は?マルブリットとレオも婚約!?
あなたたちお店で一体何をしてるのよ。
呑気にのろけ話ばかりを送ってくるんじゃないわよ。
どうせ私は彼氏なしよ!なんか文句ある?

「お嬢様!パラデュール伯爵の訪問日が分かりました!
おや、何をなさってているんですか?」

一人地団太を踏んでいる私のところに、オットーが伯爵の情報を持ってやってきた。

「何でもございませんわ。それでいつお見えになられますの?」

「今から5日後でございます。ギルドにも協力を求めますか?」

「そうね。どうやら伯爵の護衛長ボナパルトは一筋縄ではいかないようですわ。
彼が傍にいる限り、伯爵を一人でお連れ(拉致)することは難しいようね。
彼を伯爵から引き離さないと、勝ち目は薄いわよ。」

オットーは私の提案に大きく頷き、オットーも私に提案をする。
「分かりました。それではその人選はお嬢様にお任せしてもよろしいでしょうか?
今ならお嬢様の方が人望があるようですしね。」
オットーは私を見てクスッと笑う。
どうやらオットーも私のギルド受付嬢としての働きを知っているようだ。

皮肉を言うなんてあなたらしいわね。


・・・・・・・・・・


私はギルド長に伯爵拉致監禁計画のための、ギルドからの救援を依頼した。

「わかりました、お嬢様。早速クエストとして募集を募りましょう。依頼書は私の方で作成して今日中に掲示しておきます。」


・・・・・・・・・・・


次の日の朝、開店前のギルドの前に長蛇の列が出来ていた。
えっ、何事なの?
通常はギルドの前に列が出来ることなんてない。開店してから徐々に冒険者が入ってくる程度だ。
開店すると同時にその列の全ての冒険者が私のカウンターに向かってきた。

「なぁ、あんたの肩たたき券がもらえるんだろ?」

は?何をこの男寝ぼけてますの?

「依頼書を見たぜ!あんたに勝てば仕事と報酬をもらえ、10回分の肩たたき券がもらえるって。」
「俺たちはあんたにねぎらって欲しいんだよ。」

ちょっと待って。整理させて。
私は昨日ギルド長に伯爵拉致を助けてくれる冒険者を募る依頼書を、ギルド長に依頼した。
それが私と戦う?肩たたき券って何よ。

私は冒険者が握りしめている依頼書を取り上げた。
依頼書の内容を見てみると…

「強者求む!
当ギルドの人気受付嬢と戦って、勝てば報酬と共に高報酬の依頼をゲット!
さらに副賞として人気受付嬢の肩たたき券をプレゼント。
冒険者のランク、経験等は一切不問!
さあ今すぐ応募しよう!」

はぁ!何これ!
こんなの全く聞いてないわよ。

そんな私の前にギルド長が現れる。

「すまねぇ、お嬢様。ただ、これが一番人を集められるんです。
申し訳ございませんが、本日の午後は空けておいてください。」

あなた、私を一体なんだと思ってるの?

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