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第5章 内戦編

第59話 モーリアの街に向かいますわよ

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悪役王女!?

オットーの言葉が私に突き刺さる。
わたしが王族に!?
そんなこと出来るわけないじゃない。

「あっ、なるほど。それで全て解決ね。」
と、マーサ。
ちょっちょっと、勝手に納得しないでよね。

「この国では女性の王様の過去はありませんが、お嬢様なら大丈夫だと思います。」

「そうね。私もお嬢様なら大丈夫だと思いますわ。」

あなたたち、目を輝かせて何てことを言ってるのよ。
否定をしようとした私に、悪役令嬢語が即座に反応する。

「ホーッホッホッホッホッ、女王?そんなの私なら不可能ではありませんわ。
むしろ私にしか出来ないことだと思いますわ。
あなた達、私をしっかりと補佐しなさい。」

「お嬢様の仰せのままに。」

こうして、私たちの方向性は決定した。
私たちは第四勢力として力をつけるために、街を解放し続けて名声を高め続けるのだ。
そして武力ではなく、政治力でこの国を裏から支配し、後に女王陛下として即位するとのことだ。
かなりの無茶ぶりだが、それがこの国のためになるならやるしかない。
そもそも手段なんて選んでいる必要なんてないのだ。

まずは旧アンポワネット領の中央都市モーリアに行き、中央ギルドを解放する。
オットーの父である総ギルド長にも協力を求め、冒険者たちを味方に引き入れるのだ。
オットーのお父さん元気かしら?あのマイペースぶりならきっと大丈夫よね。
強引に方向性が決め、私たちは旅立ちの準備をし始めた。


・・・・・・・・


次の日、私たちはフィッツホルムの街の人に見送られながら、旧アンポワネット領に向けて出発した。

アンポワネット領に向かう道には多数の拠点や砦がある。
私たちは極力兵士や街の人たちと接することなく、最短のルートを通ってモーリアの街に行きたい。
そのためには、魔物が出るとの噂があるデルエルの森を通る方が早い。

早く行動しないと、あのフランツ殿下がアイゼンベルク王国に攻撃を仕掛けるわ。
小さいのにかなりいやらしい性格をしているもの。
魔物が怖いなんて言っていられないわ。
本当に怖いのは魔物よりも人間だもの。

私たちはデルエルの森に向けて馬を走らせた。


・・・・・・・・・・・


デルエルの森は昼間にも関わらず薄暗く、周囲から怪しげな動物や鳥の鳴き声がする。
ただ、森という割には木が少なく、十分でも馬で駆けても問題がないくらいのスペースだ。
私たちは馬を走らせ、先へ先へと急ぐ。
この分ならすぐに森を抜けられそうね。

30分後、私たちは泉のほとりに到着した。
森の泉はちょうど中間地点。この泉を越えた先に森の出口が見えてくる。
私たちは馬を休ませるため、一旦馬を降り、このエリアで少し休憩をとることにした。
あー疲れたわ。もうお腹ペコペコよ。

オットーは敷き布を敷き、その上に昼食のサンドイッチを用意する。
オットーは料理も上手い。
メイドカフェ時代も、厨房が忙しい時は手伝っていたぐらいだ。

しばらく昼食を楽しんでいると、茂みの方からガサガサと音が聞こえる。
とっさに構える私たち。
マーサの口から、ローストビーフサンドのソースが滴り落ちる。

ガサガサ…ガサガサ…
物音が段々と近づいてきた。
私の拳にギューッと力が入る。

ガサガサ…ガサ…
茂みから出てきたのは片手に乗りそうなほど小さい銀ぎつね。
愛らしい顔で私たちを見つめている。

「フォーチュンフォックスですね。」
オットーがまじまじと銀ぎつねを見ながら話す。

「幸運をもたらしてくれると言われる狐ですよ。
私も見るのは初めてですけどね。
どうやらお腹がすいているようですね。」

銀ぎつねはサンドイッチの方へゆっくりと近づく。
あまり人間に対して警戒心はないようだ。
私は一口大にサンドイッチを切ってあげて、狐の前に差し出した。

一瞬警戒をした銀ぎつねだったが、パクっと一口で平らげた。
尻尾を振りながら私を見る。
もっと欲しいらしい。
私は再度ちぎったサンドイッチを差し出した。

今度はサンドイッチを持つ私の手からかぶりつく。
まるで餌付けをしているようだ。
一生懸命食べる姿が愛らしい。

キューン。
満足したのか銀ぎつねが可愛い声を上げる。
いやーん、可愛い!

ガサガサ…
私が銀ぎつねと戯れている間、再度茂みから物音が聞こえて来た。

あら?もう一匹いるのかしら?
サンドイッチはまだあるわよ。気にせずいらっしゃい。

ガサガサ…
ガバッ!

えっ?
現れたのは体長5mはある巨大なイノシシだった。
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