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第5章 内戦編
第51話 フランツ殿下再びですわ
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アイゼンベルク王国の内戦、実家の没落、兄たちの対立の話を聞いても私の日常は変わらない。
私には「メイドカフェ悪役令嬢」を運営する責任があるのだ。
元々私たちの使用人だったシェフのレオと、メイドのマルブリットの適応力は凄い。
レオは3日間でこの店のメニューを全て覚え、メインシェフのカミーユのサポートもお手のものだ。
さらに容姿が端麗でコミュニケーションの得意な彼は、ウエイターとして給仕も可能。
あらゆる状況に瞬時に対応できる、機転の良さも彼の魅力だ。
長年アンポワネットでメイドとして勤めてきたマルブリットも優秀だ。
メイドとしての所作は言うまでもなく、上品さが溢れる彼女の接客は女性から見ても惚れ惚れしてしまう。
長年母の専属メイドをしていただけあり、急なアクシデントにも落ち着いて対応が出来る。
お客さんが誤って紅茶をこぼしてしまった際も、垂れた紅茶を拭くだけでなく、お客さんの服の染み抜きまで瞬時に行ってくれる。
その献身的な振舞いに彼女のファンが急増。あっという間に人気メイドになってしまった。
しかしその一方で、私のミスが多くなった。
注文漏れや聞き間違いが増え、何度かクレームを受けてしまう。
悪役令嬢語のキレも悪くなり、お客さんからの反応も悪い。
アンポワネット領のことを考えないようにすればするほど、より深みにはまってしまうのだ。
そんな時、お客さんたちがアイゼンベルク王国について話しているのを聞いた。
「この国(ヴェネパール王国)が、内戦中のアイゼンベルク王国を狙っているらしいぞ。」
えっ?同盟国じゃないの?
・・・・・・・・・・・・・
その数日後、フランツ殿下が従者を連れてお店に再び訪れた。
[お帰りなさいませ、ご主人様。」
私は精一杯の笑顔を見せながら彼らに近づいた。
「やあメリー嬢、今日も一段とお綺麗ですね。」
「あら、ご主人様。お上手ですわね。でもその辺の女たちと私を一緒にしないで欲しいですわ(ありがとうございます。お世辞でも嬉しいですわ。)」
殿下はよくお忍びで来られるわよね。暇なの?
「今日は、くまちゃんパンケーキをお願いします。君もそれでいいよね?あっ、アイスクリームもつけてください。」
従者は殿下の問いに頷き、私の方をじいっと見つめた。
早く持って来いとでも言いたげだ。
相変わらずえらそうなやつね。バニラアイスをワサビに変えてもらおうかしら?
私は注文を伝えに厨房へと向かった。
・・・・・・・・・・・・
パンケーキとアイスを食べ終えた2人。
殿下は私をじっと見つめている。
どうやら何か聞きたいことがありそうだ。
私は殿下のもとに向かった。
「ご主人様、お味はいかがでした?」
「メリー、美味しかったよありがとう。シェフにもそう伝えてくれるかな?」
「かしこまりました。きっとシェフたちも喜ぶと思いますわ。」
「ねぇ、メリー。少し聞きたいことがあるんだけど?」
やっぱりきたわね。本当はそれが目的なんでしょ?
「もちろん結構ですわ。何なりとお聞きくださいませ。」
私の返答を聞いた瞬間、殿下の少年のような顔からシリアスな顔へと切り替わった。
何かヤバいことを聞くつもりかもね。
「メリーはアイゼンベルク王国出身だったよね?今凄いことになっているよね。」
いきなりその話をぶっこんできましたわね。もう少しオブラートって言葉を覚えた方がよろしくてよ。
でも私あなたにはアイゼンベルク王国出身なんて伝えたことないわよ。
「あら、私あなたにそのことを伝えたことはございませんわよ。どなたからお聞きになられたのですかフランツ殿下?」
私が殿下の名前を出すと、2人の表情が変わる。
あなたと同じことをしたのよ?あなたが私に言ったことはそういうことよ。
「どうやらメリーも僕たちのことに気づいていたみたいだね。さすがにかの悪名高い悪役令嬢様だ。」
それは誉め言葉?嫌味?
でも殿下、これで分かったでしょ。
今から始まるのは化かし合いってことに。
かくしてアイゼンベルク王国代表と、ヴェネパール王国代表との間で2人だけのワールドカップが始まったのだ。
私には「メイドカフェ悪役令嬢」を運営する責任があるのだ。
元々私たちの使用人だったシェフのレオと、メイドのマルブリットの適応力は凄い。
レオは3日間でこの店のメニューを全て覚え、メインシェフのカミーユのサポートもお手のものだ。
さらに容姿が端麗でコミュニケーションの得意な彼は、ウエイターとして給仕も可能。
あらゆる状況に瞬時に対応できる、機転の良さも彼の魅力だ。
長年アンポワネットでメイドとして勤めてきたマルブリットも優秀だ。
メイドとしての所作は言うまでもなく、上品さが溢れる彼女の接客は女性から見ても惚れ惚れしてしまう。
長年母の専属メイドをしていただけあり、急なアクシデントにも落ち着いて対応が出来る。
お客さんが誤って紅茶をこぼしてしまった際も、垂れた紅茶を拭くだけでなく、お客さんの服の染み抜きまで瞬時に行ってくれる。
その献身的な振舞いに彼女のファンが急増。あっという間に人気メイドになってしまった。
しかしその一方で、私のミスが多くなった。
注文漏れや聞き間違いが増え、何度かクレームを受けてしまう。
悪役令嬢語のキレも悪くなり、お客さんからの反応も悪い。
アンポワネット領のことを考えないようにすればするほど、より深みにはまってしまうのだ。
そんな時、お客さんたちがアイゼンベルク王国について話しているのを聞いた。
「この国(ヴェネパール王国)が、内戦中のアイゼンベルク王国を狙っているらしいぞ。」
えっ?同盟国じゃないの?
・・・・・・・・・・・・・
その数日後、フランツ殿下が従者を連れてお店に再び訪れた。
[お帰りなさいませ、ご主人様。」
私は精一杯の笑顔を見せながら彼らに近づいた。
「やあメリー嬢、今日も一段とお綺麗ですね。」
「あら、ご主人様。お上手ですわね。でもその辺の女たちと私を一緒にしないで欲しいですわ(ありがとうございます。お世辞でも嬉しいですわ。)」
殿下はよくお忍びで来られるわよね。暇なの?
「今日は、くまちゃんパンケーキをお願いします。君もそれでいいよね?あっ、アイスクリームもつけてください。」
従者は殿下の問いに頷き、私の方をじいっと見つめた。
早く持って来いとでも言いたげだ。
相変わらずえらそうなやつね。バニラアイスをワサビに変えてもらおうかしら?
私は注文を伝えに厨房へと向かった。
・・・・・・・・・・・・
パンケーキとアイスを食べ終えた2人。
殿下は私をじっと見つめている。
どうやら何か聞きたいことがありそうだ。
私は殿下のもとに向かった。
「ご主人様、お味はいかがでした?」
「メリー、美味しかったよありがとう。シェフにもそう伝えてくれるかな?」
「かしこまりました。きっとシェフたちも喜ぶと思いますわ。」
「ねぇ、メリー。少し聞きたいことがあるんだけど?」
やっぱりきたわね。本当はそれが目的なんでしょ?
「もちろん結構ですわ。何なりとお聞きくださいませ。」
私の返答を聞いた瞬間、殿下の少年のような顔からシリアスな顔へと切り替わった。
何かヤバいことを聞くつもりかもね。
「メリーはアイゼンベルク王国出身だったよね?今凄いことになっているよね。」
いきなりその話をぶっこんできましたわね。もう少しオブラートって言葉を覚えた方がよろしくてよ。
でも私あなたにはアイゼンベルク王国出身なんて伝えたことないわよ。
「あら、私あなたにそのことを伝えたことはございませんわよ。どなたからお聞きになられたのですかフランツ殿下?」
私が殿下の名前を出すと、2人の表情が変わる。
あなたと同じことをしたのよ?あなたが私に言ったことはそういうことよ。
「どうやらメリーも僕たちのことに気づいていたみたいだね。さすがにかの悪名高い悪役令嬢様だ。」
それは誉め言葉?嫌味?
でも殿下、これで分かったでしょ。
今から始まるのは化かし合いってことに。
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