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第2章

9話:私は、今

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林田果歩side…

「ただいま」
誰もいない家に、言ってみた。誰もいない…はずだったのに。
「ああ、お帰りなさい。果歩。」
あの女だ。私が、嫌いな…私を捨てた女。
(なんで、お前がいるんだよ!)
「…出ていけ!出ていけよ!なんで、帰ってきたんだよ!」
敵意むき出しで、私は実の母に言った。母は、申し訳なさそうな顔をする。
「なんで、私は貴方を生んでしまったのかしらね?そうずっと考えていたわ。」
私の頭は、真っ白になる。それだけは、貴方に言われたくなかった。私を産んだ貴方にそれを言われたら、私の存在価値が無くなってしまう。 
「…お母さん、さようなら。」
もう何も考えられなくなった私は、家を出ていき、とぼとぼ歩いていた。ふと我に返った時、私はあの公園にいた。
榊もその公園にいて、私は思わず隠れてしまう。
「…あの、小さかった餓鬼がでかくなったな。」
榊のそんな独り言が、聞こえてきた。
「あの時は、名前知らなかったんだけどな。まさか、生徒と先生でまた再会することになるとは、な。」
(えっ?先生が、あの人?本当に?)
私は、それを知ってもうこの世に思い残す事はないと思った。そして、私は近くのビルの屋上に向かう。
「あっ、最後に先生に電話しよう。」
ケータイ電話を取り出し、先生の家に電話をかける。
「…もしもし?」
「先生?」
「林田、なんで俺の電話番号知ってんの?」
「先生、先生は、私が死んだら悲しい?泣く?」
「それは、前も言っただろ。」
「お願いだから!真面目に答えて。最後だから。」
「おいっ、林田?お前、今どこにいる?」
「ビルの屋上。」
「何する気だ?」
「うん…とね、こっから飛び降りようと思って。」
「死ぬつもりか?」
「うん。」
「…死ぬな。」
「私は、死にたいんだ!」
「生きろ!」
その最後の言葉は、私の後から聞こえてきた。
「先生?」
後ずさりしながら、私は屋上の端へ行く。
「林田、お前が死んだら俺は、多分悲しむと思う!ってか、死ぬとか考えんなよ!」
「無理だよ。私、私を産んだ人に存在価値が無いって言われたんだ。だから、私はもう行くよ。」
そう言って、私は飛び降りた。
「林田!」
先生が、そう私の名前を呼ぶのを最後に聞いた。
そして、わたしの意識は闇に落ちていく。

────私、死ぬのか。
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