生かすも殺すも俺次第

葵愛利華

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第一章︰この国のお姫様

1話︰農民カムイ

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「あー、今日もいい天気だ。」

一人の男が、畑で伸びをする。
男の見た目は、黒髪に普通の男の背丈────つまり普通だった。
一つ普通でないとすれば、男の目くらいだろう。

男の目は、くすんだ赤色をしていた。

男は、森の中に畑を作り、畑や森で採れる食料で生活していた。

────不思議な事にその森の中は、男しか暮らしていない。

男は、畑を耕し、生えてきた雑草を端から端まで抜いていく。

「今日も、頑固な奴らが抜けたな…。
たまには、素直になってくれてもいいもんだが…」

男は、やれやれとため息をつき、汗を手で拭っていると、男の目の前にイノシシと狼、熊が混ざったような動物が現れる。

「…」
「…」

男とその動物は、しばらく無言で見つめ合う…
そして…

「飯だああああああああっ!」

そう言って男は、その動物に飛びかかる。

動物は、涙目で逃げたが、すぐに男に捕まる。

「いやぁー、助かった。イグロの肉と毛皮は高く売れる。それに、このイグロの大きさは、普通のより1.5倍大きい。ホントにラッキーだった。」

男は、鼻歌交じりに森を出る。

向かった先は、商人が賑わう街『スーザン』。

男は、若手の商人のとこへ先ほど捕まえた動物…イグロを持っていく。

若手の商人は、男をちらっと見たあと

「銅3枚」

そう言った。男は、その言葉を聞くとすぐ、その若手の商人の胸ぐらを掴む。

「巫山戯るな!」

その男の怒声に、周囲がざわつき、別の商人が慌てて飛び出してくる。

「こらっ!タタット!お前は、まだ新人商人だから分からんだろうが、今お前の胸ぐらを掴んでいる男、カムイの目は、商人以上にその商品の価値がわかる男だ!そんでもって、カムイが最も嫌いなことは、非合理的と不利益だ!しっかり正規の値段で売ってやらんか!」

商人は、新人商人を叱り、謝るように言った。

それでも、新人商人はカムイに対して謝ろうとはしなかった。

周りもドキドキしながら、カムイの行動を見ていた。

その時…

「助けて!」

一人の少女が、カムイの背中に飛び込んできた。

カムイは驚き、新人商人の胸ぐらを放す。そして、何が自分の後ろにくっついてきたのか振り返って見る。

すると、カムイの背中にくっついていたのは、身なりが妙に整った美少女だった。

「なっ、何だ!?」

カムイは、たじろぐ。美少女は、カムイを見て…

「ちっ、もうちょっと強そうな奴に助けを求めりゃよかった。」

思いっきり舌打ちをする。

「あ?」

カムイは、キレ気味だ。
周りの商人は、ハラハラしている。

すると、美少女は髪をかき上げながら言う。

「私の名前は、エムリシア。この国の王族…第三皇女よ!男、私を助けなさい。」

「俺の名前は、カムイだ。」

「じゃあ、カムイ!貴方に私を助ける権利を与えるわ!光栄に思いなさい。」

(超上から目線!)

商人達は、早くカムイとエムリシアにどこか行って欲しかった。

────商売の邪魔になっているのだ。

「はぁー…」

カムイは、ゆっくりため息をつく。

「俺にメリットは?」

「なっ!?」

エムリシアは、たじろぐ。
そして、口を開き────

「貴方には、この任務の光栄さが分からないの?!」

「光栄とか要らない。俺が欲しいのは、利益だ。」

カムイは、胸を張りながら言う。

「…分かったわ、金3枚払う。」

エムリシアは、カムイの堂々とした態度を見てそう言う。

しかし、カムイは納得出来ずに言う。

「もっとだ。それじゃあ、俺はお前を助けない。」

エムリシアは、悔しそうにいう。

「き、金っ、20枚っ!」

その言葉を聞き、カムイは満足そうに笑う。

「OKだ。お前は、俺が救う…金20枚にかけてっ!」

「そこは、エムリシア様のためとか言いなさいよ!」
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