愚かな魔王とこの世界

葵愛利華

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第1章:小さな子供

006:小さな心①

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僕は友達が出来てから、毎日学校に通うのが楽しくなっていた。

そんなある日の夜、僕は両親に呼び出された。

妹は、もう寝ている時間で、僕ももう寝ようとしていたところだった。

「何?お母さん、お父さん…」

「お兄ちゃん、よく聞いてね…」

「???」

「ハルの力なんだけど…」

「ハルの力?」

「ええ。貴方は、見たことある?」

そう母に聞かれて、今までを思い出してみる。

「そう言えば、見たことないね(汗)」

「…そうなの。お母さん達も見たことがなかったの」

「なかった?過去形なの?」

すると、母は僕に顔を近づけて、どういう顔をしていいのか分からないという顔で、言った。

「お母さん、見たのよ。ハルの力…」

「え?どんな力だったの?やっぱりお母さん、お父さんみたいに水の力とか?」

そう言うと、母は首を横に振る。

「…いいえ。あのね、ハルの力のことを言う前に、お母さん達はね、あなた達に戦いから遠く離れた力を持ってほしいと思っていたの。」

「???どういう意味?」

「ハルの力は…力というか、魔力、血、肉、骨はあらゆる怪我も、病気も治してしまうの…」

「そんなの、ハルらしい力じゃない?」

母は、僕のその言葉を聞いて悲しそうな顔をする。

「そうね。でも、あらゆる怪我も、病気も治すのよ?魔族だけじゃない、人族も、神族も全ての種族がハルを奪い合うでしょうね…」

「そうなったら、ハルは!」

「ええ、そうよ…」

「なんてことだ!そうなったら、ハルに、平穏で幸せな日々が来なくなる。それに、ハルを奪い合って、色々な者達が傷つくのは、ハルが1番辛い事じゃないか!」

「そうよ…」

「僕は、どうすればっ!ハルを守りたい…」

「なら、守って見せなさい。貴方なら、できるはずよ?」

母は、僕の肩に手を置いて、強く頷く。

僕は、力強く母の目を見て、頷いた。

「僕、やるよ!強くなって、何がなんでも妹を守るっ!」

────僕は、妹を守るためなら、どんなに薄情な奴になったとしても構わない。

────妹に嫌われても…

────それは、ちょっと立ち直れないかも(汗)

────でも、妹以外に嫌われても、悪だと罵られても、構わない。

────僕は、妹の幸せさえ守れれば、その場に例え僕がいなくてもいい。

────妹が、笑顔でいててくれれば、僕のことを忘れてしまっても構わない。

────でも、たまには僕のことを思い出してほしい。

────僕は、強くなる。

────妹を全世界から守れるくらい。

────最強になってやる。


***

「…本当にあの子達には、申し訳ないことをしてしまったと思うよ…」

「それを今、僕達が嘆いても仕方ないさ…」

「それでもっ!私は、嘆かずにはいられない…」


────どうすることが、正解だったのだろうか…

「あの時、あの子達を────っ!」

「それは、言ってはいけないよ…特に、あの子達の前では…」

「…ぅうっ!分かってるわよ!」

女は、その場で泣き崩れてしまった。

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