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004★ねぇ、立場を理解(わか)ってます?

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 私の内心はちゃんと隠して、きっちりと皇子としての猫を被って言う。

 「私は、母上と話します
  父上からの呼び出しがあったら教えなさい
  クラウス良いね」

 「はっ」

 騎士としての礼をとって、クラウスは是と答えてくれる。
 そして、私は、母であるグレイスの元に向かった。

 それに付き合ってくれたのは、騎士のマルクスとサランドルだった。
 その2人に、母の部屋の騎士に入室の許可をもらうように視線で頼む。
 すると、部屋の前に立っていた騎士のレアルが言う。

 「妃殿下、アスラン皇子がいらしています」

 「アスラン、早く来てお母様を………」

 レアルの問い掛けに、母上が自らヒステリックに叫ぶ様に、入室許可を伝えてくれたわ。
 不味い、こんなに不安定になっているとは………。

 これでは、あの皇妃や他の妃や側室にちょっかいを掛けられたら、一発で失敗するわね。
 ここは、執事長ルイスと侍女長セアラに命令して、面会謝絶にしておくしかないわね。

 私は、マルクスに小声で命令する。

 「マルクス、母上は情緒不安定になっているわ
  両親に続いて弟も暗殺で逝ってしまったんだから………

  次は自分かも知れないと脅えているのよ
  だから、ルイスとセアラに、父上以外は誰が来ても
  面会謝絶にしろと伝えて欲しいの」

 「はっ」 

 マルクスは騎士の礼をとると、素早くルイス達の居る場所へと歩み去る。
 それを見送ってから、私は、ドアを開ける様にレアルに視線を送ったわ。

 レアルは、そっとドアを開けてくれる。
 そして、私は、サランドルを連れて母上の部屋に入ったわ。

 母上はソファーの肘掛に縋りつくようにして、大粒の涙をぽろぽろと零して泣いていた。
 こんな切羽詰まった状態なのに、泣いている母上も美しいと思ってしまう。

 面食いなオタクの性質は、転生しても直ってないわ。
 はっ…いけないいけない、今は、母上と会話するコトを優先しなきゃね。

 さっさと臣籍降下して、辺境伯爵領に旅立つメリットを母上に説明して、一緒に行こうって言うしか無いわ。

 「母上、叔父上が亡くなったので
  レアリア辺境伯爵家を継ぐべき直系男子は私しかおりません」
 
 「えっ………」

 何を今更驚いているの………叔父上が死んだのよ。
 辺境伯爵家の直系男子は私しかいないんだから、臣籍降下させられるに決まっているって、どうして気が付かないの。

 ったく、これだから、お花畑の恋愛脳は困ったものね。
 ある程度の説明で理解できるわよね。
 仮にも辺境伯爵と皇女の娘だったんだから………。

 「国境を接しているラスレアリア王国の後ろには
  我が帝国より遥かに巨大なローゼリア大帝国が………

  ですから、私は素早く臣籍降下手続きを取り
  レアリア辺境伯爵になる必要があります」

 「アスラン、お前は、皇位継承権………」

 マジかよ………いったい何を習っていたんだよ。
 辺境伯爵家の娘が、こんなに馬鹿でイイの?
 ったく、ここは、ちょっと怖がるかも知れないけど、私達の立場をはっきりと自覚出来る様に言うしか無いわね。

 「それは、お祖父様とお祖母様が生きていた頃の話しです
  今の私達には、後ろ盾がいません

  また、これから現われるなんてコトは有り得ません
  私は、つい先ほど皇妃殿の騎士達によって
  2階の回廊から池に放り投げられましたよ」

 「護衛の騎士達はどうしたの?」








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