上 下
3 / 20

003★《権力》を手にする為に………

しおりを挟む

 「アスラン様、貴方を突き落とした皇妃は?」

 あのねクラウス、今の私には何の権力(ちから)も無いのよ。
 あのババアに何かできるわけ無いでしょう。

 悔しいけど、私は、皇子とは名ばかりの存在なのよ。
 後ろ盾の無い単なる幼児に等しい存在なの。

 確かに、池に放り込まれたのは、私に対する殺人未遂よ。
 でも、それを証言してくれる人間なんて居ないの。

 証拠が無ければ、うちより巨大なグラドール帝国の皇女であり、皇妃であるあのババアを追い詰めるコトは出来ない。
 ついでに、むかついてるのは、池に突き落とされた私なのよ。

 でも、ここは、冷静に応えるだけにするわ。

 「父上と宰相に報告しておくだけで良いわ
  どうせ、グラドール帝国が怖いからって、何も言えないと思うしね
  それに、証言はどうやっても取れないもの」

 「そうですか………」

 クラウス、そんなにガッカリしないでよ。
 これは、どうしようも無いコトなんだからね。

 でも、私は、臣籍降下して、辺境伯爵となり《権力》を手に入れる。
 何れ、あのババアの邪魔をしてやるわ。

 この私にケンカを売ったんだから、10倍返しよ。
 お祖父様やお祖母様達を殺したのは、確実にあのババアの協力者達よ。

 暗殺しろって命令したのは、あのババア。
 絶対に復讐してやるわよ。

 それに、グラドール帝国の血を引く皇太子なんて、はっきり言って厄介な存在でしかないわ。
 本音を言えば、百害あって一利無しのグラドール帝国の皇女の産んだ皇子なんていらないのよ。

 下手したら、グラドール帝国の傀儡国家にさせられる可能性があるもの。
 だから、私は、本音を言うわ。

 「私が成人するまでの間に《権力》を手に入れるわ
  そして、あのババアの皇子だけは、皇太子にさせない
  皇太子に相応しい皇子がいなければ、私が立つわ」

 私のかなり危ない宣言に、クラウスやレクサスをはじめとする騎士達が、綺麗にハモって言う。

 『我等は、アスラン様に付いて参ります
  我等の忠誠は皇子の上に………』

 私は、ちょっとジーンとしながらお礼を言う。

 「ありがとう」

 そして、私達は、ひとまず宮に戻るコトにした。
 宮では、叔父上の死の知らせに、何時もより雰囲気が暗くなり、昼間だというのに、宮全体が薄暗く感じられた。
 そんな中で、私は、執事長と侍女長に命令する。

 「ルイス、セアラ、辺境伯爵を継ぐ為に、私は臣籍降下するでしょう
  辺境伯爵領に帰還する為に準備をしなさい
  母上も共に帰ります、良いですね」

 『はい、お任せ下さい』

 私の命令に何処か嬉しそうに応えるルイスとセアラ。
 この2人は、お祖父様が母上に付けてくれた人間で、辺境伯爵領の人間だった。

 故郷に帰還するのは、嬉しいってところかな?
 その場に居た者達を見詰めると………。

 辺境伯爵領出身者は、嬉しそうにしているけど、それ以外はすっごくイヤそうにしている。
 なんかその表情を見るだけで厭な気分になってしまうわ。

 だからと言って、そんなコトにかまっている時間は無い。
 さっさと、臣籍降下して辺境伯爵領に帰還しなきゃね。

 旅立ったら、母上や私への命のキケンがある嫌がらせを受けなくて済む。
 ついでに、母上のグチを聞く必要も無くなる。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

処理中です...