異世界召喚に巻き込まれました

042★テンプレはあっても、勇者と聖女の婚姻例は無いそうです

　だから、淡々と言う。

　「王女方や貴族の令嬢達と婚姻を結んでおります」
　
　ラノベのテンブレがきたわね。
　勇者は、お姫様達と婚姻してハーレムを築くのよ。
　でも、今日は、この国の女性に会って無いんですけど………。
　出会いが無いのに、勇者を誑しこめるの？　なんて思ってしまう。

　そんなコトを考えていたら、ハルト君が猜疑心たっぷりって表情で、マリウスさんに質問した。

　「その婚姻って、俺達の意思に従って決まったのか？」

　何故そんな当然のコトを聞くのか？という表情でマリウスさんは淡々と答える。

　「はい、それぞれに、恋愛なさって婚姻したと書いてありました」

　まぁ～ねぇ～異世界から召喚した勇者と聖女という、やたら力のある人間に、強制的に何かをさせるのは無理よね。
　それに、この世界になんの柵（しがらみ≒家族や親族、親友や友人、恩師や師匠など）も無い人間だもんねぇ～勇者と聖女って………。

　あれ？　そう考えると…勇者も聖女も自分の意思で還らなかった。
　それに、結婚も好きになったから、結婚しただけってコトになるよね。
　この辺は、なんかほっとしたわ。

　「ふぅ～ん、そうなんだ。ところで、勇者と聖女が、婚姻した事例はある？」
　
　ダリューン君から、言われてみればわかったけど、確かに、聖女と勇者って婚姻したって言ってなかったね。
　私も、それには興味あるわ。

　もっとも、私だったら、勇者であるハルト君やジーク君を選ぶなぁ～………。
　だって、常識や価値観が、おおむね一緒な相手なんだもん。
　それに、空手や弓道っていうこの世界では、とぉ～っても有効な武道を修めているから強いし、それを使って私を守ってくれる気もあるしね。

　ついでに、料理や裁縫、洗濯や掃除なんかの家事一般が出来る人達だし、妹や弟で子育ての経験者だもんねぇ～。
　そして、２人ともシスコンもどきだから、私に優しいもの。

　うまくやれば、２人とも私の旦那様に出来るわね。
　あれ？　それで言うなら、アルス君もダリューン君も、家事一般は出来る人達よね。
　お姉さん達の我がままに耐えていられるんだから………。

　それって、お付き合いしたら、私の我がままにも甘い対応をしてくれるってコト？
　ちょっと残念なんだけど、２人が武道をやっていたかはどうか、知らないしなぁ。
　でも、スポーツをやっていたから、身体は鍛えていたよね。

　あぁ～あ……私が彼女達みたいな美少女だったら………。
　アルス君とダリューン君も、私の旦那様にしようって、頑張っただろうなぁ。
　いやいや、なに考えているの私みたいなチンクシャが、逆ハーなんて無理無理。

　ここは、特殊な趣味を持っているハルト君とジーク君を、狙って頑張る。
　それでもって、明日、それとなく、ハルト君とジーク君を狙っていないかを、美少女達にそれとなく聞いてみよう………。
　う～ん…上手に聞けるかなぁ？

　「そのような事例は、無かったと思います」

　色々と妄想していたら、マリウスさんが、予想外の答えを返してくれたわ。
　歴代の勇者と聖女の中に、一組のカップルもいなかったの………。
　うっ……マジですか？

　それでいくと、私は、ハルト君とジーク君を、旦那様に出来ないってコトですか？
　いや、私達が、最初のカップルになってやるって思って頑張ろう。
　だって、私が良いっていう特殊な人って２人だけだもん。
　２人を逃したら後が無いわ………。

　そんなコトを考えていたから、私は黙ってしまう。
　でも、ハルト君達も何か思うことがあったのかな？　黙っている。

　「「「「………」」」」

　気を取り直したハルト君が、ラノベ定番の異世界召喚から、元の世界への帰還という重いテーマを口にした。

　「そう言えば、元の世界に、還った勇者や聖女はいないのか？」

　勿論、召喚魔法の反対の返還魔法が存在しているか？　なんて聞いたりしない。
　質問したら、そんな魔法は存在しませんって、言われる危険があるから………。
　ついでに、マリウスさんは、侍従であって魔法使いでも神官でも無いから………。