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0323★神護は内心で悪だくみを考える

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 白夜の内心などカケラも気付いていない神護は、この後の展開のいくつかを予想して、その時の対応を考える。

 まっ…十中八九、マデルが持ちかける商談は成功しないだろなぁ
 グレンの存在が、白夜に対する囮|《おとり》なら、失うわけに行かないもんな

 囮|《おとり》だから、白夜の弟達は二つの王国に分けられているんだろう
 それも、衆人環視の中で晒しモノにされているようだからな

 さぁ…どうやって、そいつらをイジメでやろうかなぁ~……
 黒鼠族こくそぞくなんぞに加担しているんだから、罰は受けるべきだろうなぁ
 ああ…そうだ…もの凄くイイコトを思い付いた

 クッククク…自走肉食植物に襲わせるのは良い手じゃないか?
 飛翔族ひしょうぞくを所有している、領主や貴族なんかの居城に
 自走肉食植物を暴走させて、揺さぶりをかけるのも一興だろう

 なぁ~に、やり方は色々あるさぁ~
 まして、あの自走肉食植物は、魔法抵抗も強いからなぁ~……
 クスクス……襲われた奴らは、素直に降参するだろうなぁ

 まってンどんな抵抗したって、数の暴力には勝てないだろうしなぁ
 何なら手に入れた三種を、俺の魔力で成長させても良いしな
 それに、肉食の魔獣なんかを使うってのも意外と面白いかもなぁ

 俺には、譲渡された魔力などを上手く使うすべがある
 知識の他に、現代の科学方式つー…つよぉ~い味方もあるしな
 ふふふふ…塩水を使って、自走肉食植物をけしかけても良いな

 飛翔族ひしょうぞくを所有している者の居城に向かうようしてやろう
 安全と思っている防護壁の中で、自走肉食植物が現われたら
 きっと、面白い反応がみれるぞぉ~…クックククク

 そういう、高をくくっている奴等を、イジメるなんて簡単簡単
 どうせ、あこぎないコトして、飛翔族ひしょうぞくの者を所有したんだろう
 いや、囮|《おとり》として貸与されているだけかもしれねぇ~けど

 結局は、そいつらも黒鼠族こくそぞくの王と同類だろうからな
 そういう奴等に何をしたって、俺の心はカケラも痛まないさ

 力尽でもなんでもイイ、とにかく白夜の同族をいっぱい集めて
 新しい飛翔族ひしょうぞくの里…いや、王国を作る
 それが当面の目標かなぁ

 どうして、この世界を彷徨さまようことになったかは
 いまだに、本当の意味では理解わからないけど

 いや、俺を父上と呼び【守護者】だという白夜に言わせると
 妹姫達が、自分の為に、界を隔てた別世界から
 俺を呼んだって言っていたけどなぁ……

 いくら、翼に祈願成就とかいう《力》があったとしてもなぁ……
 世界の意思たる…神…白夜達が信奉しているのは女神らしいな
 その女神の助力が、俺の異世界転移には存在たんだろう

 わざわざ女神が助力したってコトは、たぶんに深い意味がある
 たんなる一種族の滅亡とは、次元の違う何かがあるのかもしれないな
 あとで、ちゃんと白夜の種族の話しとか聞かないとなぁ……
 
 まぁ…なんにしても、当座の確たる目的は出来たな
 そう、白夜の一族を買い集めるっていうな

 俺が、この異世界に居て白夜の【守護者】になった意味は
 白夜の一族の王国を作り上げたら探せばイイしな
 存外、買い集めたら、その意味もわかるかもしれないしな

 神護は白夜を腕に抱き、マデルと一緒に連れだって歩きながら、そんな危ないコトを考えつつ、軽く辺りを見回す。
 そんな神護に気付く余裕の無いマデルは、ヒョイッと店先に並べた果実を手に取りながら、さりげなく会話の内容を変える。

 〔きっと、あっしらが何を言っても全然平気なんでしょうねぇ~
 危機感なんて、ひとっカケラも無いようですし……

 もしかしたら、本当に【名被せ】の民なのかもしれませんねぇ~
 たとえそうじゃ無くても、あの自走肉食植物を簡単に倒せるほどの
 もの凄い魔術使い? いやもしかしたら、魔法使いかもですもんねぇ

 きっと、巧妙な呪術者にすら、ご自分達の【名盗り】されないように
 きちんと対策してあるんでしょうねぇ……羨ましいコトです〕

 「でも、イイですねぇ~……
 あこぎない呪術者に【名盗り】される心配が無いなんて……

 あっ…どうですか…この果物……南のシマカ都市から…
 ちょうど今朝、入ったモンなんですよぉ

 南側の街道は、危険生物が出現しないんで、わりと流通が多いんですよ
 あっ…これは、あっしの奢りですから……美味しいですよ
 はい…おぼっちゃんにも、どうぞぉ」

 そう言って、手渡された果実に、神護も白夜も嬉しそうに微笑わらう。
 二人して、馬車旅の間、早く新鮮な果物が食べたいと言い合っていたので、その気遣いが嬉しかったのだ。
 ちなみに、外で自走肉食植物の果実を食べたコトはカウントされていなかった。

 「ああ、ありがとう……ありがたく、いただくとしよう
 ほら、白夜もお礼を言うんだぞ」

 神護が気に入っている、愛らしい子供の仕草で、白夜は果物を両手で持ちながら、小首を傾げてマデルに礼を言う。

 「うん マデルさん ありがとう」

 にこにこしながら、もらった果物に即座にかぶりつこうとする白夜を、見掛けと裏腹に、かなり警戒心が強い神護は、ちょっと待つように視線で制止する。
 白夜が首を傾げて、頷くのを確認してから、神護はマデルに手渡された果物の表面をキュッキュッと服で軽く拭き、カシュッと齧る。

 たっぷりの果汁が、神護の口腔に溢れる。
 神護は、その甘酸っぱい果汁の中に、怪しい薬物や【呪力】が付与されていないかを、冷静に分析する。

 …ぅん…大丈夫だな…怪しいモンも【呪力】も付与されていないな

 安全と判断した神護は、視線で食べてイイと許可を出し、そのまま果物をペロリッと食べてしまう。

 ふ~ん、種が無いってぇ~のは食べやすくてイイな









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