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0319★神護は手配書に首を傾げる

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 神護の言葉に、白夜は内心で嘆息する。

 〔私の謎な成長ですかぁ……
 たぶん グレンやシレイに そういう情報は無いと思いますよ

 【転生術】という秘術は 飛翔族ひしょうぞくの王族の中でも
 秘術中の秘術で 存在自体を知っている者などほんの一握りなんだけど

 心配させたくないし…… 父上には 言わないでおこう
 仮に グレンやシレイが 多少のコトを知っていたとしてもねぇ
 私以上は知らないだろうから

 たぶん…【転生術】という禁断の秘術に一番詳しいのは 私だろう
 今は亡き父上 鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイすら知らない

 そういう古書の存在自体が あの場所に隠蔽されていたモノだからねぇ
 私とて あの隠し部屋を見付けたのは偶然の産物だったのだから

 まぁ 隠匿された理由も今ならば よぉ~く理解りかいできる
 たとえ 【転生術】が成功したとしても 成人できなかったのだろう

 【守護者】の《契約けいやく》があっても 裏切られたのだろう
 だから 隠されたのだろう

 それでも 貴重な魔導書ゆえに 抹消するコトは出来なかったのだろう
 でも 父上にそんなこと言えないから これは黙っておこう〕

 希望観測を口にする神護の腕に抱え上げられた白夜の翼は、先端が抱き上げた神護の膝をゆうにこえていた。
 これ以上、翼が成長すると、神護でも手に負えないコトになるのは目に見えていた。

 う~ん…こりゃ~…困ったなぁ……いやマジで…どうしよう
 白夜を抱き上げていた最初の頃は、背中に飾りほどだったし……

 成長しても、せいぜいが腰ぐらいの位置に先端があったんだがなぁ……
 本当に、随分と大きくなったなぁ~……

 ぅん? いや…それでも…身体も少し大きくなったかな?
 翼の方が、如実に大きくなったから気付かなかったけど

 こうして抱き上げた時の視線の位置が、少し高くなってるな
 確実に、翼だけじゃなく、身体の方もきちんと大きくなってるな

 その白夜の事実に気付いた神護は、にっこりと笑って言う。

 「ほら、白夜、視線の位置が高くなってるの判るか?
 身体も、少しだけど、大きくなったようだぞ

 なに、ここでゆっくりと過ごせば身体も大きくなれるさ
 大きくなった翼に身体が追い付くのもそう遠くないだろう
 だから、少しの辛抱だな」

 神護の言葉に、落ち込んでいた白夜は、嬉しそうに微笑わらう。

 〔あっ…本当だ 父上の視線が 何時もより近い位置にある
 本当に 私の身体も成長しているのだな よかったぁ~…〕

 神護の言葉に納得した白夜は、無意識に翼をパタパタする。

 おっ…機嫌が直ったようだな
 ほんと、白夜って判りやすいなぁ……
 ……ぅん? 飛翔族ひしょうぞくの肖像画入りの張り紙?

 wanted…かな? ああウォンテッドって読めるな
 あんまり、こっちの文字はよく理解わからないけど
 譲渡された知識のお陰で、なんとか読めるな

 幸いなコトに、今回は頭痛や眩暈めまいを引き起こさなかったな
 少しは情報処理されて来ているってコトでいいのかな?
 じゃなくて……ようするに、あの張り紙は手配書なんだな

 手配書が壁に貼られているってコトは、探しているってコトだよな
 ふむ…この飛翔族ひしょうぞくの男ってどういうヤツなんだ?
 ああ……でも、やっぱり上手く読みとれねぇ~…

 後でマデルに、手配書が張られているか聞いてみるかな?
 でも、顔立ちや背格好とかを考えると……

 今の白夜が大きくなったら、ああいう感じになるのかなぁ?
 ふむ…結構、男前じゃん

 そう神護はそんなコトを思った。
 ちなみに、そこに張られていたモノは【転生】をする前の白夜だったりするが、神護はそんなコトに気付くことはなかった。

 雨風の汚れもあるが、手配書を書いた者の画力がかなり低かったセイも会ったりする。
 そして、たまたま目に入っただけで、そういう意味で興味がなかった為である。

 いや、白夜の話しをちゃんと聞いて、そこに張られている手配書の内容を深く考えて精査したなら、探されているのが【転生】前の白夜だと理解わかることだったのだが…………。

 なまじ一種のカメラアイに近い記憶力を持つ神護だけに、興味の無いことは余分な記憶となるので覚えない主義に徹していた為に、スルーしたのだ。
 だから、そこに神護の思考が行くことは無かった。
 そんな神護に、マデルが声をかける。

 「だんなぁ~…ここが、あっしの店でさぁ~…
 この裏が家になってますんで……

 翼が成長した坊ちゃんを、早く休ませる必要もありましょうから……
 とりあえず、ここで馬車を降りましょう

 その馬車は、ウチのモンが移動させますから………」

 そう言って馬車を停め、御者台から降りるマデルに、神護は肩をちょっとだけ竦めて頷く。

 「そうだな……っと、そうだ…マデル……悪いんだけど
 もう少し間口が広くて、室内の広い馬車を用意できるか?

 流石に、こいつの翼がこぉ~んなに大きくなっちまったんでな
 この馬車の出入口だと、出入りがきついんだよ

 なに、飛翔族ひしょうぞくの者が居たら買い取る予定だからな
 馬車は何台あっても困らないからな……
 とにかく、できるだけ出入りする為の間口が大きいのを頼むわ

 それと、あそこの壁に貼られている張り紙の男
 見た感じ飛翔族ひしょうぞくの男らしいけど
 どういうヤツなんだ?

 俺、こっちの文字ってよく判らないんだよなぁ
 一応、なんとか一部は読めるから、アレが手配書なのは判るけど
 その程度でさ……」







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