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0309★危険な自走植物に遭遇しました

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 白夜の説明を聞いた神護は、その内容に眉を寄せて聞き返す。

 「えっ? ちょっと待て…… なんで、植物が人族を襲うんだ?
 俺の居た世界の常識じゃ 普通は有り得ない話しなんだけど」

 だいたい、巨大な昆虫が人族を襲うって、どういうコトだよ
 いやぁ~……でも、あの巨大な昆虫を見た時はびっくりしたけどなぁ
 外見だけなら、アキアカネっぽいかんじだったけど……サイズがなぁ…

 じゃなくて、こっちでは植物まで、人族を襲うのか?
 いったい、この世界って、どういう状態になってるんだよ?

 いや、たしかに大陸じゃ~…そういう話し聞いたコトあるけど
 サイズは普通のバッタだけど…もの凄い食欲に繁殖力だって話しだったな
 雑草は当然として、作物どころか、人だろうが家畜だろうが襲う

 それで大飢饉になったりっていうのあったよなぁ
 たしか、ソレを蝗害こうがいって言ってたよなぁ
 でもって、大陸の君主が相応しくない者が着くと蝗害こうがいが起こるって言われていたっけ

 まっ…君主を引き摺りおとしたいヤツらが、それを免罪符として言い張っていただなんだろうけどな
 実にくだらない……が、何かのセイにしないと生きられない
 ある種の群集心理なんだろうけどなぁ……じゃない

 そんな神護に、白夜はこともなげに言う。

 「それじゃ 今からこちらの常識に慣れて下さいね 父上
 ここでは 植物も 人族を容赦なく襲うってコトを……

 だって 虫が人族を襲うのは許せないなんて 言いながらも
 しっかり慣れたじゃないですか 大丈夫 すぐに見慣れますよ」

 白夜の言いように頭痛を覚えながらも、神護は自分の持つ常識というモノが、この世界では通用しないことを改めて実感する。

 「はぁ~…一応、理解わかった、考えても事実は変わらないからな
 ここでは、植物も肉食のモンが存在して、人族も関係なく襲うんだな」

 神護の確認の言葉に、白夜は『そうなんですよぉ~』と、言う表情で頷く。

 「はい 特に身体や容貌に 獣相を持たないような純粋な人族は
 生まれながらの武器を装備していない為

 殊の外 魔物にも魔獣にも 狙われやすい傾向にあります
 だから 充分に気を付けて下さいね 父上」

 自分を心配する白夜に、神護は苦笑する。

 「ああ…そうだな。俺は、この世界に慣れてねぇ~からな
 とにかく、気を付けるにこしたことねぇーっていうのは確かだな

 んで、話しを元に戻すけど、肉食植物ってぇーのは、そんなに
 その辺に、ポコポコと生えているモンなのか?

 お前の説明で、今の季節は春だから、特に動植物が凶暴になっている
 それは、理解わかったけど、繁殖地みたいな場所でもあるのか?」

 神護は純粋な疑問として、首を傾げて聞く。
 その様子から、白夜はちょっとだけ苦笑いする。

 〔やっぱり…その辺の情報までは 記憶されてなかったか……
 魔力を含む退魔・破魔・治癒の呪文は覚えることができても

 【守護者】である父上を見付けた時 慌てていたセイもあって
 正式な手続きをした上での譲渡じゃなかった分だろう

 そういう意味での知識までは 記憶されなかったようですね
 私が覚えている過去の知識でも 多少なりとも役に立つはずです

 無いよりもマシの知識だけど 父上に教えておかないと不味いな
 これから先の危険を回避できる確率が変わってくるし……〕

 「父上が得た知識に そういうモノが無いのかもしれませんが
 こちらの植物って 自分で移動するんですよねぇ
 父上の故郷の方は どうでしたか?」

 白夜の言葉に、神護は首を傾げる。

 えっ…とぉ~…それって、こっちの植物ってば自分で移動するっコトか?
 いったい、どうやって、移動するんだぁ?

 もしかして、どこぞのマンガよろしく、地中から根っこを抜くのか?
 地中から水分や養分を吸収する為の根っこで、徘徊するってコトか?

 根っこでもって、歩いたり走ったりして移動するってことかよ?
 だったら、もしかしなくても、知能も随分と高いってことになるのか?

 困惑と混乱から、頭の中でグルグルする疑問の山を思うように口にすることができなかった神護は、とりあえず、聞かれたことに答える。

 「ああ、俺の方には、そういう自分で移動するように肉食の植物は
 一つも存在していなかったぞ

 食虫植物って言う、小さな熱帯系の植物はあったけどな
 そいつらは、暖かくないと生きれないし定住型だからな

 ただひたすら、獲物が来るのを待っている
 せいぜいが、獲物が好む芳香を放っておびき寄せる程度だぞ

 自分で獲物を求めて、移動したりするモンは存在しなかったはずだ
 白夜の説明を聞くと、こっちでは違うようだな」

 白夜は、神護の質問に、肩を竦める。

 「はい こっちの植物の大半は 獲物を求めて自走するんですよ
 そう ちょうど あそこを走って…… って 父上っ 危険ですっ

 とにかく あの肉食植物の群れを なんとしても振り切りましょう
 あれはマンドラゴラですっ とぉ~っても 危険種です
 特殊な声を持ってますから 遭遇したら一番ヤバイ自走肉食植物です」

 白夜の叫ぶような警告に反応して、馬達は何の指示も無いのに、一気に全速力で走り出す。
 流石、扱いに困るほどに血筋が良い高知能の軍馬達である。

 ただ、それでも、馬達が暴走寸前の恐慌状態に陥らないのは、感合している神護が、自走肉食植物達の群れを見ても落ち着いているからだった。

 マンドラゴラという肉食の凶暴な植物を、危険なモノと認識はしても、真の意味での恐怖を知らない為、神護の精神状態は安定したままだった。
 神護が持つ知識のマンドラゴラとは、所詮はマンガや小説に出て来るようなモノだったので、恐慌状態になるコトは無かった。

 そして、そのお陰で、馬達も冷静に速度を上げて走ることができるのだった。








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