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0301★聖獣【レパルドフィン】の雛が目を覚ましました

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 神護が血の粒が浮かんだ人差し指を、聖獣【レパルドフィン】の雛の額に付けて命名すると同時に、ほんわかと仄かに輝く。
 アスカと名付けられた聖獣【レパルドフィン】の雛は、白夜の腕の中でモソモソとしだす。

 名付けられたコトで、神護から与えられた血を媒介として、神護が内包する魔力とラインが繋がり、どこか安心したようで寝心地の良い場所を無意識に探した居る。
 そして、お気に入りの位置を見付けたらしいアスカは、抱きかかえる白夜の腕の内側に両手を置いて、無意識のふみふみ行動をする。

 腕の中のアスカの愛らしい行動に白夜が嬉しそうに笑う。

 「可愛いですねぇ 私の腕にふみふみしてます………っ………」

 「ああ…本当にな……ところで、また、背中の翼でも成長したか?」

 声を無意識にかみ殺したのを敏感に感じ取って、神護は確認の為に問い掛ける。
 白夜としても、痛みが長引くのはイヤなので、素直に頷く。

 「はい なんか 根元の辺りにピリッとしたモノが……クッ…」

 明確に痛みの声が出た白夜に、神護はすかさず治癒の魔法を掛ける。
 同時に、痛みで引きっていた白夜の表情がゆるむ。

 「ありがとうございます 父上」

 白夜のお礼の言葉が終わるとほぼ同時に、その腕の中のアスカがプルプルと小さく頭を振って鳴き出す。

 「ミャウぅ~ミュウミュウ…」

 鳴きながら、自分を抱っこする白夜の腕を、フンフンと一生懸命に匂いを嗅ぎ、愛らしく小首を傾げる。
 神護も、ようやく双眸を開いたアスカに、ちょっとホッとして、その小さな頭をソッと撫でる。

 「ちゃんと目を覚ましたから、これでひとやま超えたかな?」

 『はい マスター ちゃんと意識が有りますから 大丈夫だと思います
  マスターとのラインも 名付けによってしっかりと繋がっています
  まだまだひ弱ですが よほどのコトが無い限り成長できると思います』

 ホタルからの言葉に、神護は双眸を細めて、アスカの喉元を優しく掻いてやれば、その手をフンフンした後に、ペロペロと舐める。

 ふふ………これは、お腹が空いているってコトかな?
 とは言え、ここには新鮮なミルクを出してくれる家畜は居ないんだよなぁ
 つーか、この聖獣【レパルドフィン】の雛って生後どのくらいなんだ?

 その愛らしい姿に、神護はくすっと笑いなから、内心を推し隠して言う。

 「取り敢えず、アスカは、しばらくは馬車の中だけでの生活かな?
  日光浴も必要かもだけど、昼間の直射日光はキツイだろうからな
  あとは、アスカのご飯だな。何を食べさせたら良いやら………」

 『母親が側に居なかったので その子が捨てられた個体なのか?
  時空の穴に落ちた個体なのか? また何らかの理由で飛ばされた子か?

  その理由がわかりません が ひとつだけ判るコトは
  本来は居ないはずの場所に ひとりでポツンと居たということです

  ただ 私は その子は卵から孵ったばかりの個体だと感じました
  そして まだ初餌はつえていなそうだと思いました』

 「ホタル初餌はつえってなんだ?」

 『言葉そのままの意味です 最初の食物を口にしていないというコトです
  出来れば 最初に与えるのは高エネルギーなモノが良いのですが……』

 「ふむ……そうすると、生後0日からせいぜいが2日ってところかな? それ以上はいくら聖獣の雛でも生きていられないだろうからな。取り敢えず、新鮮なミルクが無いからなぁ……はぁ~……初餌はつえは、どんなモノが良いかなぁ? まっ…取り敢えず、口を開けてみれば判るかな?」

 そう言って、神護はアスカを抱き上げて、その軽く口を開かせてマジマジと確認する。

 ふむ…歯茎から乳歯は出てないな
 つーとやっぱり生後0日から、せいぜい2日程度だろう
 なのに、瞳はちゃんと開いて、俺達を認識しているようだしな

 たしかに、見た目は生れたての幼獣だけど、雛扱いなんだな
 去年の夏休みの自由研究で、鶏の雛を孵したコトがあるから判る
 鶏の雛は、孵化して身体が乾けば、直ぐに水やエサを啄むからな

 アスカは、獣と鳥の両方の特性を持っているんだな
 そう言えば、リンクもそんな感じだったようだな
 リンクの方は、卵の中からちゃんと意思があったようだけどな

 そんなコトを考えて居ると、ホタルが助言してくれる。

 『マスターがお厭でなければ 手っ取り早いのは マスターの血を混ぜた
  新鮮な獲物の生き血が良いでしょう 例えば虹色オオトカゲなど
  あそこまで巨大化するほど 高エネルギーを得ていた個体ですから』

 ホタルの言葉に、神護はなるほどと頷く。

 俺の血を口から体内に摂取させるコトで、内側から補強するってことかな?
 まぁ…ホタルが言うコトだからな、取り敢えず言われた通りにしておくか
 リオウが全部を食べきれるとは思ってなかったから、あとでホタルの卵から孵った子達に食べさせても良いかって、何個かに分けて、取ってあるのあるしな

 神護は二の腕に嵌めている腕輪の中から、虹色オオトカゲ(特大の恐竜並)の鮮血を入れた壷を取り出して、アスカが飲みきれそうな分を小壷に取り分けて、直ぐに腕輪の中へとしまう。

 そこに、左手をかざして、体内にいる【ルシフェル】に命令する。
 と、左手首がパックリと割れて、そこから鮮血がしたたり落ちる。








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