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0289★今日もカエスの実が食べたいようです
しおりを挟む路側帯で宿泊した神護達は、朝の恒例となりつつある、おトイレタイム後に軽い朝食をみんなで取り、出発の準備をしていた。
勿論、昨日のカエス討伐後、地下茎に生っていたキウイもどきの強化付与に味をしめた軍馬達は、神護にお強請りをしていた。
勿論、その中継をしたのは、神護の肩を定位置としはじめた【カーバンクル】のリンクだったりする。
それは、リンクの一言から始まった。
『ますたー 馬さん達 昨日のカエスの実食べたいそうですぅ
カエスの実を食べると いぃ~っぱい走る力が出るので
とても欲しいそうですぅ~………』
その言葉に、神護はちょっと肩を竦める。
まぁ~確かに、あの強化付与だらけのカエスの実を
ハンターギルドや冒険者ギルドで売るわけにいかねぇ~よなぁ
となると、一番安全なのは自家消費だよなぁ~……
今日も頑張って走ってもらう為に、昨日と同じぐらい食べさせるか
「そっかー…馬達との通訳ありがとうな、リンク
んじぁゃ~…定位置に繋いだ時にやるかな
みんなの口に、ちゃんとひと口入れてやるかな
頑張ったら、お昼にもやるぞ」
そう神護が言えば、軍馬達は3グループそれぞれ、いそいそと自分の定位置に移動する。
神護は、そんなキャッシュな軍馬達にクスクスと笑いながら、巾着袋のほうにしまった、巨大なキウイもどきを引っ張り出して、短剣でサクサクと切り出す。
と、黙って側に居た白夜も自己主張する。
「あっ だった白夜も食べたいです
美味しいし 身体が楽になるので欲しいです」
『りんくもぉ~ りんくも食べたいですぅ
リオウもちょっと食べたいそうですぅ』
自己主張する白夜やリンク、リオウに神護は頷く。
「そうだな、カエスの実を食べて強化付与してあれば
何かあっても、対処できるだろうしな
んじゃ、ほら白夜、リンクもリオウもな
俺も食べておくかな、美味しいしな
これは俺達の分な、後はこいつらに食わせて来るから
白夜はリオウとリンクを連れて馬車の中に戻っていてくれ」
そう言って、自分の肩にがっしりと掴まっているリンクを外し、リオウの頭へと置く。
もらえるコトがわかっているので、リンクも素直にリオウの頭に乗る。
白夜は切ってもらったカエスの地下茎に生っていた実を持って、いそいそと馬車の中へと戻って行くのだった。
ちなみに、馬車の出入り口で編み上げの革靴を脱いだりする間、実はリンクが、その目覚めた能力のひとつで、カエスの地下茎に生っていた実の切り身を空中に浮かしていたコトは確かな事実だったりする。
流石【ルシフェル】に超大型種と言われた【カーバンクル】だけあって、色々な能力を秘めているようである。
そんなコトがあったなど露知らず、神護は軍馬達を定位置に一頭一頭繋ぎ、その口に昨日よりも大きなカエスの地下茎に生っていた実を入れてやったコトは言うまでもない。
神護に口に入れてもらった軍馬達は嬉しそうに尻尾を振っていた。
全頭を繋ぎなおし、その口にカエスの地下茎に生っていた実を入れた神護は、周辺を確認してから馬車へと戻り、御者台に乗って号令をかける。
「さぁーて、頼むぞお前達、今日も頑張ってくれな」
神護の言葉に応えるように、全頭がハモるに嘶き、テッテッテッテッとゆっくりと走り始める。
ただただ真っすぐの砂漠の中を通る街道を走り始める。
神護は軍馬達が安定して走り始めたのを確認し、馬車の中へと向かう。
カエスの地下茎に生っていた実を食べるのを待っているだろうと、
馬車の中へと入ったのだ。
馬車の中で、備え付けのテーブルの上に、神護からもらったカエスの地下茎に生っていた実が大きな皿の上に置かれていた。
「またせたな……そんじゃ、今切ってやるな」
そう言いながら、神護は手と短剣に浄化の魔法をかけて、サクサクと躊躇いなく切る。
一番大きい切り身は白夜に、次に大きい切り身をリンクに、そして自分に切り分ける。
そして、神護は自分の分の切り身から、リオウの口へと入れてやる。
いまだに、虹色オオトカゲの内臓と肉をたらふく食いまくったリオウは食欲が薄いのだ。
が、それでも神護達と同じ物を食べたいという要求から、同じモノを口にするのだ。
リオウ自身、それが負のスパイラルだと知らずに、高栄養で高エネルギーなモノばかり食べているセイで、一向に食欲が戻らないままだったりする。
勿論、高エネルギー&高栄養が必要な白夜とリンクが気付くはずも無かった。
当然、高エネルギー&高栄養に加え、高い《魔力》を貪欲に喰らう【ルシフェル】を体内に飼う神護も、そのコトに気付くコトは無かった。
なまじ、自分を受け入れてくれた神護がこの世の中で一番大事な【ルシフェル】は、余剰分をいただくだけで、けして神護を害するコトは無かった。のも確かな事実である
だから、何時まで経っても、リオウはお腹が空いたという感覚を味わうコトは無く、ただ『それ美味しいの? 味見したい』の感覚で、神護達の食べるモノを無邪気に食べるだけだった。
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