上 下
3 / 328

0003★迷惑な婚姻の申し込み

しおりを挟む

 国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、世継ぎを飛翔族の血を引く王子にしたかったから、飛翔族の王に、婚姻の申し込みをした。

 「輝く峰の国の飛翔族の鳳皇ほうおう
  ラー・シン・ビャクレイよ

  飛翔族の王家の姫を我が正妃にしたい
  大切に、国母と成す故に嫁がせて欲しい」

 が、その婚姻の申し込みに、飛翔族の鳳皇ほうおうは決して姫を嫁がせるとは言わなかった。

 「貴方との婚姻は、無意味だ

  我が飛翔族は他種族との交雑で
  子はほとんど成せぬ

  偶然にも子供が生まれたとしても
  その子供の寿命も《魔力》も体力も

  生み出す母親の半分にも満たない
  寿命が違いすぎて不憫なコトになる

  まして、産んだ母親は、かならず
  我が子や孫やひ孫が自分より先に
  年老いて死ぬのを、見てしまう

  ……故に、この申し出は断る」

 国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、結納の品として、金塊や宝石などの財貨と麗しい布や毛織物や絨毯etc.を馬車十台程に積んで持って来ていた。

 大国と言われている国の国王の正妃になれるという、破格の申し出を断る国王はいないと思っていたのだ。

 「母親より寿命が短いし
  《魔力》も体力も半分になると
  貴方は言うが

  実際に婚姻して
  子供を生してみなければ
  それは判らないではないか?

  私と姫の相性がよければ
  通常の寿命・魔力・体力で
  生まれるかもしれない」

 希望観測というよりは、願望の凝り固まったセリフに、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、首を横に振る。

 「我が姫は、全て婚約している
  貴方に、嫁がせる義理も無い
  速やかに、帰るがよい」

 いっそ冷徹とも取れる口調で断るが、なおも食い下がる。

 「貴方の正妃の姫が全て
  婚姻が決まっているならば………

  試しに、王族とは名ばかりの
  身分の無い愛妾が産んだ姫でもよいから

  嫁せてくれてもイイではないかっ」

 鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、にべもなく言い放つ。

 「これ以上、話す意味が無い
  その迷惑な荷物を持って
  即刻、帰るがよい」

 取り付く島すらないその言葉に、 国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、苦虫を噛み潰した表情で言う。

 「今回は、帰るが
  次は、色よい返事を貰いたいものだな」

 この大陸にある国々の中でも、五指には入る領土と人口を有する
 我が国の正妃にと、わざわざ申し込みに来てやったというのに……

 この大陸一番の古き国の国王とはいえ、我の申し出を断るなぞ……
 いや、ここで怒ってはならん

 飛翔族の力の源である血を、姫を、手に入れる為には
 下手したでにでるしかない

 いずれ、その《力》を手に入れた暁には
 その傲慢な態度を、後悔させてくれるわ

 懲りる事が無い国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、激怒している内心を何とか隠して帰っていった。




しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

婚約破棄ですか? ありがとうございます

安奈
ファンタジー
サイラス・トートン公爵と婚約していた侯爵令嬢のアリッサ・メールバークは、突然、婚約破棄を言われてしまった。 「お前は天才なので、一緒に居ると私が霞んでしまう。お前とは今日限りで婚約破棄だ!」 「左様でございますか。残念ですが、仕方ありません……」 アリッサは彼の婚約破棄を受け入れるのだった。強制的ではあったが……。 その後、フリーになった彼女は何人もの貴族から求愛されることになる。元々、アリッサは非常にモテていたのだが、サイラスとの婚約が決まっていた為に周囲が遠慮していただけだった。 また、サイラス自体も彼女への愛を再認識して迫ってくるが……。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...