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010★まがりなりにも、国が維持されている理由が判った
しおりを挟む《転移》した先は、前世で精霊の神子姫ビクトリアとして歩いた時に見付けた、大きな教会の裏庭にある物置の陰。
ふぅ~………うまく《転移》もできたな
転生した、この身体でも魔術を使うコトに支障はないようだ
俺は、耳を澄ませながら周囲に人の気配が無いコトを確認し、物置の陰から出て、そ知らぬ顔で歩き出す。
ただし、フードを被っているので不審がられるかも知れないが………。
顔を隠して歩くのは不味いかなと思いながら、城下町をの中を歩き出せば、そこはだいぶ様変わりしていた。
まず、活気というモノがほとんど無い。
店は一応開いてはいるが、商品が………表現的に微妙だが、どこかうらぶれたようなモノだったりする。
野菜類はなんだか元気がなく、どこかしなびた感じがしている
肉類は、値段にもよるけど………色合いがメッチャ悪いんだけど
武器防具の類も、なんか安っぽいモノばかりだな
その上で、ホコリがうっすらどころか、くっきりと被っている
あと、金物屋のナベカマの類も、新品に見えないぞ
畑を耕したりする道具も、なんかサビっぽいモンが浮いている
ゆったりと、落ち着いて周囲を見回しながら、それぞれの店の商品を見て回ったが、どれもこれもお古っぽい印象を受けるモノばかりだった。
そして気付いてしまった。
街中に、女の人の姿が極端に少ないコトに………。
同時に、俺のようにフード付きマントを着ている者が結構居るコトにも気付く。
そして、昼間っから酒をんでいる、どう見ても兵士らしき者達をそこここで見かける。
耳を済ませれば、王太子が毒殺されて、精霊の神子姫たる俺が死んでから、まだ20年ぐらいしか経っていないらしい。
そのたった20年の間に、城下町はこんなに荒廃してしまったようだ。
もっとも、大半の精霊達がこの国から去ったのだから、収穫率ががったりと落ちたのはしょうがないコトだと思う。
ちなみに、侵略してきて、妹姫を正妃として娶った第2皇子の祖国も、メッチャ不作………どころか、凶作続きだそうな。
不作の原因は、精霊の神子姫を殺したコトが起因しているという話しをそこここで、コソコソと話している者達が居る。
いや、俺が精霊達に逃げるように言ったセイもあるだろうから、それもあながち間違っては居ないが………。
だから、どの国でも食糧不足が深刻なようだ。
俺の前世の祖国も、攻めて来た帝国も、近隣諸国に至るまで、精霊達が姿を消してしまい、その助力を受けられず、不作続きのようだ。
まぁ…自業自得とはいえ、民が可哀想と思わないわけではないが………
だからと言って、王家の姫の義務と責任を………今の俺は感じない
まして、勝手に呼び出しておいて、ステータスがクズだからイラナイって
城の裏の絶壁から捨てるような輩達など、どうでもイイ
勿論、復讐心なんてモン………カケラも無い
そう、何故かわからないけど、興味ないんだよなぁ………
前世では、民のひとりひとりが大切で、豊かな実りを毎日精霊達や神々に祈っていたが………。
今はそんな気がひとカケラも浮かばない………不思議なほどに。
そんなコトを考えながら、俺はこの城下町の中で瘴気のような澱みを発生させている方向へと歩いて行く。
感覚に従って歩き続けると、だんだんと人影が少なくなり、はてには見かけなくなる。
それは城下町の北側にあった。
北側にあるソコには、見かけない風体の兵士達がたむろっていた。
俺は、その森林………たぶん、帝国の兵士達が警戒する………の奥に意識を向ける。
そこには、何か巨大なモノが存在しているらしい………。
俺の感覚が、ソレは解放されるべきモノと訴える。
周囲に歪みを与え、澱んだ瘴気を放つ存在を確かめようと、森林の木々や背丈の高い雑草の陰に隠れながら、気配を殺して移動する。
異様なほど見回りの兵士達が多いが、その様子からヤル気というモノを感じない。
どこか投げやりな雰囲気で、一般市民がまぎれ込まないように、2人1組で歩いていた。
無駄口を叩き合いながら、巡回している兵士達を避けて、警護されている場所へと辿り着けば、そこには見た目が神殿の建物が存在していた。
そして、ソコにはフェンリルとおぼしき、額にツノを持つ狼が雁字搦めの鎖で拘束されていた。
えっとぉ~? アレは何をしているんだ?
はっ もしかして居なくなった精霊達の代わりか?
あのフェンリルを拘束して《魔力》と《生命力》を奪っているのか?
それを、地力の無くなった国土に注入しているってコトか?
それで、なんとか収穫物を手にしているってところだな
邪法のひとつにそういうモノがあったはずだ
俺の祖国で、随分とおぞましいコトをしてくれる
いや、精霊達が消えたコトで、そこまで切羽詰っているってコトかな?
なんにしても、あのフェンリルを逃がしてやろう
流石に可哀想だし………もふもふに罪は無いんだから………
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